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仏トタル・エナジー主導の「モザンビークLNG」から、英蘭の輸出信用機関が撤退したことを受け、内外の環境団体が同事業に関与する日米欧等の官民30機関に「撤退」求める共同書簡(RIE)

2025-12-21 00:57:35

MOzanbiqueキャプチャ

写真は、トタルのLNG計画で土地を奪われた住民が抗議する姿。バナーには「この土地はモザンビークのもので、フランスのものではない」と書いている=BankTrackのサイトから引用)

 

  英国輸出信用保証局(UKEF)とオランダの輸出信用機関のアトラディウス信用保険会社(ADSB)は今月初めに、仏トタル・エナジーズがアフリカのモザンビークで進めているLNG開発事業を巡り、周辺地域で大規模な環境汚染や人権侵害等が発生、さらなる事態が懸念されるとして、同事業への参加からの撤退を発表した。これを受け、内外の環境団体は、同事業に依然、関与を続けている日本の国際協力銀行(JBIC)、日本貿易保険(NEXI)、3メガバンク、日本生命等の大手金融機関、米国輸出入銀行等の合計約30機関に対して、「残るすべての資⾦提供者が⾃⾝の関与を再評価し、事業から撤退する責任ある判断を下すべき時だ」との共同書簡を送付した。

 

 共同書簡を送付したのは、日本のFoEJapanのほか、ブラジルのJustiça Ambiental!、国際環境金融NGOのオランダのバンクトラック、ドイツのUrgewald、FoEのフランス、同欧州などの11団体。

 

 トタルが進める「モザンビークLNG」事業は、同国北部のカーボデルガード州で2010年にガス田が発見され、開発されている事業計画の一つ。トタル主導の下、米英を含む複数の国の輸出信用機関、銀行団が開発事業に融資してきた。

 

Total2キャプチャ

 

 しかし、LNG開発に伴う沿岸部の海洋浚渫事業によって同地の自然環境の破壊が指摘されるほか、事業に反対する現地住民に対して、同国軍による大規模な虐殺行為等も明るみに出ている。UKEFとADSBはこうした問題は2020年以降に増大しているとの懸念から、同事業に国の信用保証や融資保険を付与することは、自国の納税者の利益に反するとして撤退を決めた。https://rief-jp.org/ct7/162789?ctid=

 

 NGOらの共同書簡によると、ADSBの撤退判断の元になったオランダ政府の委託調査の結果、モザンビーク国防・治安部隊(FDS)が、トタルのLNG事業の建設地であるアフンギ周辺地域で、多数の⺠間⼈を、恣意的に逮捕・拘束したほか、住民への恐喝、暴⼒に関する数多くの証⾔が得られ、多くの兵士が住民への性的暴⼒、⾝体的暴⾏、処刑・殺害等に関与していたことが裏付けられたとしている。

 

 英政府のビジネス貿易相のピーター・カイル(Peter Kyle)氏はUKEFの撤退についての議会報告で、「英政府の見解として、同事業によるリスクは2020年以降に増大していると判断される。この見解は、プロジェクトの包括的評価と英国納税者の利益に基づくものであり、現時点でのプロジェクト参加終了が納税者の利益に最も資すると考えられる」と説明している。

 

 書簡は複数の市民社会団体が、事業に関わる約30の公的金融機関および民間金融機関に送付し、本事業によって引き起こされている深刻な環境・人権侵害、悪化する治安、モザンビークにもたらされる経済的不安定性、また事業に関与する機関にとって増大する法的リスク、未解決の移転に関する苦情、そして一層明白になりつつある環境リスクの重大性を指摘する内容となっている。

 

 特に、英蘭両輸出信用保証機関の撤退について、「改めて⾏われたリスク評価および新たな証拠に基づくものであり、市⺠社会が⻑年にわたり提起してきた深刻かつ重⼤な懸念を浮き彫りにするもの」と指摘。そのうえで、「こうした状況の変化を踏まえ、われわれは、残るすべての資⾦提供者が⾃⾝の関与を再評価し、事業から撤退するという責任ある判断を下すべき時が来たと考える」として、日本勢を含む他の金融機関に事業からの撤退を呼び掛けている。

