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チリがパリ協定の改定国別対策貢献(NDC)提出、現行公約を強化。GHG排出量を2025年にピークアウトを目指す。長期目標は2050年カーボンニュートラル実現(RIEF)

2020-04-11 22:54:05

Chili2キャプチャ

 

 南米のチリは、パリ協定で公約した国別対策貢献(NDC)の改定版として、2025年までに自国内の温室効果ガス(GHG)排出量をピークアウトさせる強化策を国連の気候変動枠組条約事務局(UNFCCC)に提出した。新型コロナウイルス感染のグローバルな広がりで、NDC見直し案の提出が遅れたり、日本の様に目標を変えない国が相次ぐ中で、チリがNDC強化案を提出したことをUNFCCCは歓迎を表明している。

 

 (写真は、改定NDCの国連提出で記者会見に臨んだチリ環境相のSchmidt氏㊥)

 

 チリはすでに2050年にカーボンニュートラル達成を目標としている。この長期目標に至る2030年目標として、2030年の総GHG排出量を95Mt(CO2換算)と設定、現行計画を強化した。2020年から30年までの10年間の国のカーボンバジェットを合計1100Mtとし、ピークを2025年としている。

 

 またブラックカーボン(BC)について、2030年までに少なくとも25%を削減するとした。BCは、石炭燃焼や森林火災、ディーゼルエンジンの燃焼等で発生し、PM2.5 の中に含まれる大気汚染微粒子(エアロゾ ル)の1つだ。最近は温暖化効果の高さでも知られている。

 

 チリ政府は、改定NDCの目標を達成するため、年末までに新たなカーボンバジェットを担保する法改正を予定している。環境相のCarolina Schmidt氏は記者会見に臨み、「コロナウイルス感染による健康問題を克服した後は、われわれはサステナビリティを高める必要性に応えねばならない。今まさに、その重要な瞬間に立っている」と強調した。

 

 「なぜ、われわれは今、野心的な目標とコミットメントを高めた改定NDCを提出するのか。新NDCは、人々の生活の水準を改善して、環境・社会、経済的ベネフィットを伴う、低炭素で気候変動にも耐えられる強靭な経済社会への転換という明確な目標を実現するための経済回復策に集中するためのものだ」

 

 チリは昨年11月開催のCOP25を首都サンチアゴで主催するはずだった。しかし、物価の値上がり等、生活の困窮に不満を持つ国民の抗議行動で社会不安が広がり、スペインが急きょ開催を肩代わりしたという経緯がある。したがって、今回の改定NDC提出の発表でも、気候変動の影響に対応する対策の前に、不平等や生活コストアップ等による国民生活負担の改善という「Social pillar(社会的課題)」の改善を掲げている。

 

 パリ協定で約束したNDCの改定案の締め切り日は、今年開催されるはずだったCOP26の9~12カ月前と設定されていた。だが、コロナウイルス感染の広がりで、COP26自体が来年に延期されたため、改定NDCの提出期限も延期されている。これまでにUNFCCに提出した国は、マーシャル諸島共和国、スリナム、ノルウェー、モルドバ、日本、シンガポールの6か国。このうち日本とシンガポールは、国連のNDC強化要請にもかかわらず、目標値を改定せず、従来通りの目標値のまま再提出した。

 

https://www.nrdc.org/experts/carolina-herrera/chile-signals-urgency-climate-action-updated-ndc