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世界銀行(IBRD)。初のパリ協定6条クレジット(ITMOs)付の「成果連動債券(Outcome Bond)」2億㌦発行。アフリカ・ガーナでのクリーンクッキング事業の普及に充当(RIEF)

2025-12-19 01:02:38

Cookstoveキャプチャ

写真は、アフリカで普及するクックストーブ=世銀のサイトから引用)

 

  世界銀行(IBRD)は、パリ協定第6条に基づくカーボンクレジットに連動する初の「成果連動債(Outcome Bond)」を発行した。成果連動債は、世銀の一般的なサステナブルな開発活動を支援するだけでなく、投資家に対して、特定の開発プロジェクトや成果を支援する機会を提供し、さらに資金使途先の活動が成功した場合、投資家は追加的な報酬を得る。今回の場合、発行額2億㌦(約310億円)で、資金はアフリカ・ガーナでのクリーンクッキング事業に投じられる。追加報酬は、同事業から生じる国際的に移転可能なクレジット(パリ協定6条のITOMOs)をスイスの財団に売却する売却益が配分されるとしている。

 

 今回の成果連動債の資金使途先事業は、ガーナにおけるクリーン調理用ストーブプロジェクト。クーポンの一部が同事業からの排出権販売実績に連動する仕組みだ。同プロジェクトの運営は東アフリカを拠点とするUpEnergy社が設計・実施する。ガーナにおいて100万人以上がクリーン調理を利用可能とするため、40万台以上のクリーン調理用コンロ(クックストーブ)の普及に充当する。

 

 クックストーブの普及によって、従来の森林を伐採した焚き木を調理用に使うケースが減少し、その結果、森林伐採が減って、森林の吸収源効果が高まるほか、焚火の減少による家庭内大気汚染が削減することで、住民の健康状態の改善、改良型調理用ストーブの製造・流通および電気調理用ストーブの流通を通じた地域雇用創出に貢献する等の複数の「成果」が期待できる。

 

 債券の仕組みでは、AAA格付けの世銀が元本返済を保証し、約1.1%のクーポンを提供する。同クーポンには固定金利部分と、コンロ使用により発生するカーボンクレジットの販売に連動する変動金利部分が含まれる。またプロジェクト支援のために、約3050万㌦の民間資本も導入される。プロジェクトによって森林伐採等の減少による森林の吸収源効果が向上し、ITMOsクレジットの確保が可能となる。

 

 スキームの設計や、投資家の確保等には、ブルーベイ、ニューヴィン、ラスボーンズ、ベリブ・ペンション、スカンディア、マッケンジー・インベストメンツなどの金融機関やコンサル等のほか、保険会社のリーガル・アンド・ジェネラルを含む11の投資家が参加した。

 

 世銀グループの最高財務責任者(CFO)のアンシュラ・カント(Anshula Kant)氏は「この取引は、投資家が金融リターンと具体的な開発成果を両立させる方法を示している。投資家の強い関心は、成果連動型債券への需要の高まりと、この種の金融構造を用いて、緊急度の高い開発課題に取り組む可能性を反映している」と、債券発行の手応えを語っている。

 

 同債券発行のリードブックランナーは、英スタンダードチャータード銀行が単独で務めた。同行グローバルバンキング部門グローバルヘッドのヘンリック・ラーバー(Henrik Raber)氏は「世銀およびUpEnergy社と提携し、初のクリーン調理成果連動債を発行できたことを誇りに思う。同債券は、当社のグローバルネットワークの力を示すもので、資本市場、ストラクチャリング、カーボン・コモディティ市場の専門知識を駆使し、ガーナにおいて健康・社会・環境成果の実現を通じて長期的な価値を提供する」と成果を強調している。

 

 ITMOsクレジットの購入契約を結んだのは、スイスのKliK財団。スイスとガーナは日本の二国間クレジット(JCM)と同様の二国間協定に基づくクレジット開発を進めている。Klik財団はスイスの自動車燃料輸入業者の脱炭素化を支援のためにクレジットを活用している。今回の債券によるクレジット売却収入は、債券の固定最低利率に加えて設定される変動利子分に組み込まれる。したがって、債券のキャッシュフローをITMOクレジットでまかなわれる初の資金調達でもある。

 

 世界銀行財務局の投資家関係・サステナブルファイナンス責任者ハイケ・ライヒルト(Heike Reichelt)氏は「今回の債券への投資家リストが拡大している点は、喜ばしい限りだ。投資家が成果連動債に投資する理由も、特定のプロジェクトや影響を評価して直接結びつく形で投資判断をしている点も望ましい。同プロジェクトは、健康や環境面の恩恵に加え、ジェンダー・コミュニティ・雇用など地域社会に多大な社会的利益をもたらす」と「成果」の手応えを強調している。

 

 また同行の市場ソリューションとストラクチャードファイナンス部門のグローバル責任者であるマイケル・ベネット(Michael Bennett)氏も「(ITMOsを活用した資金調達について)現在、他の多国間開発銀行とも協議中であり、発行体として特別目的事業体(SPV)が関与する案件を含む数件の取引が実現する可能性がある。現在進行中の案件は多数あり、その多くは投資家向けパフォーマンス連動として炭素クレジットの現金化に関連している」と、クレジット付き成果連動債の拡大の可能性を指摘している。

 

 世銀の成果連動債には、このほか、アフリカのサイの保全運動の資金を調達するサイボンド(リノ・ボンド)や、インドネシアのプロジェクトを支援する「サンゴ礁ボンド」なども知られている。ただ、ベネット氏は「これらの成果連動債の開発には、時間がかかり、必ずしも、最も容易な手法とはいえない」としている。

                           (藤井良広)

https://www.worldbank.org/en/news/press-release/2025/12/05/world-bank-s-new-outcome-bond-supports-clean-cooking-initiative-in-ghana

https://www.worldbank.org/en/news/feature/2025/12/05/cooking-up-change-how-financial-innovation-can-help-transform-lives