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英国、2か月連続で「石炭火力電力無し」で全英の電力を供給。産業革命以来初めての快挙。新型コロナウイルス感染拡大での「ステイホーム」も貢献。いつまで続くか?(RIEF)

2020-06-10 22:20:17

Drax001キャプチャ

 

 英国は10日で、丸2か月連続して石炭火力発電の電力を使わずに、国全体の電力需要をまかなった。18世紀の産業革命以来のことである。すでに4月の段階で、これまでの「石炭フリー(無し)」の記録を更新していたが、その後も続き、2か月連続となった。新型コロナウイルス感染の拡大に伴い、電力需要の大きい工場等の需要が減ったほか、「ステイホーム」の効果も影響したとみられるが、再エネシフトの効果も確実に広がっている。

 

 (写真は、2021年3月に燃料を石炭からバイオマスのウッドペレットに転換して「脱石炭」を実現する予定のヨークシャー州のDrax火力発電所)

 

 英国の送電会社のナショナルグリッドが明らかにした。英国は2024年に、脱石炭を実現する方針を示しており、これまでも既存の石炭火力発電所を閉鎖してきた。その結果、2017年4月21日に24時間連続(丸一日)で石炭火力発電を稼働させない記録を作ったほか、今年4月28日には、18日連続で「石炭フリー」を実現。その後も、記録が伸び続け、6月10日で記録を2か月に伸ばした。

 

6月10日の英国の電源の割合。Drax Electric Insightsより.
6月10日の英国の電源の割合。Drax Electric Insightsより.

 

 コロナウイルス感染の影響で、社会経済活動が停滞したことが、長期間の「石炭無し」に貢献したことは間違いない。この間、英国の電力需要は15~20%の減少が続いている。加えて太陽光発電や風力発電等の再生可能エネルギー発電が着実に電力システムに組み込まれてきたことも大きい。

 

 英国では2010年の時点で、石炭火力発電は英国の全エネルギーの40%を供給していた。2015年の段階でも、電力供給の50%以上を石炭火力に負う日々がかなりあった。しかし、政府が脱石炭火力方針を明確に掲げ、再エネ開発を推進してきたことから、すでに残る石炭火力は4基のみ。ヨークシャー州のDrax 石炭火力が2021年3月に閉鎖されるほか、残りも2022 年から24年にかけ、それぞれ石炭の使用を中止し、天然ガス火力に置き換わる予定。

 

 ただ、脱石炭で即再エネ転換とはいかない。現在、再エネの比率は太陽光、風力、バイオマス等を合わせて全体の4分の1。もっとも多いのはガス火力発電で3分の1、あるいは多い日には50%を超す。次いで、原子力発電が10%前後、他の国からの輸入も10%前後ある。閉鎖された石炭火力も多くはガス火力やバイオマス火力に転じている。

 

2024年には「脱石炭」を国の政策として掲げている
2024年には「脱石炭」を国の政策として掲げている

 

 環境NGOのグリーンピース英国のDoug Parr氏は「石炭火力発電の急速な低下は賞賛すべきこと。これほど急速に石炭火力への依存が減るということは想像もつかなかった。英国が脱石炭で世界のリードをしていることを示す」と高く評価している。コロナウイルスの影響が「石炭無し」の継続を支えていることも、「パンデミックが新しい経済のあり方を示した形だ。コロナ後の経済も脱石炭を明確にすべき」と指摘している。

 

 ただ、英国緑の党のAndrew Cooper氏は「確かにこれは良いニュースだ。しかし一つのステップにしか過ぎない」という。石炭火力に代わり、ガス火力が増えているためだ。「まだ大量のガス火力に頼っている。化石燃料を燃やしてエネルギーを得る時代に別れを告げねばならない」。またDrax発電所が燃料を石炭からバイオマスのウッドペレットに転換することについても、「膨大な量のウッドペレットの供給源が持続可能かどうかも、厳しく検証する必要がある」と目を光らせている。

 https://electricinsights.co.uk/#/homepage?_k=jwt5ak 

https://www.bbc.com/news/science-environment-52973089