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カソリック教会のフランシスコ教皇、「環境危機回勅」から5年、改めて世界の教会や信者に向けて温暖化対応での化石燃料関連企業と兵器産業からの投資引き揚げを要請(RIEF)

2020-06-22 22:40:54

Catholic003キャプチャ

 

 バチカンはフランシス教皇が2015年に「環境の危機」に対する社会回勅「ラウダート・シ(Laudato Si)」を発表してから5年目に当たる今年を「ラウダ―ト・シ特別年」と位置付けている。このほど、傘下の教会や信者に対して、化石燃料関連事業と兵器産業への投資を引き揚げ(Divestment)とともに、すべての投資による環境・社会的ダメージをモニタリングすることを呼びかけた。さらにバチカン銀行(宗教事業協会:IOR)の投資ポートフォリオはすでに化石燃料フリー(無し)であることを強調した。

 

 フランシスコ教皇は2015年6月、エコロジーをテーマとした回勅「ラウダート・シ(温暖化の回勅)」を公表した。温暖化による異常な気象変動によって世界が破壊されるのを阻止する行動を世界に呼びかけた。これを受けて、カソリック教会は「Global Catholic Climate Movement(GCCM)」を組織、グローバルな温暖化対策を展開している。今回、その回勅を記念する活動として、225ページに及ぶ文書を公表した。https://rief-jp.org/ct8/52657

 

 「回勅」とは、カトリック教会の教義の指針となる原則を集めた文書。法王は5年前、地球上の全ての人に向けた「回勅」を出し、人間の強欲さ、新しいテクノロジーと進歩への自滅的な執着によって、「われわれの姉妹である母なる地球」が危機的な状況に陥っていると、強い語調で非難した。

 

バチカン銀行(IOR)
バチカン銀行(IOR)

 

 今回、5年前の文書をさらに発展させる形で、カトリック教会、信者に対して環境問題の重要性を再強調した。同文書は教会の代表者及び関係者に向けて、自然と命、妊娠中絶、軍事化のような人間と社会にとって有害な活動をする企業や、化石燃料のような環境に有害な企業を、投資対象から除外すべき、と改めて指摘している。さらに回勅の目標を達成する実践的なステップとして、地球の温暖化の抑制に賛同し、気候変動の危険性に対する警告することへの強い支持を表明した。

 

 バチカン銀行自体がすでに投資ポートフォリオから化石燃料関連企業や兵器産業への投資を排除していることも強調した。バチカンが範を示し、全教会・信者による「Divestment」運動を展開する決意を示した形だ。

 

 先月、世界の40以上の教会が化石燃料産業からのDivestmentを宣言した。そのうち、半分以上がカソリック教会だった。バチカンは自らもDivestmentの先頭に立ち、世界中のカソリックの多くの教区や教育機関も同様の投資スタンスをとっていることを強調し、カソリックあげて温暖化対策に取り組む姿勢を強調した。

 

 ただ、バチカン(IOR)は5年前の回勅の翌年、主要役員が相次いで、化石燃料株投資に関わっていたほか、温暖化懐疑論のキャンペーンへの資金供給も行なっていたことが環境NGOによって指摘される事態も起きた。今回、「化石燃料フリー」を宣言したことで、そうした疑念を払しょくしたことになる。https://rief-jp.org/ct6/63136

 

 「ラウダート・シ」という名称は、中世イタリアの著名な聖人であるアッシジの聖フランシスコによる「太陽の賛歌」の中に出てくる言葉「ラウダート・シ、ミ・シニョーレ」(「わたしの主よ、あなたはたたえられますように」の意)から取られている。

http://www.vatican.va/content/vatican/en.html