モザンビークLNG事業。仏トタルエナジーズが5年ぶりの事業再開で同国大統領と合意。日本勢は国際協力銀行(JBIC)や3メガバンク、日本生命等の官民金融が参加。環境NGOは猛反発(RIEF)
2026-02-03 01:57:08
仏エネルギー大手トタルエナジーズは先週末、会長兼CEOのパトリック・プイヤン(Patrick Pouyanné)氏が、モザンビーク大統領のダニエル・チャポ(Daniel Chapo)氏と会談し、休止状態が続く「モザンビークLNGプロジェクト」を全面再開することで合意したと発表した。同国北部の天然ガス開発地域で、2021年4月、治安の悪化でトタルが事業の休止を「不可抗力」として宣言、中断していた。5年ぶりの再開になる。ただ内外の環境・人権NGO等は、国軍による民間人への弾圧問題等が解決されておらず、事業再開は人権リスクが大き過ぎると反対を表明。事業に資金を供給する日本の官民金融機関を含む金融機関等に対して同事業へのファイナンスの停止を求めている。
「モザンビークLNG」事業は、同国北部のカーボデルガド州で2010年にガス田が発見され、開発されている事業計画の一つ。トタル主導の下、米英を含む複数の国の輸出信用機関、銀行団が開発事業に融資してきた。
日本からは、国際協力銀行(JBIC)と日本貿易保険(NEXI)の公的機関のほか、三菱UFJ銀⾏、みずほ銀行、三井住友銀⾏、三井住友信託銀⾏、SBI新⽣銀⾏、⽇本⽣命保険の6民間金融機関が参加し、官民連携体制をとっている。3メガバンクを軸に、国内で原発ローンを積極的に展開する日本生命がLNG開発事業の融資団にも参加しているのが特徴だ。https://rief-jp.org/blog/150518?ctid=
同事業の再開については、昨年11月に、陸上・海上の両プロジェクト活動の再開を、事業会社の「モザンビークLNGコンソーシアム」が決定している。今回、トタルと大統領との政治的合意によって、同事業の再開が本格的に確定したことになる。
しかし、現地では今も、反政府勢力との紛争が続いている。その中で、争点となっているのが、2021年7月から9月にかけて、モザンビーク治安部隊が開発地域周辺の大規模な住民集団が反乱勢力に関与したとして、強制的に住民の男性を女性や子供から引き離して拘束し、モザンビークLNG施設の入り口付近の輸送コンテナに、拘束した男性たち180人から250人を閉じ込め、拷問などを行ったという事件だ。
生存者はわずか26人という同事件は、「コンテナ虐殺事件」として、仏Le Mondeなどのメディアの調査報道で裏付けられている。女性たちも性的暴行、レイプ等を受けたとされている。トタルは戦争犯罪、拷問、強制失踪への共謀の訴えも受けている。同社は、この時、住民たちを拘束、拷問、殺害したとされるモザンビーク軍に直接資金を提供し、物質的な支援を行ったとして、人権NGOや住民たちに告発されてもいる。
事件が発覚して以来、これまでにモザンビーク国家人権委員会、同司法長官、英国輸出信用保証局、オランダ政府等による調査が行われてきた。しかし、問題を引き起こしたのが同国政府の治安部隊で、かつ現在も反政府勢力と武力紛争中であることから、調査に対しても同国の政府関係機関側からは違反行為に対する十分な説明責任が果たされない状況が続いているという。
環境NGOのFOE Japanによると、現地の不安定な治安情勢下で地域社会への保護が依然として不十分であり、地域社会が被った被害への対応が未だ不十分であると警告している。この間、英国とオランダの政府は、人権リスクが大きすぎると判断し、事業の支援から撤退した。
環境NGOのJustiça Ambiental、Friends of the Earth France、Reclaim Finance、BankTrack等は、「今回の事業再開決定は無責任かつ危険である」と述べて、金融機関に対しモザンビークLNGへの融資を行わないよう要請した。
Justiça Ambiental!の事務局長のアナベラ・レモス(Anabela Lemos)氏は、「世界で最も貧しい国の一つであり、環境災害によって度々壊滅的な被害を受けているこの国は、利益のみを追求するトタル・エナジーズのような多国籍企業によって、『金のなる木』のように扱われている。モザンビークで何千人もの人々が再度壊滅的な洪水の被害に苦しんでいる中、同社は人命を軽視し、同国の環境保全が必要な地域でガス採掘事業を再開し、さらには称賛さえしている。このような不正義は、人命、環境保護、そして気候正義よりも企業利益を優先し続ける金融機関の無責任で非倫理的な資金提供によって可能になっている」と指摘。金融機関の無責任なファイナンス姿勢を批判している。
Friends of the Earth Franceの民間金融キャンペーン担当のロレット・フィリポ(Lorette Philippot)氏も「モザンビークLNG事業の再開の発表は、死者、行方不明者、そして強制住民移転の影響を受けた人びとや、避難者の存在を否定しようとするようなもの。これは、現在も続く治安の悪化、地域社会の苦しみ、そして法的手続きを無視するために意図的になされた決定だ。トタルは、モザンビーク国民に多大な犠牲を払わせることになっても、どんな犠牲を払ってでもこの事業を推進しようとしている」と述べ、トタルの強欲な開発姿勢を糾弾している。
しかし、すでに開発拠点では陸上・海上両方の建設活動が再開されており、4000人以上の作業員が動員されているという。プロジェクト進捗率は現在40%で、主要設備の設計・調達作業のほぼ全ては不可抗力期間中に実施されている。順調にいくと、開発事業からのLNGの初出荷は2029年を予定しているという。

































Research Institute for Environmental Finance