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EU欧州委員会、EU市場での強制労働製品の排除法案。サプライチェーン含む。中国のウイグル族弾圧疑惑への対応とともに、域内での強制労働疑惑も対象。加盟国当局に調査・判断権限(RIEF)

2022-09-15 13:01:32

EUforecedキャプチャ

 

  EUの欧州委員会は14日、EU市場において、強制労働によって作られた製品(サプライチェーンを含む)の取り扱いを禁止する法案を公表した。EU域内で国内消費や輸出用として製造されるものや、同様の強制労働を活用した輸入品を対象とする。特定の企業や産業に関わらず、としているが、中国新疆ウイグル自治区でのウイグル族への強制労働を意識しているとみられる。法制化は欧州議会、同理事会の承認を経る必要があるため、実施は法成立後、2年後になる見通し。

 

 欧州委の副委員長で貿易担当のヴァルディス・ドンブロウスキス(Valdis Dombrovskis)氏は「今回の提案は、地球上で数百万人が影響を受けている『現代奴隷労働』を明確化するものだ。われわれの目的は、EU市場では強制労働によって製造された製品は、どこの国で作られたものであっても排除することにある。さらに、国際機関やグローバルなパートナー国等との協力を深めていく」と述べている。

 

ドンごるすきー氏
欧州委副委員長のドンブロウスキス氏

 

 法案では、EUの加盟国政府が対象となる製品等について、関連情報に基づいて強制労働リスクの有無を評価・判断し、実施措置を講じる。各国が判断に際して対象とする情報には、市民団体による指摘や、各国での強制労働をモニターしている国際労働機関(ILO)などのデータベース、製品に関わる企業のデューデリジェンスに伴う情報等も含まれる。

 

 各国当局は、強制労働に寄るとの疑惑がある製品についての調査を独自に実施する。調査の対象は完成品だけでなく、部品や原材料等のサプライチェーン工程も含む。調査では関連する企業に対して、資料の提供を要求することができる。対象企業はEU企業だけでなく、EU域外の企業も対象となる。調査によって強制労働が発覚した場合は、市場に流通する製品を回収・引き上げさせるとともに、新たな市場への投入、輸出を禁じる措置を講じる。そのうえで、企業は対象製品の廃棄を求められる。https://rief-jp.org/ct4/115803

 

 さらに加盟国の税関当局も、通関に際して、調査で強制労働が認定された製品の輸入を停止できる。仮に、各国当局の調査の過程で、対象製品の企業や、非EU諸国の協力が得られずに、十分な情報を集めることができない場合は、利用可能な情報を踏まえて判断することができる、としている。

 

 強制労働判断の対象には、完成した製品だけでなく、サプライチェーンも含まれる点で、日本企業にも影響が及ぶ懸念がある。原料の収穫から加工、生産等のどこかの工程で強制労働があると認められる場合も、輸入禁止の対象になるためだ。したがって、ウイグル自治区で生産された綿製品等を使ったアパレル製品等も禁止対象になる可能性がある。

 

 ILOによると、2021年に世界中で強制労働を強いられている人は2760万人にいるとの調査結果を発表している。また中国のウイグル族弾圧疑惑をめぐっては、国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)が8月末に、新疆ウイグル自治区で「テロや過激派対策の名目で深刻な人権侵害が行われてきた」と認定する報告書を公表している。https://rief-jp.org/ct11/127982

 

 中国のウイルグ族弾圧疑惑では、米国が6月に、新疆ウイグル自治区からの輸入を原則禁止する法律を施行している。同法では、事業者は強制労働で作られた製品ではないと証明できない限り、同製品を米国には輸出できないとしている。https://rief-jp.org/ct4/114346

 

 米国の法規制は中国を対象にしているが、欧州委の法案は特定の地域を名指しせず、EUを含む世界を対象とする。中国への刺激を避けるとともに、EU域内でも強制労働・奴隷労働が存在することを踏まえている。日本の外国人技能実習制度が「強制労働」と認定されるリスクもある。

https://ec.europa.eu/commission/presscorner/detail/en/ip_22_5415