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スウェーデン海運大手のワレニウス・ウィルヘルムセン、風力だけで運航する「Oceanbird」。来年にも建設へ。5基の鋼鉄製で伸縮型の帆を開発(RIEF)

2020-10-26 17:36:48

 

 スウェーデンの海運大手、ワレニウス・ウィルヘルムセン(Wallenius Wilhelmsen)は、船上に搭載した5基の特殊な鋼鉄製の帆で風をキャッチして運航する世界初の風力運航船「Oceanbird」を2021年に発注し、2024年には就航させると発表した。「フル風力パワー船」の登場で、海運の世界も実質ゼロエミッション化が進行することが期待される。

 

 (写真は、「Oceanbird」の完成予想図)

 

 ワレニウス・ウィルヘルムセンは、自動車貨物や重機械の輸送に強みを持ち、グローバル海運で活躍している。特に自動車輸送船部門では世界最大級の取扱量を誇る。今回開発するOceanbirdは全長200m、全幅40mで、7000台の自動車を運航する能力を持つ。

 

 Oceanbirdはスウェーデンの運輸当局の支援を受け、2019年~2022年の3年計画で開発を進めている。開発はワレニウス社が中心だが、航空力学を使った技術開発には、スウェーデン王立工科大学(KTH)と海運技術ソリューションのSSPAのスウェーデン企業2社が協力している。

 

風力発電機はそれぞれ別々に水平に360度回転する
風を受ける鋼鉄製の帆はそれぞれ別々に水平に360度回転する

 

 Oceanbirdの最大の特徴は、可動式の船上風力設備だ。通常のヨット等の風力利用船とは異なり、同船の帆は帆布で風をキャッチするのではなく、鋼鉄と複合合金でできている。それぞれの鋼鉄製の帆設備は、風の動向に合わせて、上下に最大80m、最小20mへと、潜水艦の潜望鏡のように伸び縮みする。海面からの最長の高さは105mになり、通常の船舶に比べて倍近い高さだ。しかし、縮小すると45mにまで縮む。

 

 7000台の自動車を積んで、12日間で大西洋を横断できる能力がある。帆が伸び縮みするので、港湾に架かる橋梁等を潜り抜けるのも容易という。また帆はそれぞれ別々に水平方向に360度回転する。帆と船体の形状は洋上の風力から最大の駆動力を得るために航空力学を用いて設計した。

 

 同船には、補助エンジンを積んでいるので、そこからのCO2排出があるが、通常航行中のCO2排出量は現状の船舶に比べて90%削減となり、ゼロエミッションに極めて近づく。

 

 海運部門のCO2削減は、航空部門と同様、技術面の課題が大きいとされてきた。現状ではバイオ燃料への転換や、燃料電池搭載の水素燃料船、排出したCO2を船上で回収・使用するOceanCCSなどの技術開発が同時並行で進んでいる。Oceanbirdが最先端の「ゼロ・エミッション船」の座を勝ち得るか。技術開発力と、低コスト化につながる実用力が勝負の決め手になりそうだ。https://rief-jp.org/ct4/106207

 

https://www.walleniusmarine.com/blog/ship-design-newbulding/lets-talk-about-the-wings/

(記事の内容に誤解があったため、修正更新: 2020年10月27日午前0時43分)