サステナブル開発、最も貢献しているのはNGO等の非営利団体。政府は最下位。民間セクターも低順位。NGOの中では世界自然保護基金（WWF）の評価がトップ。GlobeScan調査（RIEF）
2021-08-17 00:09:02
サステナビリティの言葉が世界中を巡っているが、持続可能な開発を実質的に推進しているリーダーは誰か、という調査がまとまった。それによると、もっとも積極的にサステナビリティ課題を推進しているのは、市民等で作るNGOで、政府組織は10のステークホルダーのうち、最下位の評価しか得られなかった。NGOの中では、世界自然保護基金（WWF）がトップで、2位のグリーンピース以下を引き離した。政府の中では、スウェーデンとドイツが最も高い評価を得た。日本は上位15カ国のランクに入れなかった。
（上図は、NGOの中でもっとも貢献しているとみなされる団体のランク）
調査はサステナビリティ分野等の世論調査機関であるGlobeScan（本部カナダ・トロント）が毎年まとめており、2021年版が公表された。調査は世界のサステナビリティ関連の専門家等695人を対象にスコアリング方式で評価した。
サステナビリティ課題の緊急性の認識では、気候変動（93%）が最も高い評価を得た。2位の生物多様性の損失（90%）と合わせて、この2課題が90％以上の専門家から緊急課題と評価された。以下、水不足（86%）、貧困（84%）、水質汚染（84％）の順。多くの課題が、前年（2020年）調査より比率が上昇している。「エネルギーへのアクセス」は最大の8ポイントアップだった。
調査では、1992年にブラジル・リオデジャネイロで開いた地球サミット以来のサステナビリティ開発への取り組みに貢献してきた10のステークホルダーを、poorからexcellentの5段階で評価した。その結果、最も貢献してきたと評価されたのが非営利組織（NGO）で、Excellent評価は61%（poor7%）。以下、調査・アカデミック機関47%（11%）、市民主導の大規模社会運動47%（16%）と非営利組織が上位を占めた。SDGsの旗振りをしている国連はその次の4位で41%（21%）。
各国政府のexcellent評価は10のステークホルダー中、唯一、一ケタ台の7%。poorの評価がその8倍強の58%もあった。政府はSDGsを国民にアピールする一方で、事業や予算を伴う実質的な行動はほとんど伴っていないと見抜かれた形だ。民間セクターのexcellent評価は政府より3倍多い21%だったが、poor評価はその倍近い40%。積極的な取り組みは、一部の企業とどまり、多くの民間セクターの取り組みは十分ではないと評価された。
機関投資家は、政府に次ぐレベルの低さ。excellentが18%、poorが2.6倍以上多い48%だった。国連支援の責任投資原則（PRI）の署名団体は3000機関を超えているが、署名はするものの、十分な活動につながっているケースが少ないとの評価を受けている。
もっともサステナブル開発に貢献している、と評価されたNGOのうち、個別のNGO評価（最大3団体を選択）では、WWFが41%の評価を得てトップだった。2位のグリーンピース（17%）の倍以上の支持を得た。3位は世界資源研究所（WRI）の11%。
政府部門は全体的にレベルは低いが、その中でリーダ―的評価がもっとも高かった国は、スウェーデンとドイツ（ともに22％）。次いでデンマークの20%、ノルウェー、英国の16%と続く。上位15位にアジアの国は11位にブータン（7%）、13位にシンガポール（6%）の2カ国が入っている。日本は選外（論外かもしれない）。
日本ではSDGsバッジをつける官僚やビジネスマンが少なくない。だが、効果的なサステナブル開発を実践するには、リーダーとなる人を育成・派遣し、事業を興し、予算を投じる具体的な取り組みが必要だ。政府部門でも評価の高い国は、NGOや国連等の他のステークホルダーと連携して、途上国・新興国等での活動の効果を高める工夫をしていることが知られる。
Research Institute for Environmental Finance