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三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)関与のパブアニューギニアでのLNG計画。気候・生態系・人権等で懸念と、NGOが「エクエーター原則」に基づく初の苦情申し立て(RIEF)

2025-12-12 01:00:07

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 日本、オーストラリア、アジア等の環境NGO6団体は、仏トタルエナジーズが主導し、エクソンモービル等が共同出資するパプアニューギニアでのLNG開発計画(パプアLNG)が、気候変動、生物多様性、現地住民への人権等に多大な潜在的影響を及ぼす懸念があり、金融機関で定める自主基準の「エクエーター原則」と整合しないとする申し立てを行った。同原則に基づく公式の苦情申し立ては初めてとしている。同計画の財務アドバイザーは、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)が担当しているが、前アドバイザーの仏クレディアグリコルをはじめ15の内外金融機関は、NGOや現地住民団体等の主張を受け入れてプロジェクトに融資しない方針を明らかにしている。

 

 申し立てを行ったのは、アジア債務・開発問題人民運動(APMDD)、パブアニューギニア環境法・コミュニティ権利センター(PNG)、日本の「環境・持続社会」研究センター(JACSES)、ジュビリー・オーストラリア研究センター、マーケット・フォース、リクレーム・ファイナンスの6団体。

 

 申し立ての対象は、パプアニューギニア・ガルフ州のエルク・アンテロープ(Elk-Antelope)ガス田の開発計画。トタルエナジーズが主導(権益比率40.1%)。パートナーとしてエクソンモービル(37.1%)、豪サントス(22.8%)、日本のENEOS Xploraが参加している。年間560万㌧前後のLNGを生産し、日本への輸出も想定しているとされる。ガス田から首都ポートモレスビー近郊のコーション・ベイ(Caution Bay)の液化プラントまで全長320kmのパイプラインで輸送する計画だ。

 

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 同事業では、開発する天然ガスとともに産出されるCO2を、操業開始時から回収・貯留するCCS技術を導入する等で、CO2排出量の削減を目指すとしている。最終投資決定(FID)は当初、2023年末から2024年初め、さらに2025年中と設定していたが、気候・生物多様性・人権問題等への対応で、現在は、2026年第1四半期以降に延期されている。

 

 同事業の開発による影響は、現地のガルフ州で主に農村部で暮らす先住民族の少なくとも1万2700人の生活等に及ぶと指摘されている。開発区域周辺は、生物多様性の宝庫であり、外部科学によって未確認または未記載の100種と、少なくとも27種の絶滅危惧陸上生物が生息していることが知られている。

 

 このため申立書は、同計画がエクエーター原則が定める10項目中6項目に明らかに準拠していないと指摘している。具体的には、①プロジェクトの具体的側面、そのリスク、影響、代替案を明確に説明する地域向け情報資料の不足②地域社会がエクエーター原則や、EUの企業サステナビリティデューデリジェンス指令(CSDDD)等の権利に関する規定の通知を受けたとする証拠の欠如③自由で事前の情報に基づく同意(FPIC)の検証可能な証拠等について通知された証拠の欠如④公開された気候変動リスク評価(CCRA)の欠如⑤完全かつ公開された最新の「人権影響評価」の欠如⑥上流工程における廃止措置計画の欠如、としている。

 

 エクエーター原則には、日本の3メガバンクを含めて、世界130の金融機関が署名している。署名機関は、内外でのプロジェクトファイナンス事業への融資に際して、環境・社会等への影響評価を自主的に行い、影響が大きい場合は事業者に是正を求める等の行動をとることを定めている。

 

 このため、今回の「パブアLNG」の場合も、すでに15の官民金融機関が同事業からの撤退、または難色を示しているとしている。ただ、日本勢はMUFGがクレディアグリコル撤退後を引き受ける形で、トタル等の事業者への財務アドバイザーとなっており、事業が動き出すと、他のメガバンクを含めて、融資資金を供給する考えとみられている。

 

 申し立てを行った「パプアニューギニア環境法・コミュニティ権利センター」 事務局長のピーター・ボシップ(Peter Bosip)氏は「本申立はパプアLNGプロジェクトが抱える深刻な人権・気候・生物多様性問題の数々を浮き彫りにする。パプアニューギニアの人々は、先住民族としての権利と、自然や貴重な気候を尊重する真の発展に値する人々だ。(金融機関には)エクエーター原則に基づく行動をとることを強く求める」と述べている。

 

 豪マーケット・フォース・日本エネルギー金融キャンペーン担当の渡辺絵里氏は「多くの銀行が融資を拒否したプロジェクトの財務アドバイザーとしてMUFGが関与している事実は、同行のリスク管理における重大な欠陥と、ネットゼロ排出達成への公約との明らかな矛盾を浮き彫りにしている。MUFGはこの申し立てを真摯に受け止め、徹底的な調査を実施し、環境・人権に関する約束を守るためパプアLNGプロジェクトから撤退すべきだ」と指摘している。

 

 エクエーター原則には正式な苦情処理メカニズムが存在しない。そこで今回の申し立ては、国際環境NGOのBankTrackが、市民社会組織が同原則に基づく署名金融機関への苦情申立てを支援するために開設しているオンライン苦情チャネルを通じて提出された。BankTrackはオランダに拠点を置くNGOであり、同原則の成立・金融機関の活動を求める提言等で20年の実績を持つ。

                           (藤井良広)

https://www.banktrack.org/article/ngos_submit_first_formal_equator_principles_complaint_against_mufg_and_potential_financiers_of_the_papua_lng_project

https://equator-principles.com/