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内外の環境NGO等が、3メガバンクおよび3大商社、JERAの株主の中部電力の7社に対して、気候変動対策の強化を求める株主提案提出。法的拘束力のある定款変更議案として(RIEF)

2025-04-15 15:58:37

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写真は、7社に株主提案を提出した環境NGOの代表者たち)

 

    国内外の環境NGOとその代表者を含む個人株主は15日、金融、総合商社、電力の3業界の7企業に対し、気候変動対策の強化を求める株主提案を提出した。提出先企業は三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)三井住友フィナンシャルグループ(SMFG)、みずほフィナンシャルグループ(みずほ)、三菱商事、三井物産、住友商事、日本最大のCO2排出企業JERAの株主の中部電力。NGOらはこれらの企業に対して、法的拘束力のある定款変更議案の形式で議案を提出した。

 

 株主提案の議案を提出したのは、国際環境NGO マーケット・フォース、国際環境NGO FoE Japan、NGO法人気候ネットワーク、レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)の4団体。

 

 これらのNGOは、これまでも2020年以降、これらの企業を含む日本の温室効果ガス(GHG)高排出企業や金融機関に対して、気候変動リスクを緩和して企業価値を向上させるために、書簡の形式で法的拘束力のない勧告的決議案を提出してきた。しかし今回の7社すべてから、同決議を定時株主総会で議案として扱うことはない旨の返答を受けてきた。

 

 このことから、今回は法的拘束力のある定款変更議案の形式で議案を提出し、当該企業の取締役らを監視する監査委員会/取締役会の役割およびその実態についての、より多くの情報開示を求めることで、当該企業のガバナンス向上を推進するとしている。

 

 NGOらは、昨年の株主総会シーズンにおいて、金融機関の株主総会で「気候変動関連の事業リスク及び事業機会の効果的な管理のための取締役のコンピテンシーの開示を求める内容」の議案を提出し、25%以上の株主の賛同を集めたケースもあるとしている。今回提出した議案には、当該企業の取締役らを監視する監査委員会/取締役会の役割およびその実態について、より多くの情報開示を求めることで、企業のガバナンス向上を推進する狙いがあるとしている。

 

 英国のコーポレート・ガバナンスコードでは「株主総会の議案に20%以上の反対票が投じられた場合は、その背景を理解すべく、企業がどのような行動をとるか総会の結果を発表する際に説明すべき」との規定が定められている。このことから、NGOらはわが国においても、対象となる企業に対し、気候政策方針の改定やさらなる開示を求めてきたとしている。

 

 しかし、各企業が、広く株主が意見表明する重要な機会となる勧告的決議を定時株主総会で諮ることをそろって拒否したことについては「大変失望している」と指摘。特に最近では、岡山市や愛媛県今治市で同時的に発生した大規模な山林火災について、人為的な気候変動の影響を受けて広がったとする研究も発表されており、気候変動対策の緊急性は一層高まっていると強調している。



 NGOらは、今回の株主提案の提出先企業ごとの問題の要点について、次のように説明している。


<メガバンク企業>スクリーンショット 2025-04-15 154422


 マーケット・フォースの日本・エネルギーファイナンスキャンペーン担当の渡辺瑛莉氏は「メガバンクがNZBAから脱退したことで、銀行のネットゼロ公約への本気度が厳しく問われている。銀行は、高排出顧客が信頼性ある移行計画を策定する明確な期限を示す必要がある。さもなければ、銀行自身にとっての財務リスクにつながる。昨年、同様の株主提案が強い支持を得たにもかかわらず、これらの銀行は意味のある進展を示していない。今後、数カ月で進展が見られなければ、再び株主からの反発を招く可能性がある。加えて、気候リスクを含むリスク管理について、監査委員会による評価の開示を強化することは、ガバナンスの改善と企業価値の向上に不可欠だ」と指摘している。



