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米銀最大手JPモルガン・チェース、金融のサステナビリティ課題への取り組みを強化するため、環境NGO大手の専門家をスカウト。サステナビリティチームの中心に据える(RIEF)

2022-01-08 19:03:00

BenRatnerキャプチャ

 

 米銀最大手のJPモルガン・チェース(JP  Morgan Chase)は、サステナビリティの責任者(Executive Director)として、環境NGOの「Environmental Defense Fund (EDF)」のエネルギー移行部門の専門家を登用した。登用されたのはEDFのBen Ratner氏。JPモルガン全体のグローバルサステナビリテイ課題のうち、コミュニティ等に配慮したインクルーシブ成長や低炭素技術の加速化等を担当するという。

 

 Ratner氏が所属していたEDFは1967年設立の米国でも権威と影響力のある環境NGOとして知られる。250万人の会員、支援者を抱え、スタッフの数も750人。会費等による年間収入は2億2100万㌦(約256億円)という規模。

 

 そのEDFでRatner氏は、エネルギー分野を中心に10年の経験を持つ。直近では、EDFのアソシエート・バイスプレジデントとして、同団体のビジネスエネルギー・トランジションチームを率い、世界の主要なエネルギー企業や投資家と連携、官民連携のブレンデッドビジネスと政策ソリューションの構築に携わってきた。

 

 それ以前は、McKinsey & Companyでシニア・アソシエーツとして、企業の戦略分析や計画、医薬品業界向けのコンサルタント等を担当したほか、多国籍法律事務所のレイサム・ワトキンスで化学業界関連の法律コンサル等の経験もある。スタンフォード大学出身。企業と政策を共に「よく知る」NGOとして評価され、直接JPモルガンにスカウトされたようだ。

 

 JPモルガン入り後は、同グループのサステナビリティ対応のグローバル責任者であるMarisa Buchanan氏の傘下で行動することになる。

 

 Ratner氏は「JPモルガンが低炭素な世界への移行を促進する重要な仕事を支援するため、同グループのチームに参加できることを嬉しく思う。気候およびグリーンテクノロジーのソリューションを提唱してきた者として、より大きなポジティブインパクトを創出するスケールと、スコープと、スキルを持つJPモルガンと、その野心的チームへの参加は光栄だ。金融のリーダーとビジネス、市民社会、政府等の連携に力を入れたい」と述べている。

 

 わが国でもCSRのコンサルタントが、企業のESG戦略のためにスカウトされた事例はある。だが、NGOからの本格的な採用はまだない。サステナブルファイナンスに取り組む金融機関も増えてきたが、いずれも自社のスタッフがESG・サステナビリティを「勉強」して取り組むという自前方式が主流だ。

 

 しかし、サステナビリティ課題は教科書の世界だけではなく、実際の市民社会や環境問題への取り組みの中での解決が求められるケースが少なくない。日本では特に、政府の政策が後手に回り易いので、政策を動かす力も必要だ。NGOを「反対する人々」と位置付けるだけではなく、NGOや市民社会の視点をサステナビリティ経営に生かす企業・金融機関が現れることを期待したい。

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