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国際気候NGO。高炭素排出の「鉄鋼業」の脱炭素化度を評価する「鉄鋼企業移行トラッカー」を開発・公開。日鉄など世界22メーカー対象。投資家や顧客企業、市民団体らの利用を想定(RIEF)

2026-01-16 02:00:55

Steelwatch

 

   高炭素排出の代表産業である鉄鋼業界は世界のCO2排出量の約11%を排出している。したがって、その脱炭素化の進捗は、各国の気候対策でも重要課題だ。世界の主要鉄鋼メーカーの脱炭素化状況をウォッチしている国際気候NGO「スティールウォッチ」は、こうした鉄鋼メーカーの排出量の透明性と情報の比較可能性性を高めるデータ分析ツール「鉄鋼企業移行トラッカー」を開発・公表した。対象となるメーカーは、日本の日本製鉄やJFEスチールを含めて12か国22社。分析ツールの開発・公表は、鉄鋼メーカーの脱炭素化を推進するうえで、透明性と信頼性を高めたデータに基づく政策・経営の議論の土台になると期待される。

 

 鉄鋼業界は世界のCO2排出量の1割強を占める。日本の場合はさらにそれを上回る約13%とされる。鉄鋼業からの排出量は、石炭を用いる高炉での鉄鋼生産が全体の排出量の90%を占めており、日本の場合、日鉄、JFEなど、主要メーカーが高炉メーカーで占められていることが大きい。

 鉄鋼各社はそれぞれ脱炭素計画を公表し、情報開示にも取り組んでいる。だが、それらの計画や開示の手法等は自主的なものが大半で、共通性に乏しいのが実態だ。国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)のサステナビリティ・気候情報開示基準の公表で、主要国では同基準に沿った開示が今後進む期待はあるが、現状では十分ではなく、各メーカーの脱炭素の進捗状況に関する比較分析は困難だ。



 「トラッカー」はこうした鉄鋼メーカー間の比較、また各メーカーの経年的な進捗状況の比較等を可能にすることを目的として開発された。鉄鋼メーカーの公開情報に加え、グローバルエナジーモニター(GEM)などいくつかの一般公開情報源を活用し、「排出量」、「石炭依存度」、「グリーン鋼材への準備度」、「人や社会への影響」の4分野で、注目すべき重要な23の指標を共通の尺度として評価に活用する。

 対象企業の選別では、CO2排出量が多く、気候影響を及ぼす高炉メーカーを主な対象とした。加えて、脱炭素化技術の採用状況等を踏まえ、米国の大手電炉メーカー、合成ガスによる直接還元製鉄(DRI法)を採用する大手2社、グリーン鉄鋼を目指す最新の低排出な鉄鋼生産を採用する企業も対象に加えた。

主要鉄鋼メーカーの石炭消費量の比較のサイト
主要鉄鋼メーカーの石炭消費量の比較の事例

 単純に粗鋼生産量の上位鉄鋼会社だけを対象とすると、22社中12社が中国企業となり、地理的偏りが生じる。また、高炉メーカー21社に対し、電炉メーカー1社という製鉄手法の偏りも生じる。今回、「トラッカー」で選定した22社は、大手鉄鋼メーカーの所在地の多様性と鉄鋼業界の地理的な広がりを切り取って示す点で優れているが、鉄鋼業界の全ての特性を忠実に反映するものではない、との注意も促している。22社が世界全体の鉄鋼生産に占める割合は25%。

 スティールウォッチでは、「トラッカー」の開発・公表により、次の重要な点が浮き彫りになった、としている。

 まず、高炉で活用する石炭への依存は未だ鉄鋼メーカーにとって大きな課題になっている。排出量及び石炭を使用した高炉の数は増加し続けているのだ。にもかかわらず、「トラッカー」が選出した22社の大半は石炭消費量を報告していない、のが実態だこのため同NGOは「実際の石炭消費量は、トラッカーで示されている数字よりもはるかに多いと考えられる」としている。


