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神戸製鋼の石炭火力発電所増設計画の環境アセス手続きで、環境省と経産省が事前に「談合(?)」。小泉環境相意見を書き換えさせる。専門家「手続きの透明性ないがしろ」と批判(各紙)

2020-09-24 12:11:54

kobelcoキャプチャ

 

 各紙の報道によると、神戸製鋼所が神戸市灘区の市街地で進める石炭火力発電所の増設計画を巡り、環境影響評価(アセスメント)の手続きで提出が決められている小泉進次郎環境相の意見書について、経済産業省が事前に意見書案を確認し、修正や一部表現の削除を求めていたことが分かった。環境省側も一部応じていた。環境影響評価法などでは、環境相は環境保全の見地から意見を述べるとされ、計画に反対する住民から「法の趣旨に明らかに反している」と批判が上がっている。

 

 (写真は、市街地のそばで稼働する神戸製鋼所の石炭火力発電所=神戸市灘区:神戸新聞より)

 

 神戸新聞が報道した。経産省は小泉環境相の意見書を踏まえ、発電所計画を許可するかどうか審査する立場にある。発電所計画に反対する地域住民らは、環境アセスで経産相が今回の計画を認めた確定通知の取り消しを求め、大阪地裁に提訴している。訴訟活動の一環で、住民らが国に情報公開請求をしたところ、環境相の意見書の策定過程で、環境省と経産省が複数回にわたり事前折衝していたことが分かったという。https://www.kobe-np.co.jp/news/sougou/202009/0013723551.shtml

 

 意見書の策定前にこうした折衝が常態化しているかどうかについては、経産省は「訴訟に関わるのでお答えできない」と回答したとしている。環境省のコメントは紹介されていない。

 

 原告弁護団によると、神鋼側が環境対策についてまとめた配慮書に対し、環境相の意見書は当初、天然ガス火力発電と比較して「CO2年間380万㌧以上多く排出することになる」などと指摘していた。だが、経産省側は「(排出量は)試算値で記載は不適切」などとして表記部分の削除を要望した。また別の個所で「(CO2排出削減の)環境保全措置が満たされない場合は発電所設置を認めることはできない」とした環境相意見の表記についても修正を求め、環境省がいずれも応じた。

 

 また、神鋼が発電所増設に先立ち、所有する高炉を廃止したことに絡め、環境相は「今回の事業実施で大気汚染物質の排出量を増加させ、(廃炉による)減少分を反故(ほご)にしないよう」とくぎを刺したが、この表現も経産省の異議で削られた、としている。

 

 神鋼側の準備書に意見を述べる段階では、環境相が、売電の契約先である関西電力にも言及していた。関電にCO2の排出削減を確実に実施させ、継続的に確認するよう神鋼側に注文したが、経産省が猛反発し、関電の社名が一部削除されたという。

 

 環境アセスメントを巡る環境省と経産省の事前調整問題はこれまでも指摘されてきた。2018年には、中国電力の島根県浜田市で建設計画中の三隅石炭火力発電所2号機のアセスメントを巡って次のような指摘がされている。「環境省は、これまで石炭火力の新増設計画に『是認できない』と強い表現で意見書を出すが、実際に撤回されたのは限られている。今では事前に経済産業省と表現を擦り合わせるなど意見書の有名無実化が進む」https://rief-jp.org/blog/75911?ctid=33

 

 「環境保護」の環境省、「エネルギー推進」の経産省、というそれぞれの役所のイメージを維持するため、役所同士が事前に「落ちどころ」を設定する調整作業をしている構図が、今回の神戸の事例でも浮き彫りになった形だ。

 

 神戸大学の島村健教授(環境法)は「火力発電を推進したい経産省に、環境省が押し切られてしまっている。事前に口裏合わせをしていたというのは、アセス手続きの透明性をないがしろにする行為だ」としている。

 

https://www.kobe-np.co.jp/news/sougou/202009/0013723551.shtml