FIT利用の輸入バイオマス発電事業。燃料のトレーサビリティで「伐採された現地の森林まで」の確認はわずか。FITガイドラインの「認証燃料情報」等の開示もわずか。環境NGO調査(RIEF)
2024-09-25 23:02:07
国内の固定価格買取制度(FIT)の対象となるバイオマス発電(石炭火力混焼を含む)が使用する燃料の大半は輸入木質ペレットやPKS(パーム椰子殻)で、その多くが認証燃料の量や識別番号の公開を求めるFITガイドラインの規定を守っていないことが分かった。生産地情報もほとんど公開していない。環境NGOのFoE Japanのアンケートで判明した。これらの実態は、回答があった発電所からの分だけで、倍以上ある未回答の発電所を含めて考えると、バイオマス発電事業の燃料情報開示の不十分さが浮き上がる。だが、FIT制度を所管する経済産業省資源エネルギー庁は、十分な調査もしていないようだ。
FoEはバイオマス発電事業を展開する発電出力1万kW以上の事業所および、バイオマス燃料を混焼する石炭火力発電所でFIT認定を得ている合計146の施設を対象として、今年5月5日から7月31日にかけてアンケートを実施した。回答は58の施設から得られた(回答率39.7%)。事業別ではバイオマス専焼が35件、石炭火力混焼が19件、未回答4件。https://rief-jp.org/ct10/148688?ctid=72
58件の回答のうち、輸入燃料のみを使用しているのが31件、輸入燃料と国産燃料を使用しているのが20件で、合計51件がなんらかの輸入バイオマス燃料を使用していると回答した。国産のみの使用は2件だけ。同燃料の種類では、最も多かったのが輸入木質ペレット(38件)、次いで輸入PKS(33件)、国産木質チップ(22件)の順。パーム油その他の回答はなかった。
輸入木質ペレットの「原産国」で最も多かったのはベトナム(11件)、次いでカナダ(6件)、オーストラリア(5件)、米国(4件)。木質ペレット利用の38件中、20件が原産国について何らかの回答をしており、2022年5月の前回調査での対象36社中回答事業者8社から改善した。https://rief-jp.org/ct4/148294?ctid=72
輸入木質ペレットを使用する施設での燃料の持続可能性の確認手法の質問には、「森林認証制度」との回答が最も多く32件。「森林・林業・木材産業関係団体の認定による証明」「独自の取組」とする回答は各5件。独自の取組の内容としては、トレーサビリティレポートの入手、現地サプライヤー訪問、定期的デューデリジェンスの実施など。https://rief-jp.org/ct5/148079
「森林認証制度」と回答した32件中、具体的な森林認証制度としてはFSCの回答が最も多く(22件)、次いでPEFC(5件)。それ以外にはFSC-CoC、PEFC-CoCの回答もあった。ただ、CoC認証は流通過程での分別管理等の認証であり、森林の持続可能性を認証するFM認証と併せて使用する前提であるため、FoEは「サプライヤーに対して、CoC認証取得を確認するだけでは、実際に認証材を購入していることにはならない」と注意を指摘している。
輸入木質ペレットを使用しているとの回答施設の「トレーサビリティの確認」状況では、回答の17施設すべてが「確認している」とした。確認方法では「サプライヤーへの問い合わせ」と「その他」が各9件。「その他」には、ヒアリングや現地訪問等。「トレーサビリティをどこまで遡って確認するか」との問いには、回答の16件中、「加工された工場まで」が最も多く8件、「生産国まで」が4件。「伐採された森林の位置まで確認できる」は2件だけ。FoEは「トレーサビリティの確認の重要性は認識しつつも、伐採地までのトレーサビリティ体制が確立できていないのが実態」とみている。
輸入木質ペレットを使用する施設の情報公開の状況では、回答の15件のうち、「生産地情報を自社サイトで公開」は2件、「発電所で使用した認証燃料の量及びその認証燃料固有の識別番号を自社サイトで公開」は1件にとどまった。「第三者認証スキーム等の名称を自社サイトで公開」は8件。FIT事業計画策定ガイドラインでは「第三者認証スキーム等の名称」だけでなく「発電所で使用した 認証燃料の量及びその 認証燃料固有の識別番号について、自社のホームページ等で情報公開すること」としているが、ほとんどの施設がガイドラインの要求事項を満たしていない実態が浮き彫りになった。
ガイドラインには記載がないが、燃料の持続可能性確認の上で重要な情報である生産地情報についても、ほとんどの施設が情報公開を行っていないことも明らかになった。
輸入PKSについては、回答のあった16件はインドネシア(14件)とマレーシア(9件)からで(複数回答あり)、国名を特定せず「東南アジア」との回答が2件あった。持続可能性の確認方法は、ほとんどが「認証」という回答だった。
輸入PKSの利用施設のトレーサビリティの確認については、回答のあった11件すべてが「確認している」とした。どこまで確認しているかとの問いに対し、回答のあった10件のうち、「加工された工場まで確認できる」が9件だった。しかし、「伐採された森林の位置まで確認できる」はゼロ。
輸入PKS利用施設での情報公開では、回答のあった16件のうち、FITガイドラインが定める「第三者認証スキーム等の名称を自社サイトで公開」が7件、「生産地情報を自社サイトで公開」が4件、「その他」6件だった。「その他」の内容は「搾油工場リストをHP上で公開」「PKS調達量およびPKS発生地点一覧をHPで公表」など。ガイドラインの「発電所で使用した認証燃料の量及びその認証燃料固有の識別番号を 自社のHP等で情報公開すること」との記述に沿って公開しているとの回答はなかった。
ただ、ガイドラインには記載がないが、持続可能性確認の上で重要な生産地情報や、搾油工場のリストの公開について、一部の事業者が取り組んでいることもわかった。FoEは「実質的な透明性の確保を行っていることとなり、評価できる」としている。
バイオマス燃料のライフサイクルGHGの算定では、回答があった41件のうち、「算定している」が29件、「今後、算定予定」が10件、「算定の予定はない」の回答が2件。算定結果をウェブサイトでの公開状況では、回答のあった34のうち、「公開している」が19件、「公開しておらず、公開の予定はない」が7件、「今後、公開予定」が8件だった。
FoEは、バイオマス発電に関するGHG排出について「森林の減少・劣化によるCO2排出もしくは燃焼におけるCO2排出のどちらかが評価されるべきである」としており、前者は、その状況の把握や評価が難しいが、現実には、生産地では、森林の皆伐も含む森林減少・劣化の事例も報告されている、と指摘している。
森林の減少・劣化に伴う炭素排出をカウントしているか、との問いに対して、回答のあった15件のうち、ほとんどが「カウントしていない」(12)。「カウントし、事業のライフサイクルGHGに含めている」との回答が2件、「カウントしているが、ライフサイクルGHGに含めていない」との回答が1件あった。