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インドネシア・西ジャワ州地方裁判所、日本の官民連携石炭火力拡張事業の「環境許認可」取り消し。JBICは司法判断待たず融資決定。環境NGOらは「JBICは自らのガイドライン違反」と抗議声明(RIEF)

2017-04-21 14:49:18

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 インドネシアの西ジャワ州バンドゥン地方裁判所は、日本の官民が推進している同州のチレボン石炭火力発電事業・拡張計画について、地域住民が求めていた環境許認可の取り消しを認める判断を示した。この結果同事業体側は控訴するか、司法判断を満たす環境対策の見直しに踏み切るか、の判断を迫られることになる。

 (写真は、バンドゥン地裁前で判決を待つ、原告の地域住民たち)

 

 司法判断を受けて、日本のFoEJapanなど3つの環境団体は、現地裁判所の判断が出る一日前に、国際協力銀行(JBIC)が同事業の拡張計画の資金を提供する融資契約を結んだことに対して、「現地法に照らして違法な事業」と指摘した上で、JBICがガイドラインで「相手国及び当該地方の政府等が定めた環境に関する法令の遵守」や「相手国政府等の環境許認可証明書の提出」を融資要件としている点を踏まえて、融資決定を早急に見直し、撤回するよう要請を行った。

 

 チレボン発電所計画は、日本の丸紅が主導している。2013年に稼動した1号機(発電出力660MW)に続いて、一回り規模の大きい2号機(100MW)を建設する計画。発電所はCO2排出量が相対的に少ないとされる超々臨界圧の石炭火力。事業主体は丸紅が35%の筆頭株主で現地企業や日本の中部電力などと合弁で設立したチレボン・エネジー・プラサラナ(CEPR)が担う。http://www.foejapan.org/aid/jbic02/cirebon/background.html

 

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  拡張事業に融資を予定しているのは、日本のみずほフィナンシャルグループ、三菱UFJフィナンシャル・グループ、三井住友フィナンシャグループの3メガバンクと,フランスのクレディ・アグリコル、オランダのINGの5機関。

 

  同事業に対しては、既存の火力発電所による汚染物質排出で、周辺住民の間で健康被害が顕在化しており、発電所の拡張は事態を悪化させる恐れが強い、として地元住民が反対している。また大規模設備を臨海部に建設する影響で、小規模漁業や製塩業、農業等に携わる住民の生計手段が喪失するリスクも指摘されている。このため住民の代表らは、先月来日し、事業への融資を予定しているJBICなどに、融資を止めるよう要請書を提出していた。http://rief-jp.org/ct6/68945?ctid=75

 

 しかし、バンドゥン裁判所が19日に、環境許認可取り消しの判断を出す1日前の18日に、JBICは拡張計画に資金を貸し付ける契約を結んでいた。このためNGOらは「JBIC、同訴訟の進捗について認識していることを国会答弁で確認していたのに、判決を待たずに融資決定した判断は、地域住民の権利と現地国の司法判断を著しく侵害した」と強く批判している。

 

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 特にNGOらは、今回の融資決定が、JBICが自ら定めたガイドラインの内容に明確に違反していることを重視している。「企業の利益を優先して地域住民の権利を後回しにした。また、現地国の司法判断と自身のガイドラインを明らかに無視したJBICの拙速な融資決定」と断じている。


  今回の行政訴訟は、昨年12月に住民6名が原告となって提起した。発電所の拡張計画においてチレボン県空間計画が未修正のままであったり、環境影響評価(EIA)の策定過程でコミュニティーの適切な参加が確保されていないなど、複数の環境法違反があると指摘していた。しかし、西ジャワ州政府によって、環境許認可(番号660/10/19.1.02.0/BPMPT/2016。2016年5月11日発行)が不当に発行されたとし、同許認可の取消を行政裁判所に求めていた。

 

 インドネシアを中心として、東南アジアでは日本政府が主導する形で、官民連携の石炭火力発電所建設計画が各地で相次いでいる。一方で、パリ協定を受けて、途上国においても温暖化ガス削減の機運が高まっており、また欧米では石炭火力発電の停止を求めるDivestment運動が広がっている。日本の官民連携のインフラ輸出戦略は、こうした内外での石炭火力に対する評価の変化の中で、「異質感」が際立っている。

 

http://www.foejapan.org/aid/jbic02/cirebon/170419.html