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丸紅主導のベトナム・ギソン2石炭火力発電所建設計画。環境NGOが国際協力銀行(JBIC)による融資は「政府方針に反する」と停止を要請(RIEF)

2018-03-15 18:23:48

gisonキャプチャ

 

 丸紅と韓国電力公社が共同でベトナムに建設を計画している石炭火力発電所に、国際協力銀行(JBIC)が融資を検討していることについて、環境NGOは「日本政府の方針に反する」として融資取り止めの要請行動を行った。これまで政府は、石炭火力輸出はCO2排出量が相対的に少ない最高技術の「超々臨界圧発電以上の導入を支援する」としてきた。ところが丸紅の事業は低効率の超臨界圧であり、パリ協定が目指す2℃目標達成に反する、と強調している。

 

 政府とJBICに対して要請行動を行ったのは、環境NGOのFOE Japan、気候ネットワーク(KIKO)、350.org.Japanなどの5団体。問題の石炭火力発電所計画は、ベトナムの首都ハノイから250kmほどのタインホア省ギソン工業団地で、600MWの超臨界圧(SC)の石炭火力発電所2基を建設するもの。稼働中のギソン1発電所(300MW2基)も丸紅が建設した。

 

 超臨界圧発電は、CO2排出量が亜臨界圧(Sub-C)発電に比べて、kWh当たり5.5%ほど減少できる。だが、超々臨界圧(USC)よりは6%強多い。USCはSub-Cに比べて11%強削減できる。欧州などではパリ協定の2℃目標達成のためには、USCも含めて新規の石炭火力発電建設は認められないとの立場をとるところが増えている。

 

 FOE Japanなども、基本的に新規の石炭火力建設は認められないとの立場だ。だが、今回の丸紅の事業は「超臨界圧という旧態依然とした低効率な技術を利用しており、『超々臨界圧以上の発電設備について導入を支援する』とする日本政府の方針にも矛盾する」と指摘している。


  そのため、こうした「後ろ向きの石炭火力事業」にJBICが公的資金で融資をしないよう、強く求める、と要請した。同火力発電計画は、国際的な公約に違反するだけではない。ベトナムは、経済成長が著しい一方で、大気汚染の深刻度を増している。、2011年には石炭火力由来の大気汚染が原因で4300人の早期死亡につながったとの推定結果も公表されている。ハーバード大学の研究によると、早期死亡者の数は2030年までに現在の5倍の約2万人にまで増えると推計されている。

 

 ギソン2石炭火力が建設された場合の大気汚染物質の推定排出濃度は、以下の表に示すように、日本の高性能な大気汚染対策技術を導入した石炭火力と比べて相当高いことは一目瞭然だ。大気汚染の悪化は避けられない。日本では建設できない古いタイプの石炭火力を、「途上国になら輸出していい」ということでは、日本の政策・技術・誠意のすべてが信頼をなくしかねない。




  ベトナム環境保護法(2014年)第20条では、プロジェクトオーナーは、環境アセスメント(ESIA)の承認から24ヶ月を超えてプロジェクトが開始されていない場合、ESIAをやり直す必要があると規定している。ギソン2石炭火力の ESIAが実施されたのは2015年2月で、同ESIAが承認されたのは2015年3月4日。すでに3年以上経過しており、ESIAのやり直しが必要になるとの指摘もある。

 

 また環境NGOらによると、ギソン2石炭火力建設予定地近辺には、ギソン1などのその他の石炭火力発電、ギソン(ニソン)製油所など、環境負荷の大きいインフラが存在する。しかし従来のESIAではその累積影響が考慮されていない、と指摘している。

 

 同事業へはJBICのほか韓国の輸出入銀行(KEXIM)も融資を予定している。これらの公的資金融資でリスクを軽減したうえで、日本の3メガバンク、シンガポールのDBS、OCBCの両行、英Standard Charterdが協調融資をする予定。総事業費は26億7000万㌦(約2800億円)とされる。

 

http://www.foejapan.org/aid/doc/180313.html