HOME |英イングランド銀行前総裁のカーニー氏、カナダのオルタナティブ投資最大手、Brookfield AMの副会長兼ESG・インパクト投資責任者に就任(RIEF) |

英イングランド銀行前総裁のカーニー氏、カナダのオルタナティブ投資最大手、Brookfield AMの副会長兼ESG・インパクト投資責任者に就任(RIEF)

2020-08-28 00:14:12

Carney001

 

   英イングランド銀行とカナダ銀行総裁を歴任したマーク・カーニー氏が、オルタナティブ投資の大手、カナダのBrookfield Asset Management(BAM)の副会長兼ESG・インパクト投資部門の責任者に就任した。同社は120年の歴史を持ち、不動産、インフラ、再エネ等の代替資産投資を軸にグローバル運用資産額5500億㌦(約58兆円)を抱える。

 

 カーニー氏は、両中銀総裁時代を通じて金融安定理事会(FSB)議長を務め、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)による気候関連金融リスク提言策をまとめるなど、気候リスクに正面から取り組んできた。今年3月にイングランド銀行総裁を退任後、国連の気候変動と金融担当大使、国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)のためのジョンソン英首相の気候アドバイザー等を務めているが、これらのポストは引き続き継続する。

 

 カーニー氏は「ネットゼロ経済に向けての移行を加速することは、今日の最大のビジネスオポチュニティの一つだ。私は投資家や社会の利益を高めるために、再エネ事業やサステナビリティ関連投資で主導的な役割を果たしているBAMの事業をさらに強化したい」と早くも、ビジネスモードのコメントを出している。

 

Carney002キャプチャ

 

 名誉職的な副会長の肩書だけではなく、「ESG・インパクト投資部門ヘッド」の肩書を負っているのだ。BAMはグローバルに再エネ事業を展開しており、現在、稼働中の再エネ事業での発電量が約20GW、開発中が18GWを抱え、「世界最大の純粋の民間再エネ事業者だ」と胸を張っている。元々、米銀ゴールドマンサックスで投資事業で腕を振るってきたカーニー氏にとっては、久々の「現場」なのだ。

 

  BAMのCEOのBruce Flatt氏は「カーニー氏を迎え入れることができて最高の気分だ。彼はこれまでの官民両面でのキラ星のような経歴を通して、民間資金が気候行動を実践できることを明確に言明してきた。われわれのこれまでの再エネ投資の蓄積に加えて、カーニー氏はリスク調整後の高いリターンを伴う長期的成果を、われわれの活動に加えてくれるだろう」と歓迎を示している。

 

 カーニー氏は、イングランド銀行総裁時代に、自らが率先する形で金融機関や投資家に対して、気候変動に対応する金融行動を早急に取ることを求めてきてきた。総裁時代に自らが発した要請を、自身が金融機関のトップとして実践することになる。政策発信者から、政策を受けてのビジネス実践者に転じるわけだ。

 

 日本流に考えると、「天下り」ではある。だが、CEOのFlatt氏が歓迎コメントで明言しているように「リスク調整後の高いリターンを伴う長期的成果」を期待されている。それは、古巣のカナダ中銀や英中銀の人脈に頼って、「都合のいい仕事」を多めに回してもらうというような、どこかの国の官民事情とは異なる。

 

 カーニー氏といえども、成果が伴わないと、ポストにとどまり続けることは、投資家が許さないだろう。筆者は、黒田日銀総裁の後任に、カーニー氏を起用してはとの「名案」を、折に触れて喧伝してきた。だが、すでに2つの中央銀行総裁のポストを経験したカーニー氏にとって、金融市場よりも、政治・政府とつながっているような日銀総裁の仕事は「ボーリング(退屈)」に映ったかもしれない。

 

 カーニー氏の再エネ・インパクト投資市場への参入で、グローバルなサステナブルファイナンス市場全体が、さらに活気づくことを期待したい。

                           (藤井良広)

https://bam.brookfield.com/press-releases/2020/08-26-2020-131930311#:~:text=BROOKFIELD%2C%20NEWS%2C%20Aug.%2026,to%20his%20role%20at%20Brookfield.