パリ協定をまとめた国連気候変動枠条約(UNFCCC)前事務局長のクリスティーナ・フィゲレス氏は、国連支援の責任投資原則(PRI)の署名機関に対して、保有資産の1%を2020年までに再生可能エネルギーやクリーンエネルギー投資に振り向けることを公約するよう要請した。現在のPRI署名機関の総資産額は70兆㌦なので、要請額は7000億㌦(約79兆円)になる。署名機関が署名に見合う行動をとれるかどうか。
フィゲレス氏は、昨年7月にUNFCCCを退任後、パリ協定の達成を推進するための非営利団体、Mission 2020 initiativeの議長を務めている。このほどPRIがベルリンで開いた年次総会で演説、PRIの署名機関に呼び掛けた。
同氏が展開しているMission 2020 initiativeでは、2020年をパリ協定の目標を達成できるかどうかのターニングポイントの年と位置付けている。途上国の経済発展に合わせて省エネ、再エネ投資を組み込むことをしなければ、その後のグローバルなCO2排出量の制御は現状以上に困難になり得るとの判断による。
パリ協定が目標とする産業革命前からの世界の気温上昇を2℃以内に抑制するには、温室効果ガスの排出量(CO2換算)を1800Gtに維持しなければならない。このうち1200Gtをすでに排出しており、残りは600Gtしかない。しかも今年だけで41Gtを排出しており、2020年までには排出量減少を明確にし、以後、10年単位で排出量を半減させていかないと、手遅れになってしまうという。
そうしたCO2排出量削減のための再エネ、クリーンエネ関連事業をグローバルベースで促進するため、公的資金2000億㌦、民間資金8000億㌦の合計1兆㌦の資金を毎年、投じることが必要だと訴えた。1兆㌦は膨大な資金だが、PRI署名機関の保有資産にとっては1%強でしかない。しかも、それらの投資は長期安定的な投資リターンを生み出す魅力もある。PRI署名機関が動き出すと、年間1兆㌦投資の実現は現実味を帯びてくる。
フィゲレス氏は、署名機関に対して、来年9月に米国サンフランシスコで開く次回のPRI年次総会までに、1%投資のための準備をし、準備ができた機関から順次、宣言するよう求めた。「われわれは、漸進的に進めるには、もはや時間を十分に持ち合わせていない」と危機感を露わにして、署名機関の決断を促した。