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三井住友海上火災、CCS事業者向け環境汚染賠償責任保険を開発・販売へ。CCS漏出による健康被害や財物損害等の賠償責任の一部を補填(RIEF)

2022-10-28 22:35:51

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   三井住友海上火災保険は28日、 CCS事業の運営に伴う事故リスクをカバーする「CCS事業者向け環境汚染賠償責任保険」を11月から販売すると発表した。日本では石炭火力発電を2030年以降も稼働させ、排出されるCO2をCCSで回収する方針を経産省が打ち出しており、今後、国内でもCCSの実用化が進むとの期待から、CCSに関係する賠償責任保険を開発した。地下に注入・貯留したCO2が漏出して損害を与えるリスクを想定している。

 

 (写真は、北海道苫小牧市でのCCS実証実験サイト)

 

 CCSは火力発電等から排出されるCO2を回収し、地下帯水層に貯留する仕組み。国内では2012年以来、北海道苫小牧市で政府主導で実証実験が続けられている。2019年11月は、目標としていた累計30万㌧の注入を実現、現在は注入後の貯留が安定的に保たれているかどうかを確認するモニタリング段階と入っている。

 

 CCSは回収したCO2をパイプライン等で貯留場所に移送する途中、あるいは地下に注入する工程等でのCO2の漏出リスク、さらには注入後、貯留地点から漏出するリスク等が指摘されている。こうした事態が起きると、第三者の身体への健康影響、周辺の財物の損壊または海洋の場合は漁業権の侵害等が起きる懸念がある。そうした場合、CCS事業者には損害賠償責任が生じる。

 

 三井住友海上が開発した保険はこうしたケースでの事業者の賠償責任をカバーするものになる。同社は、国のエネルギー基本計画では30年時点でも発電量に占める火力発電の割合を19%とするとしているが、これらの火力についてはCO2排出削減としてバイオ燃料等の混焼やCCSの利用が不可欠になる。そこで、同事業を円滑に推進するための保険需要が高まると判断し、今回の保険を開発した。

 

 
 保険でカバーする事業者の費用は、地下に注入・貯留したCO2が漏出したことで生じる①第三者の身体の障害、財物の損壊または漁業権の侵害等に対して、CCS事業者が負担を求められる損害賠償責任費用②CO2漏出事故に事業者が対応するために設置する対策本部の費用や新聞等へのお詫び広告掲載費用等ー-としている。

 

 同社では、「カーボンニュートラル燃料の一つとして有力視されている水素が、安定的にクリーンエネルギーによる生成ができるまでの移行期では、日本のエネルギー構成上、CO2を発生させる化石燃料の活用が必要。水素エネルギーが普及するためにも、CCSは有力な技術」と位置付けている。

 

 CCSについてはエネルギー産業や経産省等は、化石燃料発電等を継続するうえでの必要手段とみなしているが、米シンクタンク、IEEFAが現在、世界で展開されているCCSの55%を占める主要な13の同事業を分析したところ、2件は中止、1件は稼働延期中。その他も多くが想定通りの稼働率を確保できず、順調に稼働しているのは2件に過ぎないことが報告されている。https://rief-jp.org/ct4/128501?ctid=72

 

 CCSの事故賠償責任保険と同時に、CCS事業者にとっては、CCSが想定通り稼働することを補償する「事業保証保険」も開発してもらたいところだろう。ただ、IEEFAの調査結果を踏まえると、「事業保証」は現時点では保険としてカバーするのは容易ではないことになる。

1028_2.pdf (ms-ins.com)