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ハワイ・ホノルル市、気候変動の進行で「ワイキキの浜辺が消える」と訴え。CO2排出増大の元凶である石油メジャー8社を相手に訴訟提起(RIEF)

2020-03-18 08:00:49

Honoruru1キャプチャ

   米ハワイ州のホノルル市は、温暖化の進展によってハワイの魅力であるワイキキの浜辺や海岸が侵食され、ハリケーン被害も増大している責任は、ExxonMobile、Shell、Chevronなどの石油メジャー8社にあるとして、各社を相手にした訴訟をハワイ州巡回裁判所に提起した。訴状では、メジャー各社は石油・ガス等の化石燃料開発と燃焼がCO2などの温室効果ガス(GHG)排出を増やす危険性を知りながら、それを隠して利益追求をしてきたと指摘している。

 訴状によると、化石燃料の焼却によって引き起こされる気候変動は、ホノルル市の魅力の場である浜辺や沿岸に大きなダメージをすでに与えているほか、人々の生活に対しても、海面上昇、熱波、洪水、干害などの壊滅的な影響を与え続けている、と指摘。その結果、同市は膨大な対策費用を計上せねばならず、市民や建物等の固定資産もリスクに晒されているとしている。

 同市の最高レジリエンス責任者(CRO)で、ハワイ州の気候変動・サステナビリティ・レジリエンス局局長でもあるJosh Stanbro氏は「われわれは、まさに今現在、海岸線の浸食とその結果を目の当たりにしている。それはハワイ自体の存在の危機だ」と強調している。

青空と白い浜。気候変動でこの情景も消えていく?
青空と白い浜。気候変動でこの情景も消えていく?

 また訴状は、「石油メジャー等は長年にわたって、エネルギー開発の影響が壊滅的な結果をもたらすことを知りながら、何もしてこなかった。大規模な開発と石油、石炭、天然ガスの消費を促進し、その結果として膨大だが、予見可能で避けられたはずのGHG汚染を引き起こしてきた」としている。

 そのうえで、被告の石油メジャー各社に対して、気候変動によって引き起こされた損害と対策費用に対して責任を負うべき、と主張している。これまで全米の他の州で提起されている訴訟では、ExxonMobileが1970年代に内部の科学者から温暖化の影響についてのリスクを指摘されていたことが明らかになっている。ホノルル市もこの点を指摘、「訴訟は説明責任(accountability)が論点だ」(Stanbro氏)としている。

 環境訴訟を担当するサンフランシスコの法律事務所、Sher Edingによると、気候変動対策でホノルル市が必要とされる費用は190億㌦(約2兆円)に上る。海面上昇によって道路や上水道設備、廃棄物処理場等の重要なインフラ設備の修復・強化の費用が増大するためという。同事務所は過去2年半の間に提訴された14件の気候訴訟のうち11件を担当している。

 ハワイでは昨年、マウイ島も同様に、石油メジャーを相手に訴訟を起こしている。同訴訟も気候変動によって起きる海岸線の浸食やハリケーン、洪水被害等による損害に投じられる税金負担を、石油メジャーに求める形だ。同訴訟にもSher Eding事務所が参加している。

 全米の各州や自治体等が気候訴訟を提起するのは、気候変動で受ける地域社会の損害や、気候変動の影響に対応する適応(Adaptation)対策費用の増大等で、自治体が破産につながる懸念が高まっていることも背景にある。一方、責任追及と費用負担を求められるエネルギー会社側は、州レベルの裁判所での決着よりも、連邦裁判所での判断を求める形だ。自治体が求める適応費用の肩代わりについても、連邦議会の判断として、政府の支援に頼る考えのようだ。