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世界経済フォーラム(WEF)「2020年グローバルリスク報告書」公表。長期リスクの上位5位はすべて気候・環境リスク。世界の政治・経済リーダーたちも現実を認めざるを得ない結果に(RIEF)

2020-01-16 14:48:21

WEF4キャプチャ

 

  世界経済フォーラム(WEF)は、1月21日からスイスのダボスで開く年次総会に先立ち、「グローバルリスク調査報告書2020年版」を公表した。世界の政財界のリーダーら750人以上が回答した「今後、起き得る長期リスク」の上位5項目は、すべて環境関連が占めるという初めての結果になった。政治・経済両面で、気候リスクや環境リスクを認識せざるを得ない状況であることが明瞭になった。

 

 ダボス会議は21日から24日の日程で開かれる。トランプ米大統領が2年ぶりに出席するほか、黒田東彦日銀総裁、ラガルド欧州中央銀行(ECB)総裁、フォンデアライエン欧州委員会委員長、メルケル独首相、香港の林鄭月娥行政長官らも出席する予定。スウェーデンの環境活動家、グレタ・ツゥーンベリさんも出席する。

 

 グローバルリスク調査の回答者の3分の2は男性、地域では欧州と北米が過半数を占めた。年齢は大半が40─59歳だが、今回は30歳以下の200人を新たに対象に加えた。回答は長期リスクとして、(1)今後10年間で発生する可能性のあるグローバルリスク(2)発生した場合の影響度ーーを選らんだ。

 

右上に「緑」の環境リスクが集中している。
右上に「緑」の環境リスクが集中している。

 

 その結果、(1)の発生可能性の上位5リスクは、①異常気象(洪水・暴風など)②気候変動の緩和・適応の失敗③大規模な自然災害(地震・津波・火山爆発・地磁気嵐)④大規模な生物多様性の喪失と生態系の崩壊⑤人為的な環境損害・災害。すべて環境関連だった。

 

 (2)の影響度の上位5リスクは①気候変動の緩和・適応の失敗②大量破壊兵器③大規模な生物多様性の喪失と生態系の崩壊④異常気象(洪水・暴風など)⑤水危機。②以外は環境関連だ。環境関連以外では、ハイテク企業の企業統治の欠如、医療産業の不振などへの懸念が指摘された。

 

 個々のグローバルリスクは単体で収束するものではなく、他のリスクと相互関連する可能性がある。もっとも関連性の強いリスクの組み合わせは、上位から①異常気象 + 気候変動の緩和・適応の失敗②大規模なサイバー攻撃 + 重要な情報インフラとネットワークの故障③高水準の構造的失業または不完全雇用 + テクノロジーの進歩がもたらす悪影響④大規模な生物多様性の喪失と生態系の崩壊 + 気候変動の緩和・適応の失敗⑤食糧危機 + 異常気象、と続いた。

 

 

各リスクの相互関連性
各リスクの相互関連性

 

 長期リスクとして気候変動に対する深刻な脅威への懸念が明瞭に示される一方で、2020年に増大すると考えられる短期リスクの上位5位は次の通り。①経済対立 (78.5%)②国内政治の二極化(78.4%)③異常熱波(77.1%)④自然資源の生態系の崩壊(76.2%)⑤ サイバー攻撃:インフラ分野(76.1%)。

 

   短期リスクでは、地政学的な混乱と多国間協調主義の後退が、人類がこれらの危機的なグローバルリスクへ取り組むうえでの障害になっていると指摘。社会分裂を修復し、持続可能な経済成長を加速させる可及的な対応をしない限り、長期リスクの気候変動や生物多様性の喪失の危機に立ち向かうことが出来ないと警告している。

 

 WEFの気候変動イニシアチブ部門の責任者、エミリー・ファーンワース氏は「異常気象や山林火事、洪水などの目に見える影響がリスク意識を高めている」と表明した。

 https://www.weforum.org/press/2020/01/burning-planet-climate-fires-and-political-flame-wars-rage

http://www3.weforum.org/docs/WEF_Global_Risk_Report_2020.pdf