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シンガポール、2030年の再エネ目標達成のため、太陽光発電電力の輸入を選択肢に。95%天然ガス依存からの脱却目指す。オーストラリアからの輸入計画等も検討対象か(RIEF)

2020-04-22 17:33:07

sun2キャプチャ

 

  シンガポールは、パリ協定に基づく改定国別対策貢献(NDC)を提出しているが、それに基づく2030年までの目標達成のため、太陽光発電による電力輸入を検討していることがわかった。現在、同国の消費電力の95%は天然ガス発電に頼っているが、よりCO2を削減するため、今後、太陽光等の再エネ発電を現状より6倍近く増やす必要があるためという。同国への太陽光発電電力の輸出先としては、隣接するマレーシア等が想定されるほか、オーストラリアから長距離送電線で提供する構想もある。

 

 (写真は、すでにあちこちに太陽光パネルが設置されているシンガポールの街)

 

 シンガポールの改定NDCは2030年の同国の温室効果ガス排出量を6500万㌧に制限する目標を立てている。これは現行(2005年比)36%の削減となる。

 

 同国はこれまでも発電は石油や石炭から脱し、化石燃料の中でも、もっともCO2排出量の少ない天然ガスへの切り替えを進めてきた。現在、電力に占める天然ガス比率は95%と大半を占める。2000年には18%だったから急拡大だ。しかし、天然ガス依存では、それ以上のCO2排出削減ができない。

 

  現状の「天然ガス依存」を修正するためには、太陽光等への再エネ転換が必要だ。同国は、太陽光は豊富に得られる。だが、国土面積は725㎢と東京都の3分の1の大きさしかないため、国内での太陽光発電の展開余地は限られる。洋上風力発電等にも力を入れているが、いずれも再エネの「量」を確保するには十分ではない。

 

 同国のエネルギー市場局(the Energy Market Authority :EMA)の見通しでは、国内のビルや家庭の屋上等に設置している太陽光発電の現行の発電量350MWpを、2030年までに少なくとも約6倍の2GWpへと拡大する必要があるという。同国の年間電力需要の約4%に相当する。これらすべてを国内の太陽光発電でまかなうとすると、725㎢の国土から10~20㎢の土地を手当てしなければならず、非常に困難を伴う。

 

 EMAはこれまで再エネ拡大需要への対応として、ビルや貯水場、洋上等に太陽光発電パネルの設置を整備してきた。しかし、国内での対応だけでは限界で、今後、安定的な再エネ電力を確保するには、天然ガスのように輸入を視野に入れる必要があると判断しているという。

 

 現時点では、どこの国からどれくらい輸入するか、といった詳細な計画は公表されていないが、有力候補の一つと目されるのが、オーストラリアからの輸入計画だ。

 

オーストラリアとシンガポールを結ぶ電力網計画
オーストラリアとシンガポールを結ぶ電力網計画
 オーストラリアの実業家等が進めている構想では、シンガポールから約3800km離れたオーストラリア北部の砂漠地帯で発電した太陽光電力を、送電容量2.5GWの直流ケーブル(HVDC)でシンガポールまで輸出する計画が公表されている。砂漠地帯にパネルを設置、蓄電設備も併設する計画で、安定的かつ安価で電力を輸出できるという。オーストラリアは石炭が主要な輸出産品だが、今後は太陽光というクリーン資源を輸出する考えだ。https://rief-jp.org/ct8/91806
  シンガポールでは、太陽光発電電力の輸入のほか、水素エネルギーの活用や化石燃料発電所にカーボン貯留回収設備(CCS)を併設する案も同時に検討しているとされる。いつまでも石炭火力発電と原発にしがみつくばかりの日本政府とは異なり、シンガポールは新たな可能性を現実化する選択肢を常に、考慮しているようだ。

https://www4.unfccc.int/sites/ndcstaging/PublishedDocuments/Singapore%20First/Singapore%27s%20Update%20of%201st%20NDC.pdf