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日本製紙、秋田県で計画していた火力発電所計画中止。石炭火力からバイオマス専焼への切り替えを目指したが、原料の安定的確保見通せず。環境NGOは歓迎(RIEF)

2019-03-02 14:16:48

nihonseishi1キャプチャ

 

  日本製紙は、秋田工場(秋田県秋田市)で計画していた石炭火力発電事業を、バイオマ専焼火力に変更する検討を続けていたが、「十分な事業性が見込めない」との判断で、検討を取り止めたことを、公表した。環境NGOによると、国内の石炭火力計画50基のうち、13基が中止・燃料変更となり、まだ建設中もしくは計画中は25基にのぼる。

 

 (写真は、日本製紙の秋田工場の全景)

 

 同社によると、秋田工場では木材パルプと古紙を原料に、段ボール原紙を主に生産している。発電所は同敷地内に建設する計画で、発電容量は11.2万kWで環境影響評価法の対象(11.25万kW以上)以下だが、秋田県環境影響評価条例の対象として、2014年12月に環境アセスメントの方法書、2016年1月に評価書が公表され、県のアセス手続きを終えていた。

 

 ただその後、3年にわたって工事は着工していなかった。最大の課題は、CO2問題と燃料調達にあったとみられる。石炭専焼から、石炭バイオマス混焼に切り替え、さらにバイオマス専焼に切り替える方針変更を検討してきたが、同社が強みを持つはずのバイオマス原料の調達が十分に見込めず断念したとされる。

 

 国内のバイオマス発電事業には、多くの企業が参入、東南アジア等から調達する木質ペレットの値上がりや発電設備の建設費高騰などが事業環境の悪化につながっている。バイオマス火力自体への環境上の疑問も浮上している。同社は発表文で「十分な事業性が見込めないと判断し、検討を取り止めることとした」と記している。

 

 日本製紙は、2013年以降の計画だけでも、静岡県、宮城県の2ヶ所ですでに石炭火力発電を建設、両方とも稼動している。同社が計画した発電所で撤回を表明したのは今回が初めて。



 同社は発電事業について、「今後も、木質バイオマスの調達力、発電ノウハウの蓄積、および全国各地にある工場立地など、当社グループの強みを結集し、電力の安定供給に資するエネルギー事業の新たな展開を検討していく」と、事業継続を強調している。

 

 環境NGOの気候ネットワーク(KIKO)によると、2012年以降に把握された日本国内の石炭火力発電所建設計画50基のうち、13基が中止・燃料変更となったが、12基が稼働、25基は建設中もしくは計画中(2019年2月28日現在)という。

 

 KIKOでは、「石炭火力やバイオマス火力を巡る情勢は、この1年で大きく変化し、脱石炭の流れはこれまでにない勢いで加速している。今回の建設断念は、建設費や燃料価格の高騰を理由としているが、脱炭素社会を目指す取組みが進む中で『石炭』という選択肢はないことが定着してきたことを表す決定だ」と評価している。

 

https://www.nipponpapergroup.com/news/year/2019/news190228004364.html

https://www.kikonet.org/wp/wp-content/uploads/2019/02/20190228_press_release_akita-nihonseishi_F.pdf