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「グローバル・リポーティング・イニシアティブ(GRI)」。金融機関ごとのセクター別開示基準草案。銀行、保険、資本市場に区分。高炭素や高自然負荷企業は他の企業と別建てで開示(RIEF)

2025-05-08 22:59:37

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  企業等の自主的なサステナビリティ開示基準としてグローバルに定着している「グローバル・リポーティング・イニシアティブ(GRI)」は、新たに金融機関ごとのセクター別の開示基準草案を作成、公開した。銀行、保険、資本市場ごとに設定し、気候変動分野と生物多様性分野では、CO2多排出や自然等の高負荷企業については、ポートフォリオの他の企業等と別建てで取り扱う等としている。同草案へのコメントは今月末まで、ステークホルダーからのパブリックコメントを募集している。日本では5月12日に、日本語での解説ウェビナーを開催する予定だ。

 

 GRIスタンダードは、過去にも金融部門の開示基準を設定したことがある。今回は、そうした過去の基準の改定ではなく、気候変動をはじめとするサステナビリティ課題が企業の財務パフォーマンスにもたらすリスク・機会の把握を主眼におき、IFRSの国際サステナビリティ開示基準(ISSB)の公開等を踏まえて、同基準を補完する形での基準草案を作成した。

 

 GRI自身、ISSBと連携している。ただ、ISSBが環境・社会的要因が企業価値に影響を及ぼすことの開示を求めるISSBのシングルマテリアリティの立場とは異なり、GRIは企業活動が環境・社会に及ぼす影響についての開示も求める「ダブルマテリアリティ」の視点での情報開示により基準を作成している。

 

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 今回の金融機関向けのセクター別開示基準案は、銀行、保険、資本市場の3分野に分けて設定した。2016年から発行されているGRIスタンダードは、開示の基本となる3つの共通基準(Universal Standards)、32の課題別基準(Topic Standards)、そしてセクター基準(Sector Standards)の3本柱で構成される。

 

 GRIのセクター別基準については、40業種のセクター別基準を順次開発中で、今回、それらの中から銀行、保険、資本市場の金融3業種向けの基準草案を、多様なステークホルダーの参加を受けて、内容を精査する形で設定した。証券取引所、格付機関、不動産投資信託(REIT)などは3業種に含まれていない。

 

 銀行向け基準案では、個人向けの消費者銀行、商業銀行、企業向けコーポレートバンキング、投資銀行の4分野に分けている。保険業は生命保険、非生命保険(損害保険)、再保険、保険仲介業(代理店、ブローカー等)を対象とする。 資本市場については、資産保有機関のアセットオーナーシップ、資産運用、富裕層向けのウェルスマネジメント、カストディアン活動、投資アドバイザーの5分野を対象としている。

 

 基準草案は、現存の課題別基準の中から21課題(保険は20課題)を金融機関にとってのマテリアル(重要)な可能性の高いトピックスと特定し、それぞれの課題別基準に付加する業種向けのガイダンスを提供している。また、金融健全性とインクルージョン、公衆・顧客の安全衛生、投資へのサステナビリティの統合(銀行、資本市場は最初の項目のみ)に関する開示ガイダンスを追加している。

 

 気候変動に関しては、ポートフォリオに含まれる高排出業種に対するポリシーを明確にし、同業種からの温室効果ガス(GHG)排出量を他業種と分けて設定し、進捗を計るよう求めている。生物多様性に関しても同様に、自然分野に重大な影響を及ぼす企業等の特定方法や対処するポリシーを示すよう求めている。また、汚職・金融犯罪防止の項目では、リスク評価、反汚職ポリシーに関する訓練、犯罪防止手続き、確認された事案と対応などの開示を求めている。

 

 GRIスタンダードに準拠した(in accordance with)開示を目指す企業は、自社におけるインパクト・マテリアリティに基づいて課題別基準と該当するセクター基準を検討し、開示するか、もしくは開示しない理由を記載する必要がある。同スタンダードの開発を統括するグローバル・サステナビリティ基準審議会(GSSB)では、日本の金融機関そして金融機関の開示に関心を持つステークホルダーからも草案に対する意見を幅広く募るため、5月12日に開催するウェビナーで、公開草案の解説に加え、コメントの提出プロセスを説明、参加者との質疑応答を行うとしている。

 

 日本向けのウェビナーは、 2025年5月12日(月) 16:00-17:00(日本語: 一部英語を逐次翻訳)スピーカー:▼ゲルカ・ブイトラーゴ GRI基準開発部セクター課長 ▼待場 智雄 グローバル・サステナビリティ基準審議会(GSSB)理事、ゼロボード総研所長▼GRI基準開発部メンバーによる。

 

参加登録は: www.zeroboard.jp/event/250512 (5月12日12:00まで受け付け)

 

GRI金融機関向けサステナビリティ開示基準草案(英語のみ):

https://www.globalreporting.org/news/news-center/financial-services-have-key-enabling-role-in-addressing-global-sustainability-challenges/

https://globalreportinginitiative.medium.com/tackling-global-risks-how-the-financial-sector-can-lead-with-impact-d106e9f9129c

                                                                                                                 (待場智雄)