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環境NGOのWWF英国、ブロックチェーン技術を使った「非代替性トークン(NFTs)」での絶滅危惧種保全の寄付活動に「電力消費増大につながる」との非難集中、48時間で停止(RIEF)

2022-02-15 23:56:26

WWF002キャプチャ

 

 環境NGOの世界自然保護基金(WWF)の英国団体(WWF・UK)は今月初め、ブロックチェーン上で画像・動画・音声その他のデジタルファイル等の代替不可能なデータ単位の「非代替性トークン(NFTs)」による募金活動を始めた。だが、NFTsの取引に膨大な電力を消費するため、地球環境保全に逆行するとの非難を受け、48時間以内で中止した。募金の対象は絶滅の危惧に瀕する世界の動物13種の保全資金集めだった。

 

 NFTsはブロックチェーン技術を使ってデジタル台帳に記録されるデータ単位の一種。ビットコイン等の暗号通貨とは異なり、相互に交換できない特定のデジタル資産や物理的な資産等を売買する。WWF・UKは、絶滅の危惧に瀕するゴリラ、サイ、ヒョウなどの動物と生息地をかたどったデジタル・アートのNFTトークンを作成、動物たちの保護資金のために販売する寄付活動に取り組んだ。

 

  WWF・UKは「環境に優しいブロックチェーン」商品として、若者を中心とした支持者にアピールすることを目指した。だが、NFTsを作成するためには、ブロックチェーン取引の検証に使われるアルゴリズムの演算プロセス等で大量の電力を消費することが知られる。

 

13種類のデジタルトークン
13種類のデジタルアートの「NFTトークン」

 

 最近は、再エネ電力を使用する場合も多い。だが、環境支持者らからは「再エネ電力の無駄遣いをあおる」等の指摘もあり、ツィッター上では何千もの批判が寄せられた。従来からの現金での寄付者からも、「環境団体が、環境に悪影響を与える寄付行為をするとは」と不満の声があがり、寄付のキャンセルの申し出もあったという。

 

 批判を受けたWWF・UKは、使用したNFTsは従来のブロックチェーン技術に比べ、電力消費量ははるかに少なく、一回の取引での電力量はCO2量換算でコップ一杯分くらいと説明。またデジタルトークンの購入者は、デジタル上での貢献だけではなく、WWFの各種イベントに参加できるなどのリアルな活動機会も得られる等を強調した。

 

 ただ、ビットコインの専門家によると、デジタルトークンを現金(英ポンド)に転換する際にはビットコインが必要となり、同コインのカーボンフットプリント総量は、中東のクウェートの排出量と同規模に達すると指摘。WWFの計算はこうしたビットコイン分の電力消費を含んでいないと批判した。

 

 実はWWFが寄付金集めのためにNFTsを活用したのは、英国が初めてでない。ドイツのWWFが昨年11月にNFTsによる動物の暗号アートを販売して自然保護資金集めを実施している。この時も多くの支持者から疑問が寄せられた。WWF・UKはドイツでの賛否を十分に消化しない形で「英国でも」と動いたのでは、との疑問もある。

 

 WWF・UKは募集開始後48時間程度で停止を発表した。ただ、短期間のうちにNFTsでの募金活動を停止したことに対しては、今度は、WWFの活動を支持していたデジタル通貨関連業界から別の批判の声が出ているという。ツィッターではNFTsの支持者から「環境派がイラついたのと同様に、今はNFTsの支持者が同様の思いに至っている」とのつぶやきも出た。デジタル派とキャッシュ派の相互違和感も背後にありそうだ。

 

 WWF・UKの2日間の募金で、174のNFTトークンが売られ、4万6600㌦分(約536万円)が集まった。販売された13種の「デジタル動物」の中ではもっと人気があったのはインドネシア・スマトラ島に生息するタパヌリ・オラウータン。2700㌦を集めた。

 https://www.wwf.org.uk/updates/nft-statement

https://www.climatechangenews.com/2022/02/02/wwf-uk-faces-backlash-plan-sell-nfts-fund-conservation-work/