 

 同事業には日本のJBICとNEXIの公的機関のほか、三菱UFJ銀⾏、みずほ銀行、三井住友銀⾏、三井住友信託銀⾏、SBI新⽣銀⾏、⽇本⽣命保険の6民間金融機関が参加し、官民連携体制をとっている。3メガバンク等の大手銀行が大規模LNG開発事業に資金提供する事例は各地で増えているが、大手生保が参加しているのは珍しい。https://rief-jp.org/blog/150518?ctid=

 

 事業主体のトタルエナジーに対しては、フランス国内で、刑事告発等の法的摘発が起きている。書簡によると、2021年7⽉から9⽉にかけて、トタルのLNG事業計画施設において⺠間⼈を拘束、拷問、殺害したとされるFDSの合同任務部隊(JTF)に対し、トタルが直接的な資⾦提供および物的⽀援を⾏っていたとして、仏国家反テロ検察局(PNAT)に対し、戦争犯罪、拷問、強制失踪に加担したとする刑事告発が提出されているという。

 

 また今年3⽉には、仏検察当局はトタルに対して、業務上過失致死および危険にさらされている者を救助しなかった罪について捜査を開始したとされる。これは2021年3⽉および4⽉にLNG施設の近くのパルマ沿岸部で、イスラム過激派がトタルを標的に襲撃事件を引き起こした際、同社が下請け業者らの安全を確保しなかったとする業務上の責任を問うものだ。

 

 これらの事件をめぐり、刑事・検察両当局への摘発が続く中で、書簡は「このような状況下で事業への⽀援を継続するいかなる資⾦提供者も、刑事捜査の対象となっているプロジェクトと、政治的、評判上、あるいは法的に結び付けられるリスクが⾼まっていることを考慮しなければならない」として、同事業への金融支援を直ちに撤回するよう求めている。

 

 共同書簡を公表した各NGOのうち、FoEフランスのコーディネーターのJuliette Renaud氏は「モザンビークLNG事業に関連する人権侵害を指摘する報告書や調査結果が次々と明らかになっている。被害者、および影響を受けたコミュニティは、親会社の本拠地があるフランスにおいて、司法へのアクセスと救済を受ける権利を保障されねばならない。トタルはすでにフランスの裁判所で2件の刑事告発に直面している。金融機関も、この破滅的なガス事業から撤退しなければ、法的リスクにより一層さらされることを今こそ認識すべきだ」と指摘している。

 

 Reclaim FinanceのAntoine Bouhey氏は「オランダ政府が公表した報告書は、深刻な人権侵害を記しており、銀行がそれを見て見ぬふりをすることは許されない。フランスのクレディ・アグリコルおよびソシエテ・ジェネラルは、この現実に目を覚まし、地域コミュニティと地球規模の気候の利益のために、撤退すべき時だ」と呼び掛けている。

 

 依然、同事業に参加している全金融機関は次の通り。

<公的⾦融機関>⽶国輸出⼊銀⾏、国際協⼒銀⾏、タイ輸出⼊銀⾏、イタリア外国貿易保険、⽇本貿易保険、南アフリカ輸出信⽤保険公社、イタリア預託貸付公庫、アフリカ開発銀⾏、アフリカ輸出⼊銀⾏、南部アフリカ開発銀⾏、南アフリカ産業開発公社、韓国開発銀⾏、韓国輸出⼊銀⾏

<⺠間⾦融機関>ソシエテ・ジェネラル、クレディ・アグリコル、みずほ銀⾏、JPモルガン、スタンダードチャータード銀⾏、三菱UFJ銀⾏、三井住友銀⾏、三井住友信託銀⾏、SBI新⽣銀⾏、⽇本⽣命保険、ABSA銀⾏、ネッドバンク、ランドマーチャント銀⾏、スタンダード銀⾏、中国⼯商銀⾏。

                          (藤井良広)

https://foejapan.org/issue/20251218/27316/

https://questions-statements.parliament.uk/written-statements/detail/2025-12-01/hcws1111?utm_source=chatgpt.com

https://foejapan.org/wpcms/wp-content/uploads/2025/12/20251218_Letter_JP.pdf