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環境・経産両省による太陽光パネルのリサイクル法案、法制局の「異議」で足踏み。政策当局が拡大生産者原則(EPR)の理解不足により、国際的潮流から逸脱するリスクも(RIEF)

2025-09-14 22:55:51

大量廃棄が懸念されるメガソーラーの太陽光パネル=写真はイメージです

 

  環境省と経済産業省が示した太陽光パネルのリサイクル制度案が足踏みしている。両省の案に対して、政府内で内閣法制局が「待った」をかけたためとしている。論点は、自動車や家電等でのリサイクルは消費者負担だが、太陽光パネルは製造事業者(輸入の場合は輸入事業者)負担とする両省案に、法制局は整合性が取れないと指摘している点だ。だが、太陽光パネルは家庭用の小規模なものよりも、事業用の大規模な設備の大量廃棄が課題となっており、国際的にもパネル製造メーカーが処理責任を負う拡大生産者責任(EPR)に沿う対応が主流だ。この問題、家電製品等のリサイクル責任を消費者に課している現行制度の「あいまい性」も背景にあるようだ。

 

 WWF、FoE、グリーンピースの各日本団体など環境NGO9団体は、政府の廃棄太陽光パネルのリサイクル対応で、環境省と経産省が一度、とりまとめたリサイクル案を撤回したことに対し、「廃棄物問題への懸念を深めることになり、再エネ導入拡大の大きな阻害要因となる」と指摘している。当初の両省案では6月に閉幕した今国会にも法案を提出する予定だった。

 

 環境NGOらは 「リサイクルは喫緊の課題」(WWFジャパンの担当者)として、来年前半に開かれる通常国会に法案提出を求めた。当初、両省は6月に閉幕した今国会にも法案を提出する予定だった。ところが、浅尾環境相は8月29日の記者会見で、当初法案を撤回して見直する考えを明らかにした。その理由について内閣法制局が「異議」を出したことをあげた。

 

 法制局の「異議」は、冒頭で指摘したように、自動車や家電などの他のリサイクル制度との整合性に疑義があるという点だ。いったん立案した法案を、政府内で法律の立案を担当する法制局から異議を示されて中断するという経緯は、両省の政策立案作業において、政府内部での調整を十分にしなかったことを示すもので、両省の「政策立案能力」に問題ありと言わざるを得ない。

 

 また「異議」をつけた法制局も、廃棄物減少のための国際的なリサイクル制度の在り方についての理解・検討が不十分なまま、国内の既存制度との表面的な「整合性」だけを根拠に「待った」をかけたとすれば、法制度のプロとして「情けないレベル」との批判を免れないだろう。

 

 EUではWEEE指令により、太陽電池パネルの生産者はモジュール等の使用後の回収責任に課せられており、現状は資源回収率85%、リユース*・リサイクル率80%(今年4月のNEDO調査)となっている。米国も製品の回収や廃棄物処理などについては基本は生産者責任となっている。また最近は韓国などのアジア諸国でも太陽光パネルの回収責任は、EPRに基づいて生産者責任として廃棄物の再利用を促す政策を取り入れている。

 

 仮に、わが国の太陽光パネルの廃棄物処理責任を、法制局が「異議」を出したとされるように、家電製品のような消費者負担にすると、消費者の電力料金に上乗せされることになる。すでに現行の電力料金には再エネ電力賦課金が加算されており、そのうちの太陽光発電のパネル処理費用も追加で上乗せされると、将来的に再エネ比率が高まるとすると、消費者の追加負担は増大する一方となる。そうなると、消費者の購買力全体の意欲を大きく減退させることにつながりかねない。

 

 また、むしろ、現行の家電等のリサイクル制度がEPRと整合性がついていないとの見方もできる。製品の廃棄段階での回収、再利用、最終処理等の費用については、原則として生産者負担が国際的に認められているのに、わが国の家電リサイクル法等では消費者にも分担させる制度としている。こうした制度は、EPRの生産者責任を覆い隠す形にみえる。

 

 本来は家電などについても、生産者責任として、生産者は将来の回収等の費用を、販売段階の価格に上乗せするのがEPRでの対応となる。だが生産者は販売価格の引き上げを嫌うため、リサイクル法制を立案した際の政策当局者は、生産者に配慮する形で、廃棄・再利用等の費用の一部を消費者にリサイクル費用として「後払い」させる形にしたと思われる。現行のリサイクル制度こそが、EPRから逸脱した「あいまい性」の根源といえる。

 

 法制局は、太陽光パネル法案を踏まえて、既存のリサイクル法制について、生産者責任を明確化し、販売段階で回収・再利用・最終廃棄等の費用を製品価格に上乗せする法制度に改正するよう、両省に提案すべきだったともいえそうだ。実際、両省はEPRについて十分な理解をしていないのだ。記者会見で浅尾氏は、法制局からの「注文」に対して、「(両省とも)現時点では合理的な説明が困難との整理に至った」と説明している。EPRの原則と、その法制化の意味を、よくわかっていないことを自ら吐露した形だ。

 

 NGO9団体の声明は「太陽光パネルの廃棄量は、2040年頃には年間40万㌧規模に達する可能性がある。早ければ、FIT制度初期の買取期間が終わる2030年代前半には急増することが見込まれるため、既設分の対応を含めたリサイクルの義務化は急務の課題だ」、「『(法制局は)他のリサイクル関連法と齟齬する』との指摘だが、拡大生産者責任の重要性が増す時代に合わせて新法で制度的枠組を刷新することは何ら問題がないはず。時代に合わせて新法で制度的枠組を刷新することも何ら問題がないはず」と指摘している。

 

 両省は再検討を急いでいるというが、努力義務に後退する可能性も指摘されている。この点でNGOらは声明で「(努力義務では)どこまで実効性が担保されるかは不明」と指摘し、「義務化しなければリサイクル費用は高いままとなり、リサイクルがほとんど行われないことが懸念される」としている。ひょっとして両省は最初から落とし所を、努力義務に持ち込むことを目指して、法制局の「異議」をあえて喚起させ、行政指導による行政の権限の維持を「最優先」しようとしているのでは、との見方もできる。

                           (加藤裕則)

 https://www.wwf.or.jp/activities/statement/6041.html

https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/sangyo_gijutsu/resource_circulation/solar_power_generation/20250328_report.html