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経産省。企業の工場、オフィス等の屋根置き太陽光発電を「固定価格買取制度(FIT)」に組み込みへ。現状より2~3割高い価格で買い上げ、設置を後押し。家庭用やVPPの扱いが焦点に(各紙)

2023-01-30 21:34:19

rooftopキャプチャ

 

  各紙の報道によると、経済産業省は再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)に新たに、企業の工場や倉庫、オフィス等の屋根に設置する屋根置き太陽光発電電力を、現行の太陽光発電よりも高値で買い取る制度を導入する。買い取り価格は2~3割高とすることで、企業の太陽光発電投資を後押しする考えという。家庭の屋根置きや、地域全体の屋根置き太陽光設備を統合制御する「バーチャルパワープラント(VPP)」等は対象に含めない見通し。ただ、高値の買い取り額の負担分は、電力消費者の賦課金に上乗せになることから、家庭の屋根置きやVPP等の扱いが課題となりそうだ。

 

 日本経済新聞が報じた。経産省は、2024年度からの導入を想定しているとしている。31日に開く同省のFIT価格などを検討する委員会に提案する。2012年に民主党政権時代に始まったFIT制度で、太陽光発電の設置場所により、買い取り価格に差を付ける取り扱いの導入は初めてとなる。

 

 同省は、同政策を、政府が掲げる2030年度の温室効果ガス(GHG)排出量を46%削減(2013年度比)目標を実現するための対策と位置付ける方針だ。

 

 「高値買い上げ」の対象とする屋根置き太陽光発電については、発電量10kW以上の事業用の設備を想定する。現行のFITでの太陽光発電の買い取り価格は、発電量50kW未満までは1kW当たり10円、50kW~250kW未満までは9.5円となっている。これを、企業の工場やオフィスの屋根置き設備の場合、2〜3割高い12円程度に設定する見込みとしている。

 

 規模の大きい太陽光発電の場合は、現在は、事業者を対象とした入札で買い取り価格を決めている。だが、屋根置き太陽光設備を対象としたFIT価格については、規模が大きい場合でも入札の対象外とし、企業が取り組みやすくするよう優遇策を盛り込む方針としている。

 

 FITの太陽光発電は制度発足以来、中核の再エネ事業として新電力や企業等の参入が相次いできた。だが、パネル価格の低下が続く中で、買い取り価格の引き下げが毎年のように続いたほか、平地での大型の太陽光発電設備の適地も、多くが開発済みとなったことで、新規の開発は頭打ちになっている。

 

 経産省のエネルギー基本計画では、2030年でもCO2排出量の多い石炭火力発電を、電源構成の19%分を維持する方針としている。このため、現状の再エネ等の開発状況では、全体の目標達成が困難になるとの見方も強まっている。再エネ事業を改めて活性化させるため、企業向けの屋根置き発電の優遇策を展開することにするとみられる。

 

 エネルギー基本計画では再エネ発電のうち、太陽光発電量は全体の14〜16%に引き上げる目標を設定している。同目標の達成には年間400万〜600万kW分の新規のFIT認定が必要とされる。しかし、再エネ開発余地の減少から、2016年度に550万kWあったFITでの買い上げは、21年度には240万kWと半減しており、このままでは30年の再エネ目標の達成も難しくなっている。

 

VPP001キャプチャ

 

 企業の工場や倉庫、オフィス等の屋根スペースに太陽光発電を設置する場合、休耕田や山林等の開発による太陽光発電に比べて、足場の設置等の追加コストが必要になることも、高値買い上げの理由と説明している。また地上型の太陽光発電は開発余地が減少していることに加え、景観との対立、傾斜地設置の太陽光パネルによる災害発生の激化への懸念等で、開発が難しくなっていることも指摘される。

 

 企業関連の屋根置き太陽光発電の設置可能面積は、科学技術振興機構低炭素社会戦略センターは、7600㎢と試算する。東京都の約3.5倍の規模だ。ただ、家庭の屋根置き発電の場合も、VPPを活用すれば効率的で安定的な発電が可能となる。すでに民間ベースでVPPの取り組みは各地で展開されており、こうした発電も対象にすれば、発電量は実質的に倍増することが期待される。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA268RF0W3A120C2000000/?type=my#AAAUAgAAMA

https://www.enecho.meti.go.jp/category/others/basic_plan/pdf/20211022_03.pdf