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2019年度の石炭火力発電比率、全体の31.9%。構成比は前年度より微増。再エネ比率は水力を除くと10.3%。菅首相の「2050年ネットゼロ」宣言とは大きな乖離。資源エネ庁統計(RIEF)

2020-11-19 15:31:49

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 資源エネルギー庁によると、2019年度の日本の発電量に占める石炭火力発電の比率は31.9%で、前年度比1.4%減にとどまった。再生可能エネルギーは水力発電を含めて18.0%、水力を除外すると10.3%と石炭火力の3分の1でしかない。菅首相は「2050年温室効果ガス排出量ネットゼロ」を宣言した。だが、宣言を実現するには、2030年には排出量を45%削減(2010年比)、再エネ比率を60%に高める必要があるとされ、現行の政策では首相宣言の実現はほど遠い。

 

 エネ庁のエネルギー需給実績(速報)によると、最終エネルギー消費は前年度比2.0%減。うち石油同2.5%減、石炭同2.0%減、電力は同 1.9%減、都市ガスは同0.1%減となった。企業部門、家庭部門の両方とも、季節要因に加え、省エネ化の推進で消費量が低減傾向が続いている。

 

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 供給サイドでは、一次エネルギー国内供給は、前年度比3.1%減。化石燃料は6年連続減少、再エネ及び原子力などの非化石エネルギーは7年連続で増加。発電電力量も2.2%減(1兆277億kWh)。発電電力量の構成は、再エネが18.0%(前年度比1.2%増)、原子力6.2%(同横ばい)、火力 (バイオマス除く)が75.8%(同1.2%減)で、火力依存の構造に大きな変化はない。

 

 石炭供給は前年同期比1.4%減だが、発電量全体に占める比率は、供給全体が縮小したことで18年度の31.6%から31.9%に微増している。東日本大震災前の2010年度比での構成比は2.4%増と増えている。大震災で原発停止となった後、石炭火力は2013年度には10年比で16.1%増と急増した。19年度はその13年度のピーク時に比べると8.2%減となっている。

 

 再エネ比率は、18年度から1.1ポイントの18.0%と比率を高めた。ただ、水力を除いた太陽光、風力、地熱、バイオマスに限定すると、ようやく10.28%で、初の二ケタ台に乗せたことになる。石炭火力の3分の1でしかなく、年間の伸び率も勢いを欠く。

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各発電源の推移

 

 2050年ネットゼロを実現するには、一夜にして排出量が減るわけではないので、2030年のCO2排出は10年レベルから45%~50%前後の削減が求められるとされる。EUは2030年に55%削減を目指している。30年の削減を進めるには、石炭火力等の化石燃料発電の減少とともに、再エネ発電の発電量に占める割合を少なくとも過半にまで引き上げることが求められる。

 

 しかし、現行のわが国のエネルギー基本計画では、2030年の再エネ比率は全体の22~24%と低い水準を目標としている。仮に、この目標比率を倍以上引き上げても、過半には達しない。来年に予定される第6次エネルギー基本計画では抜本的なエネルギー政策の転換が求められる。

https://www.enecho.meti.go.jp/statistics/total_energy/pdf/stte_gaiyou2019_sokuhou.pdf