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環境NGOのBankTrack。国際的金融機関によるプロジェクトファイナンスの環境・社会的取り組み「赤道原則(エクエーター原則)」の設立20周年で、「苦情受付サイト」開設(RIEF)

2023-06-05 12:18:19

EP0012キャプチャ

 

  国際環境NGOのBankTrack(オランダ)は4日、主要銀行が公表する「赤道原則(Equater Principles)」に関連するコミュニティや人々の苦情を受け付けるオンラインサイトを立ち上げた。同原則は、国際的な大手銀行が自主的に大規模なプロジェクトファイナンス事業の環境・社会影響に配慮する取り組みで、発足以来、20周年を迎えた。同NGOでは、最近は取り組みの成果が十分にみられないとして、参加金融機関が原則の原点に立ち返ることを求めるため、異例の「バースディープレゼント」としてサイトを設定したとしている。https://www.equator-complaints.org/

 

 同原則は、2003年の6月4日に、米シティや英バークレイズ等が発足させた。背景には国際的なインフラ事業等に伴う環境負荷に対するNGOが事業にプロジェクトファイナンスを提供する金融機関に対してリスク対応を求めたことがきっかけ。現在は日本の金融機関を含め、世界38カ国138の金融機関がメンバーとなっている。

 

 BankTrackが立ち上げた苦情受付のオンラインプラットフォームは、大規模インフラ事業で影響を受けるすべてのコミュニティが、エクエーター原則に合致しないと思えるような、同事業からの負の環境影響や人権侵害等を受けた場合に、声をあげることができる。対象はグローバルで、苦情を受け付けると、BankTrackがそれを評価し、金融機関で組織する「Equator Principles Association(EPA)」と、当該事業に関連するすべての原則署名金融機関とに情報を送付する。https://www.equator-complaints.org/

 

 同時にBankTrackは、声をあげた人々が、金融機関によってどのような解決を求めることが可能かを精査し、苦情を公表するなどして人々を支援する。EPAは原則に賛同する金融機関で構成するが、正式な苦情処理システムを設けていないことから、NGOが代わりに同窓口を設定した形だ。

 

 プロジェクトファイナンスを手がける主要な銀行等の同原則への参加は行き渡っているが、大規模プロジェクトをめぐる紛糾は絶えない。米国での先住民居留地を縦断する石油パイプライン「Dakota Access Pipeline(DAPL)」問題や、中米ホンデュラスでのAgua Zarca大規模ダム建設、仏エネルギー大手otal Energyによる東アフリカ石油パイプライン(EACOP)等では負の環境影響、人権侵害等が指摘されているのに、エクエーター原則適格事業として推進されてきている。https://rief-jp.org/ct1/135563?ctid=67

 

 BankTrack代表のJohan Frijns氏は「今回の苦情受付サイトは、EPAに対して最適なバースデープレゼントであると同時に、EPAと原則加盟金融機関が関わる銀行ファイナンスのプロジェクトの結果として、影響を被るコミュニティにとって声を上げる場を提供するものだ。ただ、同サイトだけでは人々の苦情を解決することを保証はできない。本来は、EPAと加盟金融機関が20年前に自らで原則を作ったように、自らの説明責任のプロセスを構築すべきだ」と指摘している。

 

 国連のビジネスのための人権原則は、エクエーター原則のような産業主導の自主的イニシアティブに対しても、苦情受付のメカニズムを設けるよう求めている。EPA内でもそうした議論が続いているが、加盟金融機関が消極的だとしている。日本勢はEPAに現在、全体の1割弱の10機関が参加している。日本の金融界のリーダーシップを発揮して、日本勢主導で同メカニズムを展開し、EPA全体を引っ張って行ってはどうか。

 

https://www.banktrack.org/article/as_20th_anniversary_gift_weve_made_the_equator_principles_association_a_complaints_channel

https://equator-principles.com/#