HOME |内外55の環境NGO。6日に開くCOP27に向け、日本政府の「誤った気候対策」の修正を求める要請書。水素・アンモニアの火力発電混焼は化石燃料依存度をむしろ強める等(RIEF) |

内外55の環境NGO。6日に開くCOP27に向け、日本政府の「誤った気候対策」の修正を求める要請書。水素・アンモニアの火力発電混焼は化石燃料依存度をむしろ強める等(RIEF)

2022-11-03 21:46:47

INdonesiaスクリーンショット 2022-11-03 013039

 

  内外29カ国、55の環境NGOや住民団体は、6日からエジプトで開かれる国連気候変動枠組条約第27回締約国会議(COP27)に向けて、岸田文雄首相に対し、日本政府の誤った気候変動対策の推進を止め、化石燃料支援の停止をコミットするよう求める要望書を提出した。日本政府が「エネルギー分野の脱炭素化を口実」に進める水素・アンモニアの混焼は化石燃料への依存度を高める等として、政策の転換を求めた。

 

 (写真は、日本政府が推進するグリーン・トランスフォーメーション(GX)戦略を「ゴマカシ」と批判するインドネシアのNGOらの活動)

 

 要請書によると、現在、利用可能な水素とアンモニアのほとんどは化石燃料由来で、再生可能エネルギーを使って製造されたグリーン水素や同アンモニアはほとんどない。水素とアンモニアは、燃焼時にこそ温室効果ガス(GHG)を出さないが、製造や輸送時に大量のGHGを出し、最新鋭設備でもアンモニア1㌧生産当たり約1.6㌧のCO2を排出すると指摘。

 

 同様に、水素も天然ガス火力発電等の電力を使って製造するブルー水素が多く「脱炭素型」とは言い難いとしている。したがって、日本政府が水素とアンモニアの混焼を進めるグリーン・トランスフォーメーション(GX)を展開しているが、そのGHG排出削減効果はかなり限定的とした。特にブルー水素製造においては、従来のガス火力発電よりも多くのGHG排出につながるリスクを指摘している。

 

岸田首相に要請書を提出した環境NGOのメンバー
岸田首相に要請書を提出した環境NGOのメンバー

 

  しかし日本政府は、こうした水素・アンモニア混焼による既存火力発電の延命を国内だけでなく、アジアでも展開している。例えば、国際協力機構(JICA)は、インドネシアでの2060年までのカーボンニュートラル達成に向けたロードマップを策定。その中で、アンモニア、水素、LNG(CCS付き)を3つの主要燃料と位置づけている。インドネシアでは、同ロードマップを前提に、日本企業が相次いで事業化調査や実証事業を発表しており、現地のNGOや住民団体が危惧を表明している。

 

 JICAはバングラデシュでも政府開発援助(ODA)を使って、同国政府に対する「統合エネルギー・電力マスタープラン」の策定の技術支援として、水素及びアンモニア混焼による火力発電を大規模導入する計画を示している。NGOらは日本企業自体が現時点で20%混焼の実証実験を行っている段階であり、そのメドもついていないのに、「2030年頃に50%のアンモニア混焼の石炭火力発電を導入する、とするなど、非現実的な想定に基づいている」と批判している。

 

 日本政府はさらに、CO2回収・貯留(CCS)、原子力、バイオマス、液体天然ガス(LNG)を国内外で積極的に推進している。だが、水素、アンモニア、CCSは、GHG排出量を削減できないばかりか、経済的・技術的な不確実性がつきまとう。CCSはブルー水素・同アンモニアの利用の前提となるが、技術的課題等を克服できず、現実にはほとんど実用化されていないと指摘。特に、高コストやCO2回収の不完全さなどが各地で明らかになっている。

 

 要請書では、これらの燃料や技術をエネルギー移行に必要なものとして支援することは、「誤った対策の押し付けに他ならない」と断定している。

 

 FoE Japanの深草亜悠美氏は「日々気候変動の影響が深刻になっている。損失や被害が途上国を中心に広がっており、緩和や適応だけでなく、すでに生じている被害への対策資金も必要だ。日本政府の提案する支援策は、化石燃料に依存したものばかりで、温暖化する地球にさらに火を放っているようなものだ」と批判している。

 

  Asian Peoples Movement on Debt and Development(APMDD、債務と開発に関するアジアの民衆運動)のリディ・ナクピル氏は「気候危機がグローバル・サウスの人々やコミュニティを破壊しているにもかかわらず、化石燃料産業には依然として莫大な資金が流れている。日本政府が化石燃料に水素とアンモニアを混合することを提案しているのはその一例だ。私たちは日本政府に対し、再エネシステム、適応、損失と損害により資金を向けるよう求める。それこそが人々と地球のために必要だ」と訴えている。

 

 インドネシアの市民社会団体も、岸田首相宛に「『公正なエネルギー移行』の名の下に、インドネシアでの化石燃料の延命や環境・生活破壊はもう止めて」と題した要望書を、ジャカルタの日本大使館に提出し、「誤った対策の押し付け」を止めるよう求めるアクションを大使館前で行った。

https://foejapan.org/issue/20221101/10071/

https://foejapan.org/issue/20221101/9902/