HOME8.温暖化・気候変動 |世界477の投資家・金融機関、G20首脳会議に向け、パリ協定の国別削減公約(NDC)強化前倒し実施要請。石炭火力廃止やカーボン価格制導入なども要請。日本勢も10機関署名(RIEF) |

世界477の投資家・金融機関、G20首脳会議に向け、パリ協定の国別削減公約(NDC)強化前倒し実施要請。石炭火力廃止やカーボン価格制導入なども要請。日本勢も10機関署名(RIEF)

2019-06-26 22:57:27

G201キャプチャ

 

 大阪で開くG20首脳会議に向け、世界の477の投資機関、金融機関が、パリ協定の目標達成のために、各国の国別削減公約(NDC)の強化を前倒し実施するほか、石炭火力発電廃止の目標の設定、カーボン価格制度の導入、TCFD勧告に沿った規制導入などを求める共同声明を公表した。賛同機関の資産総額は34兆㌦(約3700兆円)で、日本の金融機関も10機関が名乗りをあげた。

 

 署名機関は、G20に集まる世界の首脳に対して、IPCC(国連の気候変動に関する政府間パネル)が示した「1.5℃目標」の達成を目指した緊急行動を確約するよう要請した。首脳に向けた「オープンレター」では、現行のパリ協定に伴う各国のNDCを実行しても、世界の気温上昇は、産業革命前から2.9~3.4℃に上昇してしまう、と危機感を示した。

 

 そのうえで、パリ協定が掲げた「1.5~2.0℃」目標との間の「ギャップ」を早急に埋めることを求めた。2015年に合意したパリ協定では、5年ごとのNDCの見直しを決めており、投資家たちは2020年の期限前に、1.5℃目標と整合するNDC目標の見直しを求めた。

 

G202キャプチャ

 

 NDC見直しに際しては、3つの政策を求めた。まず、各国が国内で実施している化石燃料政策を抜本的に転換し、化石燃料への補助金と石炭火力発電所の廃止を明確にする。第二に、2020年までに適切なカーボン価格付け政策を導入する。第三に、気候変動関連の財務情報開示を明確にすることを求めたTCFD勧告の実行、である。

 

 投資家たちは、こうした強くかつ野心的なNDCに見直す国は、その低炭素で気候変動に強靭な移行期を支援するうえで必要とされる数兆㌦単位の資本を惹きつけるシグナルを市場に送ることになる、と指摘している。

 

 低炭素経済社会へ、さらに気候変動に強靭な社会への移行の推進は、適正な資本配分を通じて、労働者やコミュニティにもプラスに働くと強調。投資家は政府とのパートナーシップに基づき、保有資産の運用、資本の配分、移行期をスムーズに進めるための公的政策への発言等を通じ、一人も取り残さず、持続可能な発展を支援する、と宣言している。

 

 「Mission 2020」議長で前国連気候変動枠組み条約(UNFCCC)事務局長を務めたクリスティーナ・フィゲレス氏は「気候変動はすべての国のすべてのセクターに影響を与える。世界が直面する最大で最も緊急性を要するチャレンジだ。気温上昇を1.5℃に抑えることは、われわれが生き残るために必要で可能なこと。投資家はその実現のため重要な役割を果たす」と強調した。

 

 日本の投資家を代表する形で、三井住友トラスト・アセットマネジメントのシニア・スチュワードシップ・オフィサー(SSO)の川添誠司氏は「世界がカーボンネットゼロ経済に移行するために必要な効果的な投資資金を、われわれ投資家が供給できるようにするため、各国政府は世界の気温上昇を1.5℃に抑制する緊急行動をとるよう求める」と述べた。

 

 署名した日本の金融機関は、秋田銀行、三菱UFJ国際投信、三菱UFJ信託銀行、日興アセットマネジメント、ニッセイアセットマネジメント、野村アセットマネジメント、りそな銀行、上智学院、三井住友トラスト・アセットマネジメント、T&Dアセットマネジメントの各機関。

 

https://www.aigcc.net/wp-content/uploads/2019/06/Press-Release_-G20-Global-Investor-Statement-on-Climate-Change_26.06.19.pdf

https://www.aigcc.net/wp-content/uploads/2019/06/GLOBAL-INVESTOR-STATEMENT-TO-GOVERNMENTS-ON-CLIMATE-CHANGE.pdf

https://igcc.org.au/wp-content/uploads/2019/06/Global-Statement-Investor-letter_June2019.pdf