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EUのサステナブルファイナンスのタクソノミー案から除外された「原発」を、復活させるよう要請する公開請願運動展開。英スイスのNGOら。除外理由とした使用済み核燃料対策の有効性を強調(RIEF)

2019-09-27 14:02:33

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  EUの欧州委員会が開発中のサステナブルファイナンスのタクソノミー(事業分類)案に、現在除外されている原子力発電所を対象に盛り込むことを求める請願運動が展開されている。EU各国がパリ協定の目標を達成するには、現行の温暖化対策を展開するだけでは無理で、あらゆる政策オプションを動員する必要があるとし、発電中にCO2を排出しない原発をタクソノミー対象とすることを要請している。

 請願運動は、英国人の環境活動家Kirsten Gogan氏が発信する形で展開されている。同氏は英・スイスを拠点とするNGO「Energy for Humanity(EFH)」の共同創設者で、ネット上の請願サイト「Open Petition」で呼びかけている。9月27日時点で2400人が賛同のクリックをしている。また原発NGOの「THINK ATOM」等も協働している。

 請願の趣旨としてGogan氏は、もし欧州が原発投資を断念するとしたら、年間40億㌧以上のCO2排出量が増加し、温暖化回避のコストが増大すると指摘している。国連の政府間パネルIPCCが指摘する「1.5℃」目標に近づけるためには、むしろ2050年までに世界全体で原発稼動を増やす必要があると要請している。

原発をサステナブルファイナンスの対象に、と呼びかける英国のGorganさん
原発をサステナブルファイナンスの対象に、と呼びかける英国のKirsten Gorganさん

 原発増設は、再エネ発電と対立的なものではなく、再エネ、省エネ、さらに原発等、机上の選択肢をすべて動員すべき、という視点だ。EUのタクソノミー原案をまとめたのは、EUサステナブルファイナンス技術専門家グループ(TEG)。原案では、原発はその対象から除外されている。

 その理由として、TEGは、原発が気候変動の緩和に貢献することを認めたうえで、使用済み核燃料の廃棄物処分等の課題が解決していない点を指摘した。旧ソ連のチェルノブイリ原発事故や、東京電力福島第一原発の事故のような安全性対策の課題も想定したうえでのことだったと思われる

 しかし、請願では、EUおよびEU加盟国では、原子力規制と法令によって、使用済み核燃料は有害な影響を起こさないよう責任ある管理体制下に置かれることが定められている点を指摘。実際、欧州の原子力産業は数十年もの間、成功裏に管理してきたとして、。TEGはこの点を無視していると批判している。

 そしてそうした原発政策への無理解は、間違いであるだけでなく、長年、廃棄物の最終保管に向けて国際的に展開されてきた調査の価値をも無視するものだ、と強調。現在までの国際的調査の結果、最終処分場は非常に安全性を保つ形で設置できることが明確になっているとして、DNSH基準に抵触しない、などと主張している。

 またドイツが2022年までに国内の原発をすべて廃棄する方針を進めていることにも言及。「ドイツやその他の国が脱原発を進めていることは承知しているが、もし彼らが原発を廃止してしまうと、気候変動の緩和を迅速に進める手段をも廃止してしまうことになる。そうはさせたくない」とも付け加えている。

 ただ、請願の趣旨では、福島事故のようなリスクについては記載していない。旧ソ連や日本ではそうした安全対策が疎かだったが、EUではそんな次元の低いレベルでの事故発生の可能性はない、との判断かもしれない。

https://www.openpetition.eu/petition/online/include-nuclear-in-the-eu-sustainable-finance-taxonomy?direct=1#petition-main