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格差是正を目指す「グラミン日本」、今月半ばにも設立へ。日本国内の貧困層の自立化支援を目指す。資金調達の継続がカギ(RIEF)

2018-09-04 18:14:54

Gramin1キャプチャ

 

 格差拡大が顕在化する日本社会で、貧困や生活困窮状態にある人々に、低利・無担保で少額融資を行って自立支援をする「グラミン日本」が今月半ばに、設立宣言する。グラミン日本は、バングラデシュで誕生したマイクロファイナンスの草分けであるグラミン銀行の日本版で、創設者でノーベル賞受賞のモハメド・ユヌスさんも支援者の一人だ。

 

 (写真は「グラミン日本」立ち上げで協力するユヌスさん(左)と、理事長の明治学院大学の菅教授)


 グラミン日本の設立は、昨年2月にユヌスさんが来日、貧困層向け小口融資を研究している明治学院大学の菅正広教授との間で、「グラミン日本」の設立で合意し、これまで準備組織を設けてきた。http://rief-jp.org/ct7/72838

 

gramin3キャプチャ

 

 本家、バングラデシュのグラミン銀行はユヌスさんが1983年に設立した途上国のマイクロファイナンス機関。働く意欲のある女性の起業支援の資金を無担保で融資するシステムを開発、2015年12月現在、881万人の借入者のうち97%は女性だ。

 

 日本は先進国に分類される。だが、貧富の格差、地域の格差の拡大は、年々、大きくなっているとされる。また仕事があっても、パートや派遣などの立場の変更が容易ではないほか、正規労働の場合でも賃金上昇が極めて限られ、厚生労働省のデータでも、国民の6人に1人(約2000万人)が貧困ライン以下での生活を余儀なくされている。

 

 こうした「貧困層・貧困近接者層」は、いったん失職、病気、ケガ、事故、配偶者との離別・死別などに直面すると、社会的に行き詰まるリスクが極めて高い。そこで、グラミン日本では、貧困層や生活困窮状態にある人々に、生活資金の融資ではなく、働く場を確保するための資金(起業や就労の準備のためのお金)を中心的に融資することを主な業務とする予定だ。

 

 グラミン日本は正式には銀行ではない。貸金業法の特例の適用を受ける貸金業者に分類される。その融資の特徴は、融資を受けたい人が5人一組の互助グループを作る点だ。そのうえで申し込むと、当初は最大20万円まで融資する。滞りなく返済を続けていけば、融資額は順次増額していく仕組みだ。本家、グラミン銀行がバングラデシュで取り入れた手法でもある。

 

NHKの紹介番組より
NHKの紹介番組より

 

 融資する資金は、①寄付金②基金への出資金③賛助会員の支援ーーなどで調達する。すでに2018年3月から5月末までの約3カ月の間に、1000万円の事業資金を募集し、281人の投資家から1038万円を調達したという。設立宣言直前の9月13日~19日にも集中ファンドレイジングを展開する予定だ。19日に都内で、設立記念パーティを企画している。

 

 また、生活困窮者等に資金を貸し付けるだけではなく、支援対象者に対する職業トレーニング等の提供や、各種支援ノウハウ提供などもボランティアベースで行う。すでに協力企業・団体として、一般社団法人日本シングルマザー支援協会、日本労働者協同組合(ワーカーズコープ)連合会が連携ネットワークに入っている。

 

  日本にはこれまでも、グラミン銀行の活動などもモデルとしたNPOバンクが複数立ち上がっている。未来バンク(東京)、女性・市民コミュニティバンク(横浜)、東京コミュニティパワーバンク(東京)、北海道NPOバンク、NPO夢バンク(長野)などだ。すでに20年以上の活動歴の団体もある。

 

 これらの市民レベルの活動は、それなりの成果はあげているものの、社会の貧困問題が広がる中で、十分な機能を果たしているとは言えない状況にある。その最大の理由は、無担保・低利融資を支える資金量の確保が容易ではないことだ。グラミン日本を支える市民層の支援がどれだけ高まるかがカギを握る。

https://grameen.jp/