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オランダ、2020年のEUの再エネ電力目標未達で、隣国デンマークから余剰電力購入。1億ユーロ(約120億円)分。電力の国境超え売買で基準達成へ(RIEF)

2020-06-22 18:26:12

nertheland002キャプチャ

 

 オランダはデンマークとの間で、デンマークから再生可能エネルギー電力8TWh分を輸入することで合意した。EUは2020年の域内全体の温室効果ガス削減目標を90年比20%削減としているが、オランダは自国の割り当て分の14%分に対して、昨年時点で7.4%しか達成できていない。このため、隣国のデンマークの余剰分を調達することを決めた。国境を超えた電力取引が自由なEUならではの売買だ。

 

 (写真は、オランダの海岸沿いのチューリップ畑と並行して建設されている風力発電施設)

 

 オランダはデンマークに対して1億ユーロ(約120億円)を支払う。EUは2020年の排出量削減目標をEU全体で20%とし、その達成については、各国にそれぞれ割り当てている。EUのデータによると、2018年時点でオランダは14%の割り当て目標に対し、ほぼ半分の7.4%しか達成できていない。国別でみると、すでに目標を達成しているのはラトビアで、その他、12カ国が達成見通しを得ている。

 

 オランダ政府は「これまでバイオマスや、太陽光、風力、水力等の発電に取り組み、現在開発中だが、目標とのギャップを埋めるまでに至っていない」として、デンマークからの再エネ電力購入に踏み切る理由を説明している。

 

EUの国別再エネ目標と発電量。オランダは最下位(2018年データ)
EUの国別再エネ目標と発電量。オランダは最下位(2018年データ)

 

 EUでは「再エネ指令(RED)」によって、EUとしての目標達成のために域内加盟国間で売買できる制度を設けている。割り当てを満たせない場合は罰金を課せられるので、オランダは罰金の代わりに、電力輸入の道を選んだわけだ。ただ、オランダ政府としては「政策の失敗」は明らか。気候大臣のEric Wiebes氏は同国議会に対して謝罪文書を提出した。

 

 同文書では「再エネ事業の開発を加速するためのすべての追加的努力を尽くしたが、結果的に2020年の目標を達成できるめどが立たない」と“素直に”謝罪している。目標達成はデンマークからの買取電力で穴埋めできるものの、オランダの「カーボン信頼性」を阻害したことになる。

 

 EUでは、これまでもルクセンブルクが2017年に11%の割り当て目標に対して、実際の達成率は5%だけということがわかり、リトアニアから余剰電力を購入して穴埋めしたケースがある。リトアニアは2015年時点で目標となる23%削減に対して、25.75%と超過達成できていた。ルクセンブルクは1000万ユーロで700GWhを調達したとされる。

 

 EUの制度は通称「RED」。再エネ需給が「赤字」の国の存在を前提にしているともいえる。これは地続きの欧州諸国での事例だが、日本でも送電網として海底ケーブルを敷設すれば、中国や韓国等からも「再エネ電力」を輸入することは技術的には可能。国内の再エネ発電供給が増えないようだと、リスクヘッジとして、外国から「買う」ことも選択肢の一つかもしれない。

https://www.euractiv.com/wp-content/uploads/sites/2/2020/06/Agreement_for_Statistical_Transfer_of_Energy_from_renewable_sources.pdf