 また、既存のニア・ゼロエミッションが可能な鉄鋼生産設備(主にガスによる直接還元製鉄)は存在するものの、脱炭素化のためのグリーンアイアン(低排出な鉄源)やグリーンスティール(グリーン鋼材)等の生産は、まだ本格化していない。特に、グリーンアイアンの消費量と生産量は依然としてゼロのまま。鉄鋼業界全体の脱炭素化に向け、ペースを加速・拡大していく必要があり、今後トラッカーで進捗を追うことが可能となる、としている。


 各鉄鋼メーカーの年度間比較でも、労働安全衛生や大気汚染の指標は改善傾向にある一方、「近年、気候変動対策における取り組みの傾向は概ね横ばいで、進展は見られていない」としている。

 「トラッカー」の対象となる鉄鋼メーカー

企業名 本社所在地 粗鋼生産能力の世界順位 対象企業とした根拠
宝山鋼鉄(BaoSteel) 中国 不明(1位) 世界最大の鉄鋼メーカーである宝武鋼鉄集団(Baowu Group)は、グループ内の鉄鋼事業部門の連結データがないため除外。 代わりに、宝武鋼鉄集団の中核企業である宝山鋼鉄を対象企業とする。
アルセロール・ミッタル ルクセンブルク 2位 ルクセンブルクに本社を置く最大の鉄鋼メーカー
(鞍山鋼鉄集団:Ansteel Group) (中国) (3位) (中国第2位のメーカーだが、データが利用不可なため除外)
日本製鉄 日本 4位 日本最大鉄鋼メーカー
河北鋼鉄集団(HBISグループ) 中国 5位 鞍山鋼鉄集団に次ぐ中国第3位の鉄鋼メーカー。
ポスコ(POSCO) 韓国 7位 韓国最大の鉄鋼メーカー
タタ・スチール インド 10位 インド最大の鉄鋼メーカー
JSWスチール インド 12位 インド第2位の鉄鋼メーカー
JFEスチール 日本 13位 日本第2位の鉄鋼メーカー
ニューコア(Nucor) 米国 15位 米国最大の鉄鋼メーカー(電炉メーカー)
現代製鉄(Hyundai Steel) 韓国 18位 韓国第2位の鉄鋼メーカー
クリーブランド・クリフス 米国 22位 米国第2位の鉄鋼メーカー(高炉メーカーとしては最大)
USスチール 米国 24位 米国第3位の鉄鋼メーカー(高炉メーカーとしては第2位)
テルニウム(Ternium) ルクセンブルク 不明(28位) テチントグループ(Techint Group)は世界第28位の鉄鋼メーカーだが、傘下の2社(テルニウムとテナリス)の連結データがないため、より規模の大きいテルニウムを選定。
NLMKグループ ロシア 30位 ロシア最大の鉄鋼メーカー
マグニトゴルスク製鉄(MMK) ロシア 34位 ロシア第2位の鉄鋼メーカー
ゲルダウ(Gerdau) ブラジル 35位 ブラジル最大鉄鋼のメーカー
ティッセン・クルップ・スチール・ヨーロッパ ドイツ 42位 ドイツ最大の鉄鋼メーカー
モバラケ・スチール イラン 43位 イラン最大の鉄鋼メーカー(合成ガスによるDRI-EAF法)
SSAB スウェーデン 50位 スウェーデン最大の鉄鋼メーカー
オヤック(エルデミル) トルコ 55位 トルコ最大の鉄鋼メーカー
トスヤル・ホールディング トルコ/中東・北アフリカ(MENA) 67位 トルコ第2位の鉄鋼メーカー(合成ガスによるDRI-EAF法)
ステグラ(Stegra) スウェーデン 0(スタートアップ) 商業規模のグリーン水素によるDRI-EAFの生産を見込む世界初の企業

                            (藤井良広)

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