全国の国民452人が、日本政府は気候変動対策に「消極的」として、平穏生活権(気候享受権)を侵害されたとする損害賠償訴訟を提起。政府を相手とした気候訴訟はわが国では初めて(RIEF)
2025-12-19 12:54:54
「日本政府は気候変動対策に消極的だ」として、全国各地の国民452人が原告になって、18日、平穏生活権(気候享受権)の侵害による損害賠償を一人当たり1000円を請求する、気候変動国家賠償請求訴訟を東京地裁に提訴した。気候変動を巡る訴訟は、昨年8月に全国の若者16人が火力発電を手がける企業に排出削減を求める訴訟を名古屋地裁に提訴しており、それに次ぐ。政府の気候政策の不備を問う訴訟は初めて。原告らで構成する「気候正義訴訟」事務局によると、2026年2月を目途に第二次提訴を行うとしている。
訴状によると、日本も批准するパリ協定では、世界の平均気温上昇を産業革命前比で、1.5℃の上昇に抑えるよう求めている。だが、日本政府が今年2月18日閣議決定した温対計画及びNDCで定められた温室効果ガス(GHG)排出削減目標は、「1.5℃目標」と整合していないと指摘。1.5℃目標に整合しない計画の策定、及びGHG排出削減の中長期目標を1.5℃目標に整合する形で法律に定めていないことは立法不作為で違法であり、国民の生活が脅かされているとして、原告らに現に生じている損害の一部として一人当たり1000円の損害賠償を請求する、としている。
気候変動に対する政府の責任については、国際司法裁判所(ICJ)が今年7月に「各国政府は気候変動枠組み条約(FCCC)や国際人権法等に基づき気候変動対策を実施する義務を負っており、その義務を実施しなかったり、先送りなどの行動をとると、国際法上の不法行為を構成する」との勧告的意見を出している。同意見は国連の要請によるもので、その要請は2023年3月29日の国連総会での決議に基づき、同決議は日本政府も賛同している。
ICJの意見は、各国政府がFCCCや国際人権法等に基づき気候変動対策を実施の義務を実施しなかったり、先送りなどの行動をとると国際法違反行為となり、因果関係の立証を条件に、被害国への賠償の必要性も示している。今回、わが国で提起された気候訴訟はこうしたICJの勧告と整合する。https://rief-jp.org/blog/160861?ctid=33
日本政府の現在の気候対策は、2050年ネットゼロを目標に掲げるものの、同目標を達成するための政策の成果検証が制度化されておらず、政策支援とする高排出産業・企業向けの補助金等の拠出も、排出削減効果が十分でない、もしくは現行の化石燃料主導の製造体制を長引かせるような気候対策とは「逆効果」となる政策も混在しているとみられている。
すでに世界各国では、政府を相手取った気候訴訟が相次いでいる。オランダでは2019年に最高裁で、国際的な水準のGHG削減は国の義務だとして、政府に削減目標の引き上げを命じる判決が出たほか、2021年のドイツ憲法裁判所の判決、スイスの高齢女性団体が欧州人権裁判所に提訴した訴訟の2024年の判決などで、生命の安全や生活の質を保護するための政府の現在の対策が不十分だとの指摘が出ている。
韓国の憲法裁判所も昨年8月、同国政府が設定している2030年に向けた「GHGの削減に関する法律」が2031年以降の対策を定めておらず、国民の基本的権利が守られていないとして、一部の条文が憲法違反だという判断を示している。https://rief-jp.org/ct4/148362?ctid=
これらの判決の背景にあるのは、気候変動は生命や身体の安全などを脅かす人権の問題だとする捉え方の高まりだ。22年には国連総会で「クリーンで健康的かつ持続可能な環境へのアクセスは普遍的な人権である」とする決議が採択され、同決議にも日本政府は賛成している。
今回の提訴でも、気候変動の影響による気温上昇により、国内での熱中症の死亡者数は増加を続け、2024年には、初めて死亡者数が2000人を超え、過去最多の2160人となったほか、1995年から現在までの約30年で、熱中症による死亡者数は約6倍に増加している点をあげている。
また、ゲリラ豪雨の増加による土砂災害の増加や、農林水産業における品質、収量の低下、物価の上昇など、気候変動はすでに市民の生活に多大な影響を与えている。 子どもたちも、気温上昇によって夏季は屋外・屋内での活動を著しく制限され、過去には子どもたちが当たり前に行っていた遊びや運動ができなくなり、子どもたちが成長するための様々な機会が奪われている等を指摘している。
今回の訴訟では、現在の日本政府が今年2月18日閣議決定した温対計画及びNDCで定められたGHG排出削減目標がパリ協定の「1.5℃目標」に整合しておらず、同目標に整合しない計画が定められたこと、及びGHG排出削減の中長期目標を「1.5℃目標」に整合する形で法律に定めていないことは「立法不作為」であり違法と指摘。こうした政府の不作為行為によって、われわれ(国民)の生活が脅かされているとしている。
原告となった452人は、北海道、東京、名古屋、沖縄など全国各地に居住する国民。訴訟を担当する「気候正義訴訟」事務局は、引き続き原告を募集しており、来年2月をメドに第二次提訴を行うとしている。今回の訴訟と、来年の第二次訴訟は、将来的に併合し、ひとつの裁判として進める予定としている。
(藤井良広)

































Research Institute for Environmental Finance