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日本卸電力取引所、「ベースロード市場」の初の取引結果公表。約定価格は卸売市場の平均価格より最大2割安。ただ、取引量は低調に。電力大手の供給価格の割高感払しょくできず(RIEF)

2019-08-10 01:02:43

baseキャプチャ

 

 日本卸電力取引所(JEPX)は9日、大手電力が石炭火力など安定的に発電できる電力を売る「ベースロード市場」の取引結果を公表した。従来の卸取引市場の平均価格より最大で約2割安く、買い手の新電力各社には安定的な調達市場となる。ただ、成立した取引量は低調に終わるなど、早くも新市場の課題が見えている。

 

 ベースロード市場は、今年設立された。石炭火力発電や水力発電、原子力などの24時間発電が可能な電源を取引対象とする。太陽光・風力発電などの再生可能エネルギー発電は、日射や風況等で発電量が変動するが、ベースロード発電は安定的に提供できる。

 

 ベースロード電源は、大手電力が約9割(最大出力ベース)を保有。通常は自社の小売部門に供給するが、政府が5月に改正した「適正な電力取引についての指針」では、大手電力会社に対して、十分な量のベースロード電源を市場に拠出するよう求めているほか、価格も「不当に高い水準」にしないよう定めている。

 

 市場の買い手は、再エネ電力を中心とする新電力会社等。通常は卸売市場で調達しているが、卸電力市場は冷暖房需要が集中する夏や冬にはスポット価格が急騰するなどの価格リスクがある。このためベースロード市場は、新電力等に対して、安定的な電力を提供する場になると期待されている。

 

右の約定欄の上は価格、下は約定量
右の約定欄の上は価格(円/kWh)、下は約定量(MW)

 

 今回、初めて公表された取引結果は、全国3地域に分かれ、東京エリアが1kW当たり9.77円、関西エリア同8.70円、北海道同12.47円だった。東京エリアの価格は、先行する卸取引市場より安かった。2018年度の卸取引のスポット(随時契約)の平均値と比べると、全体的に安く、価格差は1%から約2割だった。

 

 しかし、売買成立を示す約定率は低調だった。入札では約600億kW時分が売り出されたとみられるが、約定したのは約18億kW時と3%程度だった。ベースロード市場での調達は、1年間分の電気を確保することになるため、新電力会社にとって、約定価格はまだ割高との判断が多かったようだ。

 

 卸電力市場のスポット価格の先行きが見通しにくい中、ベースロード市場で1年間分の電気を確保するにはリスクが伴う。また、電力大手が提示する供給価格の上限は各社が抱えるベースロード電源の発電コストに基づいている。そのコストには、現在、稼働していない原発の固定費も加わっているとされ、電力大手が自社の小売部門で調達する価格よりも依然、割高との見方が強い。

 

 市場関係者は「供給量の半分は約定しなければ新しい制度をつくった意義に欠ける」と指摘。初回の入札とはいえ、2~3%しか約定できなかったことは、同市場の今後の有効性に早くも課題を浮上させたともいえる。

 

 電力大手は現在、小売り販売面で、安値攻勢を展開、新電力から顧客を奪い返す動きが広がっている。そうした競争環境下で、ライバルでもある新電力に、手ごろな価格でベースロード電力を販売するという期待は、持つ方が無理ということかもしれない。しかし、健全な競争と、新電力の育成ということを考えると、新たな市場政策の検討が必要ともいえる。

 

http://www.jepx.org/market/pdf/BL2020.pdf?timestamp=1565362269768