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米国でもコロナウイルス感染後の経済回復策を、気候対策を軸とした「グリーンリカバリー」にするよう、330社の企業CEO、投資家代表等が要請。超党派の法的対応を求め共同声明(RIEF)

2020-05-17 01:18:55

 

  新型コロナウイルス感染拡大の危機を乗り越えた後の経済・景気回復策について、気候変動対策等を軸としたグリーンリカバリーにしようという動きが、欧州で広がっているが、米国でも同様の要請が企業・投資家から盛り上がっている。330社以上の企業のCEOや投資家らは先週、レジリエントでサステナブルな経済への転換を目指すよう米議会に対して超党派での対応を求める共同声明を提出した。

 

 トランプ政権はこれまで、コロナ感染の影響による経済活動の低迷を支えるため、議会と連携して3月以降、3度の経済対策を打ち出してきた。合計でGDPの15%近い3兆㌦弱の財政出動を決めている。さらに下院で多数を占める民主党は15日、3兆㌦(約320兆円)の第4次対策案を賛成多数で可決。企業と家計への資金供給の拡大と、州・地方への1兆㌦の支援等が内容だ。ただ、今回は上院で多数の共和党が反対、与野党の調整がカギとなっている。

 

 議会での対立が表面化してきたのは、11月の大統領選挙をにらんだ政権の思惑が、対策の中に盛り込まれるとの懸念が出てきたためだ。これに対して米企業のCEOたちは、こうした政治的駆け引きを超えて、米経済社会を、社会的危機や気候変動等に対して、強固でかつ持続可能なものにするよう、党派を超えた対策を打ち出すよう求めている。

 

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 米国版「グリーンリカバリー」策への取り組みに賛同した米企業のCEOはAdobe、 Capital One、CommonSpirit Health、DSM North America、Dow、Eileen Fisher、General Mills、Mars, Inc.、Microsoft、NIKE、Salesforce、VISAなど。企業と投資家、NGOらで構成する「LEAD on Climate」のメンバー企業を中心に330社の大企業、中小企業等が参加した。

 

 「LEAD on Climate」の企業グループは、長期的な気候変動問題に対処するためレジリエントな景気対策を求め、議会への働きかけを進めてきた。今回の要求事項にはグリーンリカバリーの法制度面からの支援のほか、カーボンプライシング制度の導入も盛り込んでいる。コロナ危機からの回復の焦点となる雇用の維持でも、クリーンエネルギー雇用の増大の柱とすることを求めている。そのために、2050年までにカーボン排出量ネットゼロに向けた移行を加速させるよう促している。

 

 参加企業は、米Fortune 500にランクされる大企業が12社以上加わったほか、産業団体、全米50州から名乗りをあげた中小企業など。合計の売上高は1兆㌦以上に達し、時価総額は11兆5000億㌦、雇用総数は300万人強を占める。企業の業種も多様だ。小売業、製造業、ヘルスケア産業、飲食料品、アウトドア産業、技術業、エネルギー産業も含まれる。

 

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   気候変動対策について、トランプ大統領は「懐疑的」な姿勢を隠していない。議会でも民主党は積極的だが、共和党には慎重な姿勢が多い。ただ、企業レベルでは一部のエネルギー産業等を別にして、幅広い産業・企業等の間では、気候リスク対応をビジネスに取り込むところが増えている。

 

 4月には食品大手のGeneral Millsが2030年までに事業活動での消費電力を100%再エネ化を宣言したほか、衣料品ブランドのEileen Fisher、不動産のJLLはともにパリ協定の1.5度目標と連動するサイエンスベースドターゲット(SBT)導入を表明した。CO2高排出産業であるセメント産業のLafargeHolcimのCEO、 Jamie Gentoso氏も「セメント産業のリーダーとして積極的にカーボンフットプリントを削減していく。われわれは経験と専門性によって、議会が気候危機に対処する行動を促していく」と強調している。

 

 クラウドコンピューティング・サービスのSalesforeceのサステナビリティ担当のPatrick Flynn氏は「現在、われわれはウイルスによる健康危機にさらされているほか、経済危機、気候危機が同時に表面化している。これらの3つの危機に対応する最善の方法は、これら3つの危機対応をまとめて展開することだ」と述べている。

 

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 「LEAD on Climate」をサポートする環境NGO、CeresのCEOのMindy Lubby氏は「政治家は、コロナの影響からの経済回復のための復興策に、気候変動対策を組み込む必要がある。なぜなら気候危機はコロナによる健康危機のすぐ後に迫っている。気候危機を防ぐ基本的な方法は、気候にも社会にもレジリエントな新たな経済を作り直す必要がある」と指摘している。

 

 米下院気候危機委員会議長を務める Kathy Castor氏は「インフラやクリーンエネルギーへのスマート投資を通じて、米国産業を新たに作り直す。そうすることで、今後長きにわたって、住民・家族・コミュニティが健康で、より安全・安心な暮らしを持続できるようにできる」とし、議会での取り組みを約束した。

 

https://www.ceres.org/events/lead-climate-2020?mod=article_inline

https://www.ceres.org/news-center/press-releases/more-330-major-businesses-call-us-congress-build-back-more-resilient

https://www.marketwatch.com/story/microsoft-visa-and-others-worth-combined-115-trillion-want-congress-to-include-climate-in-covid-19-recovery-plan-2020-05-13