長野・霧ケ峰の旧牧場の森林でのメガソーラー事業計画、地元の諏訪市、茅野市両方が環境影響評価準備書に「懸念表明」の意見書提出。事業者は新電力のLooop社（RIEF）
2020-06-04 17:19:33
新電力のLooop（東京）が長野県諏訪市四賀の霧ケ峰高原近くで進める大規模太陽光発電所（メガソーラー）計画に対し、地元の諏訪、茅野両市長は、同社の環境影響評価準備書に対して疑問を示す意見を表明した。それによると、「事業計画には科学的データが不足し、不明点、不備及び不足が散見される」等としている。これに対してLooopは固定価格買取制度（FIT）の買い取り価格が下がる来年4月までに着工したいとの基本姿勢を崩していないという。「霧ヶ峰に太陽光は似合うのか、似合わないのか」ーー。
Looopの計画によると、霧ヶ峰近くの山林196.5haを借り上げ、全体の半分近い88.6haの敷地に、約31万枚の太陽光パネルを設置する計画だ。「諏訪市四賀ソーラー事業（仮称）」として、対象地の山林所有者の上桑原牧野農業協同組合、霧ヶ峰上桑原共有地組合、上桑原山林組合の3組合から土地を借りる。同社では、太陽光発電を設置しない半分の面積は残置森林等として維持管理し、森林管理と再エネ発電の両立を目指すと位置付けている。
同地の環境影響評価手続きは、長野県環境影響評価条例制度に基づく。Looopは、すでに5年前から現地での説明会等を継続的に実施している。今月1日に、同社が作成した環境影響評価準備書に対する地元の諏訪市と隣接する茅野市がそれぞれ意見書をまとめ、県に提出した。
諏訪市の意見書では、水や景観への影響など151項目の詳細意見を記した。主な意見は次の通り。
「調査、予測及び評価や、環境保全措置等について、準備書は不明点、不備及び不足が散見され、妥当性、客観性及び再現性が明らかでない部分が多い」
「準備書の縦覧及び準備書説明会等を通じて、地域住民等の疑問、不安及び懸念等の解消と合意形成が図られるべ きものだが、既にこれらの機会を逸している。科学的な検証を経ていないと考える」
「環境の保全の見地から提出された住民等の意見とそれに対する事業者見解の内容を踏まえると、地域住民等の疑問、不安及び懸念等の解消 がされている状況にはないと考える」
茅野市の意見書も、84項目に及ぶ。
「広大なエリアで大規模な森林伐採、膨大な数量のパネル設置、巨大な調整池の設置等が計画されている。このような規模の太陽光発電設備の設置は、この地域では前例がなく、環境への影響の懸念はもとより下流域に暮らす住民の不安は計り知れないものがある」
「準備書で、事業者はほぼすべての項目において環境への影響は小さい、もしくは極めて小さいと予測しているが、技術委員会等では、根拠となる科学的データ等の不備や不足が指摘され、環境への影響が適正に評価されているとは言えない。 茅野市としても住民と同様に本事業計画に対しては大きな不安を抱いている」
いずれも計画に否定的な意見となっている。
これを受けてLooopは地元紙の取材に対して、「厳しい意見が多かった。真摯に受け止め、住民の不安を払拭できるよう努める」とする一方で、電力の買い取り価格がさらに引き下げられる来年4月より前に着工したいとし「時間や経済性を見ながら、可能な限りの対応をしていく」として、建設を進める立場を崩していないという。
準備書は、計画が環境に及ぼす影響を調査・予測した結果を示すとともに、環境への悪影響を回避・抑制するための対策案を示すもので、最終的な評価書の前段階で準備される手続きだ。準備書とそれへの各方面からの意見を受けた県知事は、8月末ごろまでに、県としての準備書に対する意見を公表し、国に提出する。その後、経済産業省環境審査顧問会による審議や環境相意見などを経て、来年1月末までに経産相が勧告を出すことになる。
今回、地元両市長の意見が否定的であるほか、県環境影響評価技術委員会の議論でも疑問が出ていることから、Looopに対して影響評価の見直し等を求める可能性が強まった、とみられている。
https://looop.co.jp/ipp/e-assessment/case.html
https://www.city.suwa.lg.jp/open_imgs/info/0000042878.pdf
https://www.city.chino.lg.jp/uploaded/attachment/13379.pdf
https://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20200602/KT200601ATI090017000.php
Research Institute for Environmental Finance