HOME |アウトドア用品大手のパタゴニア創業者、同社の全株式を環境団体等に譲渡。企業価値約30億㌦(約4300億円)。会社の配当金(年間1億㌦前後)を環境保護活動に充当(RIEF) |

アウトドア用品大手のパタゴニア創業者、同社の全株式を環境団体等に譲渡。企業価値約30億㌦(約4300億円)。会社の配当金(年間1億㌦前後)を環境保護活動に充当(RIEF)

2022-09-15 18:59:59

Patagonia001キャプチャ

 

  米アウトドア用品大手パタゴニア創業者のイボン・シュイナード(Yvon Chouinard)氏は、同社の全株式を環境団体などに譲渡することを明らかにした。同社の企業価値は約30億㌦(約4300億円)とされ、毎年の利益も約1億㌦に上る。同氏はパタゴニアの顧客に向けた公開書簡の中で、「事業の繁栄を大きく抑えてでも地球の繁栄を望むのならば、私たち全員が今手にしているリソースでできることを行う必要があります。これが私たちにできることです」と述べている。

 

 パタゴニア自体は、これまで通り、営利企業としての事業を継続する。

 

 同氏によると、まず同社の議決権付株式の100%を、会社の価値観を守るために設定した信託機関「the Patagonia Purpose Trust」に譲渡する。同時に、無議決権株式の100%を環境危機と闘い自然を守る非営利団体「the Holdfast Collective」に譲渡する。パタゴニア自体は事業をこれまで通り継続するので、事業に再投資後に残る剰余利益を配当金として分配、環境団体の活動資金に充当する。

 

ぱたご002キャプチャ

 

 パタゴニアは同氏が1973年に設立した。米カリフォルニア州ベンチュラが拠点。日本を含めグローバルに店舗を展開するアウトドア用品の大手だ。ビジネス展開と同時に、自分たちの経済活動が環境に及ぼす影響を抑制する取り組みを続けてきた。製品に環境負荷が少ない素材を使うほか、包装紙を使わない、毎年売上の1%を寄付する、などだ。

 

 同氏はこうした取り組みについて「正しい行いをしながら生活に十分な資金が稼げるならば、顧客や他のビジネスにも影響を与えられるし、そうしている間に社会の仕組みも変えられるだろうと思ってやってきた。しかし、気候変動の激化等から、そうした取り組みだけでは十分でないと気付いた」と明かす。そこで「パタゴニアの価値観を維持しつつ、この危機と闘うためにより多くの資金を投入する方法を見つける必要があった」

 

 今回の決断をするまで、複数の選択肢を考慮したという。例えば、パタゴニア全体を売却して、その売却益をすべて環境活動等に寄付する方法や、同社の株式を公開する方法等だ。しかし、前者については、パタゴニアの価値観や世界中で雇用されている人材を維持してくれる新たなオーナーを見つけられるという確信はなかった。

 後者については「公開していたら、とんでもない失敗になっただろう」と振り返る。「なぜなら、どんなに素晴らしい志のある公開会社でも、短期的な利益を得るために長期的な活力や責任を犠牲にしなければならないという過剰なプレッシャーに晒されるためだ」と説明する。

 こうした中から、今回の会社ごと「寄付」する方法を採用することを決めたという。設立された「Patagonia Purpose Trust」は、パタゴニアのバリューとミッションを守ることだけを目的とする。同信託は、会社のすべての議決権付株式を保有することで、取締役会構成員の選任や会社定款の変更など、会社の重要な決定を承認する権限を有する。

 環境NGOの「Holdfast Collective」はパタゴニアから受け取るすべての資金を利用し、環境危機との闘い、自然や生物多様性の保護、活発なコミュニティのサポート活動等を可能な限り素早く行っていくとしている。同団体は米国の非営利の501(c)4団体として設立され、助成金の提供や地球環境へ投資のほか、理念・信念のある活動や政治的な候補者の後援活動等も行う。

 シュイナード氏は著書「社員をサーフィンに行かせよう」でパタゴニアの経営論を紹介するなど、ビジネス展開と、環境保護活動を両立させた経営者として、日本でも知られている。日本の創業経営者にも見習って欲しい行動だ。

 

https://eu.patagonia.com/gb/en/home/