 RANの日本シニア・アドバイザーの川上豊幸氏は「メガバンクの監査委員会は機能してないと考えざるを得ない。なぜならば、メガバンクは信頼できるネットゼロへの移行計画のない企業や、重要な炭素吸収源である熱帯林や泥炭地の破壊及び人権侵害に加担する問題企業に資金提供を続けているからだ。メガバンクの執行部門でのリスク管理ができていないだけでなく、監査委員会の監督機能にも深刻な課題があるのではないかと大きな懸念を持っている」と指摘。

 

 同氏は、その具体的な事例として、「例えば、MUFGとみずほは、大規模事業における社会・環境リスク管理の枠組みである『赤道原則』の遵守を誓約しながら、現地の先住民族の反対を無視して建設を予定している米メキシコ湾岸のリオ・グランデLNG施設に資金提供を行っている。メガバンクは早急にガバナンスの一層の強化と情報開示を行い、リスクを厳格に管理すべきだ」と述べている。

 < 総合商社>スクリーンショット 2025-04-15 154436

 FoE Japan事務局長の深草亜悠美氏は「各商社はネットゼロ目標を支持しているにも関わらず、今後も高炭素セクターへの投資を続ける計画を変えていない。激化する気候危機の影響による物理リスクや、移行リスクにどのように対応するのかを開示し、それらへの対応策を示すことは、株主にとっても気候危機対策上も非常に有意義。日本の商社はモザンビークLNGやLNGカナダなどのように、人権上の重大な懸念が指摘されている事業にも投資を行っている。したがってこれらの商社に、ガバナンスとリスク管理を問う提案は今後のリスク緩和の上でも重要と考える」としている。



 マーケット・フォースの日本エネルギーキャンペーナーの布川健太郎氏は「気候変動による財務リスクが高まる中、各商社がさらされているリスクを、適切に管理するためのガバナンスに関する情報開示は不十分だ。定量的リスクと非財務リスクを適切に認識し、事業計画や投資判断にどう反映させるのか。そして、その一連の意思決定プロセスの妥当性をどのように担保しているのか、といった点について、日本最大級の総合商社におけるガバナンス体制の透明性が強く問われている」としている。


<中部電力>スクリーンショット 2025-04-15 154450


 気候ネットワークのプログラム・コーディネーターの鈴木康子氏は「電力の安定供給を重視するとしながら、不確実性の高い技術に過度に依存することはリスクに他ならない。水素・アンモニア燃料の利用拡大は継続的な燃料の輸入を必要とするため、国のエネルギー安全保障上の問題となるだけでなく、電力価格を押し上げることで国民の暮らしを圧迫することにつながる。2050年の目標を定めただけでは対策は進まない。具体的な計画の策定や実行、気候変動による影響の評価、さまざまなリスクへの対応が適切に行われているのかを、株主が判断するには情報の開示が必要だ」としている。



 マーケット・フォースの布川氏は「中部電力およびJERAの移行計画には依然として改善が見られず、JERAの化石燃料事業の拡大により移行リスクは深刻化している。加えて、日本最大級の電力会社であるJERAは、山火事、洪水、台風など、気候変動の進行に伴う物理的リスクにもさらされている。中部電力とJERAによる気候変動への遅慢な対応は、ガバナンス上の課題を浮き彫りにしている。気候変動の悪化に伴う財務リスクの情報開示を拡充し、取締役の適切な監督を強化することが、今後、一層必要になる」


https://shareholderaction.asia/ja/

株主提案の内容に関するお問合せ先
□ マーケット・フォース(Market Forces)担当者:Antony Balmain氏 Email: contact@marketforces.org.au

□ FoE Japan  担当者:深草亜悠美 Email: info[@] foejapan.org
□ 気候ネットワーク   東京事務所:担当者:鈴木康子 E-mail: suzuki[@]kikonet.org  TEL:+81-3-3263-9210

□ レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)担当者:関本幸 E-mail: yuki.sekimoto[@]ran.org