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第8回(2022年)サステナブルファイナンス大賞決定。大賞に社会の医療ニーズを踏まえた大型ソーシャルボンド発行の富士フイルムホールディングス。優秀賞4件、地域金融賞3件等、12件13社・団体(RIEF)

2022-12-22 14:00:53

SFwardキャプチャ

 

 一般社団法人環境金融研究機構(RIEF)が主催する「第8回サステナブルファイナンス大賞」の受賞企業が決まった。大賞には、国内民間企業で最大規模のソーシャルボンドを発行した富士フイルムホールディングスが選ばれた。同社はアンメットメディカルニーズ(いまだ有効な治療法がない疾患への医療需要)等への対応を目指した資金調達を図った点で、ソーシャルボンドの意義を踏まえた発行と評価された。同賞で民間企業が大賞を受けるのは2度目。その他、優秀賞、地域金融賞、ブルーボンド賞等、全部で12件13社・団体が受賞した。年明け1月18日に表彰式を開く。

 

 サステナブルファイナンス大賞は、同機構が2015年から実施している。その年の日本の環境金融・サステナブルファイナンス市場で活躍した金融機関、企業、関係機関等を、環境と金融の両分野の専門家が、定量評価と定性評価の両方に基づき選出する。

 

 2022年の大賞に選ばれた富士フイルムホールディングスは、医薬品、医療機器分野でも積極的な経営を展開していることで知られる。ソーシャルボンドで調達した資金使途先としては、アンメットメディカルニーズ対応のほか、バイオ医療品を開発・製造受託するバイオCDMO事業も含めている。

 

 ソーシャルボンドはグリーンボンドに比べて民間企業の発行は限られてきた。だが、同社の発行は、現代社会が直面している生活習慣病やがん等の、患者数が多く治療薬を必要とする疾患のほか、患者数が少ないが治療薬の必要性の高い希少疾患の難病の治療薬開発等、社会性の高い医薬品開発ニーズに対応するもので、ソーシャルボンドにふさわしい資金使途先といえる。

 

 優秀賞は4社を選んだ。新生銀行、大同生命保険、みずほ証券、丸井グループである。

 

 新生銀行は、自行内に独立した「サステナブルインパクト評価室」を設置し、自行のサステナブルファイナンス評価体制に基づく案件の評価・ファイナンスを展開している点が評価された。同行は昨年はサステナブル・レポ取引でサステナブル・イノベーション賞を受賞しており、連続受賞となる。

 

 大同生命は、欧州連合(EU)が導入したサステナブルファイナンス情報開示規則(SFDR)に基づく「9条ファンド(サステナブルな投資目的にフォーカスした投資商品)」に1億3500万㌦(約180億円)の投資を実行した。日本の機関投資家でSFDR9条適合のインパクト債券ファンドに投資したのは初めて。

 

 みずほ証券は国内市場でのグリーンボンド等のESG債の引き受け主幹事業務で、2019年以来、4年連続でシェア1位の座を維持。日本のESG債市場を牽引するリーダーシップを発揮している点を評価された。同社の優秀賞受賞は3年連続となる。

 

 丸井グループはマイクロファイナンス事業企業等と連携し、社会貢献と資産形成の両立を目指すソーシャルボンド発行等の「応援投資」を実践。会員向けには事業会社で国内初のデジタルのセキュリティトークン債も発行するなど、ESGの先端分野を開拓した。同社は2018年にも優秀賞を受賞している。

 

 今回、初めて設けたブルーボンド賞は、マルハニチロが受賞した。同社が富山県で開発する閉鎖循環式陸上養殖方式でのサーモン養殖事業のファイナンス手段として、国内初のブルーボンドの発行で資金調達を行ったことを評価した。

 

 サステナブル・イノベーション賞には、JPX総研と野村證券の2社による連携活動を選んだ。両社はブロックチェーン技術を活用した「JPXグリーン・デジタル・トラック・ボンド」の開発を進めている。同ボンドはデジタル技術の活用で環境データを明瞭化し、グリーンウォッシュの回避、ESGインパクトの可視化等で期待が高い。野村證券は過去に同賞のほか優秀賞も受賞している。

 

 地域金融賞には3社を選んだ。山陰合同銀行、豊橋商工信用組合、山口フィナンシャル・グループ。山陰合同銀行は、改正銀行法で認められた他業銀行業高度化等会社の第一号として、再生可能エネルギー子会社を立ち上げ、地域の都市と連携し、ゼロエミッション都市づくりに協力する活動を展開している点を評価した。

 

 豊橋商工信用組合は、地域の古民家維持・再生のための専用ローンを開発し、文化的価値のある古民家への他県等からの移住者を前提に、地元の工務店と連携して、地域おこしと移住に焦点を合わせた新たなESG市場の需要開発を目指している。

 

 山口FGは、地域金融機関として初めて、個人向け中心のグリーンボンドを発行した。個人のカーボンニュートラル意識に応えるとともに、同社の2030年カーボンニュートラルの達成にも資する取り組みとして評価した。

 

 国際賞には、フィリピン共和国を選んだ。同国は、日本で初となる円建てサステナビリティ国債(サムライ・サステナビリティボンド)を発行した。資金使途は、同国の自然環境管理等の環境分野と、零細・中小企業の雇用対策等の社会分野に充当する。日本の金融市場の国際化にも貢献した点を評価した。

 

 NGO/NPO賞には、環境NGOの350.org Japanを選らんだ。同団体は、三井住友フィナンシャルグループに対して、パートナー団体等と連携して、気候変動対策の強化を求める株主提案とエンゲージメントを実施し、メガバンクの気候対策や情報開示を促す活動を展開した。