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米ノースダコタの石油パイプライン(DAPL)問題で、ワシントンの連邦地裁が環境影響評価のやり直しを命じる判決。大統領選挙でトランプ敗北の場合、事業廃止の可能性も浮上(RIEF)

2020-03-28 00:30:54

sTANDIGROCKキャプチャ

 

   米ワシントン連邦地方裁判所(コロンビア特別区連邦地裁)は25日、ノースダコタ州で先住民族のスタンディングロック・スー族の居留地を経由するパイプライン建設計画(ダコタ・アクセス・パイプライン:DAPL)を巡る訴訟で、同計画に承認を与えた米陸軍工兵隊(USACE)による事前環境影響評価の不適切性を訴えた原告先住民の主張を認め、USACEに調査のやり直しを命ずる判決を下した。DAPL問題は、トランプ大統領が就任後にゴーサインを出した案件で、世界中の自然保護団体が反発していた。

 

 連邦地裁のJames Boasberg判事は、USACEがパイプライン建設で付与した許可は、連邦環境法による判断において「概ね適合しているが、先住民にとって『重要な例外』がある場合は、検討の余地を残しておくべきだ」として、プロジェクトの潜在的な影響をさらに調査・評価することを命じた。

 

 追加的な調査・評価の対象として、判事が関心を示したのは、パイプラインからの原油漏えいを検知するシステムの有効性、創業者の安全管理記録の確認、ノースダコタの冬の期間の影響、皿に漏洩の最悪シナリオの分析(ストレステスト)等。

 

裁判所前でアピールする先住民の人々
裁判所前でアピールする先住民の人々

 

  原告のスタンディングロック部族の会長、Mike Faith氏は「重要な法的勝利だ。環境についての国民的議論を喚起するため抗議を継続する。今回の法廷の判断の結果で、連邦政府は我々の指摘を本気で聞くようになるだろう」と述べた。

 

  DAPLはノースダコタ州からサウスダコタ州を経てイリノイ州につながる全長1886kmの原油パイプライン。総事業費38億㌦。パイプラインはミズリー川をせき止めて作った人造のオヘア湖の下を潜り抜ける構造になっている。同湖はスタンディングロック部族の居留地内にあり、先住民たちは伝統儀式の対象地として、神聖視している。またパイプラインからの汚染懸念もある。

 

 2016年11月の米大統領選挙の直前、オバマ前大統領は住民たちの請願を受け付け、ルートの変更を命じた。しかし、大統領に就任したトランプ氏は年が明けた2017年2月、元のルートでの建設を承認し、オバマ裁定をひっくり返した。こうした展開に、住民たちを支持する世界の環境団体が同地を訪問、抗議の座り込み活動が長期間にわたって展開される事態を引き起こした。http://rief-jp.org/ct7/67857?ctid=66

 

DAPL226キャプチャ

 

 またDAPLへのファイナンスは、日本のみずほ銀行、三菱UFJ銀行を含めたグローバルな主要金融機関によるシンジケート団がローンを提供していた。国際金融の世界では、プロジェクトファイナンスに伴う環境・社会的影響が懸念される場合は、金融機関が事業者に環境影響評価を求める「エクエーター原則(赤道原則)」がある。しかし、同原則は先進国の案件は国内法制が整備されている、との前提でDAPLは除外されていたため、同原則の改定作業でも論点となった。https://rief-jp.org/ct6/96316

 

 こうした反対運動や論議の一方で、DAPL自体は運営会社の「Energy Transfer」社によって建設が進められ、2017年6月に運行を開始している。そのEnergy Transfer社は今回の判決について、メディアに対し、「進行中の法律案件についてはコメントしないのが会社の方針だ」と述べている。同社を支援してきた大規模インフラ事業者で構成する「GAIN Coalition」のスポークスマンは「驚くべき判断だ。DAPLは米国史上でももっとも規制され、(対策を)検討され、訴訟対象となってきたパイプラインだ。しかもすでに操業からほぼ3年間も安全に運用されているのに」と不満を表している。

 

 連邦地裁の判決は、USACEに再評価調査を命じたが、その間、パイプラインの差し止めを認めているかどうかは不明だ。判事は原告と被告の双方に対して、新しい環境評価の期間中、パイプラインの操業を続けるかどうかの意見書の提出を命じている。

 

「大地に忠誠を誓う」と書いたプラカードを示す子ども
「大地に忠誠を誓う」と書いたプラカードを示す子ども

 

  原告の弁護士のEarthjustice所属のJan Hasselman氏は「オバマ前政権は当初のパイプラインの建設許可を取り消す『正しい判断』をしたことを改めて確認できた。われわれは、パイプラインが廃止されるまで、訴訟を戦い抜く。おそらく、完全な環境評価は1年か2年はかかる。その間に、新しい大統領(民主党の)が誕生する可能性がある。そうなれば、USACEも正しい判断をとることができるようになる」と指摘している。

 

https://www.bloomberglaw.com/public/desktop/document/STANDINGROCKSIOUXTRIBEvUNITEDSTATESARMYCORPSOFENGINEERSDocketNo11/1?1585165801