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住友商事に対し、「パリ協定に沿った事業計画の策定・開示」を求める豪環境NGOの株主提案、株主総会で否決される。バングラデシュの石炭火力事業継続へ(RIEF)

2021-06-18 17:31:20

marketForecesキャプチャ

 

 住友商事は18日開いた株主総会で、オーストラリアの環境NGOによる「パリ協定に沿った事業計画の策定・開示」のための定款変更を求める株主提案を否決した。提案に対して住商側は、5月に新たな気候変動対応指針を発表。株主提案に反対を表明していた。企業に気候変動対策の明言化を求める株主提案は昨年のみずほフィナンシャルグループに対する提案(否決)に次ぐ。

 

 (写真は、株主総会の会場近くで、株主に呼び掛けるNGOの面々)

 

 株主提案をしたのは、オーストラリアの環境NGO、マーケットフォース(Market Forces)。住商がTCFDに賛同していることを理由に、「石炭、石油、ガス事業関連資産の保有量、事業規模をパリ協定の目標に沿ったものにするための指標と、短期、中期、長期の目標を含む事業戦略を記載した計画を決定し、年次報告書で開示する」との条項を、定款に規定することを求めていた。https://rief-jp.org/ct7/112709

 

 これを受け、住商が5月にまとめた「気候変動への対応指針」では、新規の石炭火力発電事業等を行わないほか、一般炭鉱山開発でも「2030年に生産量ゼロを目指す」と事業縮小をうたい、石炭火力については、例外はバングラデシュでの政府間事業のマタバリ3・4号機だけに絞るとした。http://rief-jp.org/ct4/113936

 しかし、マーケットフォースは、「マタバリ」を含めて停止を求め対立していた。株主総会では、兵頭誠之社長が「多様なリスクを適切に管理し、提案に含まれる計画の策定に既に取り組んでいる」と強調し、定款変更の必要なしと強調した。またマタバリの事業継続が、同社の「2050年カーボンニュートラル宣言」と整合するのかとの質問に対しては、「大前提はパリ協定との整合性で、それが確認できなければ参画しない」(秋元勉専務執行役員)とした。

 

 現時点では、議案への最終的な投票数は開示されていないが、定款の変更には、議決権の3分の2以上の賛成が必要なこともあり、提案は否決が確定した。今回の株主提案をめぐっては、議決権行使助言大手2社の見解が分かれた。米インスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズ(ISS)は「気候変動開示の改善に向けた市場の監視を強められる」等として賛成を推奨。一方、米グラスルイスは「提案内容が必ずしも株主の利益にならない」として反対を推奨した。

 

 昨年のみずほフィナンシャルグループへの株主提案では両社とも、株主を支持した。海外機関投資家の中にも、賛成株主が一定数存在した。その一つが、英資産運用大手リーガル・アンド・ジェネラル・インベストメント・マネジメント(LGIM)。「(住商の新方針には)一定の進展が見られるが、懸念を払拭できるレベルではない」と指摘している。

 

 マーケットフォースはオーストラリアのNGOで、これまでも豪州を中心に30件以上の株主提案を実施している。今年は日本国内では、住商以外にも、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)にも他のNGOと共同で、気候変動政策の明確化を求める株主提案を出している。

https://www.sumitomocorp.com/-/media/Files/hq/ir/stock/doc/ir/2020/153_j_shoshututi.pdf?la=ja