国際統合報告評議会(IIRC)とサステナビリティ会計基準機構(SASB)による「Value Reporting Foudation(VRF)」が正式に始動。IFRS財団のISSBと歩調を合わせる(RIEF)
2021-06-10 01:30:55
国際統合報告評議会(IIRC)とサステナビリティ会計基準機構(SASB)は9日、両機関が統合した「Value Reporting Foundation(VRF)」が正式に始動したと発表した。両者は、財務報告と非財務報告をつなぐ統合報告書を推進してきたIIRCと、セクター別のサステナビリティ情報開示を展開してきたSASBの合併によって、ビジネスと投資家の双方に、企業価値の共有理解を深めることができるとしている。
両機関は昨年11月に、合併を発表していた。新財団のCEOには、SASBのCEOを務めたJanine Guillot氏が就任。IIRCのCEOだった Charles Tilley氏はシニアアドバイザーとなる。名誉議長にはMichael Bloomberg氏が就いた。https://rief-jp.org/ct6/108576
他の理事メンバーは、共同議長にPwCのRichard Sexton氏と、元ワコビア銀行のCEO等を勤めたRobert K. Steel氏、共同副議長に国際会計士団体ACCAのHelen Brand氏と、元米証券取引委員会(SEC)委員長のMary Schapiro氏がそれぞれ就任した。
両機関の統合は、サステナビリティやESG等の非財務情報の開示フレームワークを開発する民間自主団体が、複数並列してきたこれまでの状況からステップアップし、企業が抱える気候変動リスクをはじめとするサステナビリティ要因の評価を、市場が比較可能なように共通化する統合化の一歩と評価できる。企業の情報開示の比較可能性が高まることで、金融市場のサステナビリティへの資金の流れを支える期待がある。
Guillot氏は「われわれは、コーポレートレポーティングをもっと簡略化してもらいたいとの強い要求を、ビジネス界からも、投資家からも聞いてきた。SASBとIIRCがそれぞれ開発してきたツール、資源、関係性を組み合わせることを通じて、VRFはサステナビリティ情報開示を推進するIFRS財団の取り組みの支援を続けていく」と述べている。
IFRS財団は、11月の国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)でサステナビリティ情報開示の国際経摘フレームワークづくりを担当する国際サステナビリティ基準機構(ISSB)の立ち上げを正式に宣言する予定。VRFはそうした共通フレームワーク化を支える形で、財務情報と非財務情報の統合・連携化を進める。
IIRCのフレームワークは、企業が統合報告に際しての報告書の構造や内容に関する原則ベースのガイダンスを提供している。これに対してSASBの基準は、産業ごとに情報開示のポイントや基準を提供することで、各産業が抱えるサステナビリティのリスクと機会を投資家が理解することを支援することを目指している。両方の開示手法は今後も、並行してそれぞれの開発チームが提供していくという。
企業は自社の情報開示ニーズに応じて、SASB基準を活用してセクター別の非財務情報開示を進めるとともに、それらが今後公表されるIFRSのISSBによるフレームワークとの整合性を検証したうえで、財務情報開示との統合化を図るという使い分けをすることになりそうだ。
TCFDを率い、SASBも実質的に推進し、VAFの名誉議長となったMichael Bloomberg氏は「サステナビリティ情報開示と、統合報告において大きな前進だ。特に気候変動に関するリスクと機会が表面化している中での前進となる。両機関の合併は、より強く、よりレジリエントな経済へ、さらにより明るく、安全な未来への重要な一歩だ」と称賛した。ISSBのフレームワーク案も、TCFDを踏まえている。