HOME8.温暖化・気候変動 |2019年度の日本の温室効果ガス排出量、前年比2.7%減。6年連続減少。京都議定書の目標は依然「未達」のまま。不十分な温暖化対策の継続を露呈(RIEF) |

2019年度の日本の温室効果ガス排出量、前年比2.7%減。6年連続減少。京都議定書の目標は依然「未達」のまま。不十分な温暖化対策の継続を露呈(RIEF)

2020-12-08 12:06:08

Coal001キャプチャ

 

 環境省は8日、2019年度の国内の温暖化ガス総排出量(速報値)が12億1300万㌧(CO2換算)、前年度比2.7%減で、6年連続のマイナスになったと発表した。90年度以降では最少排出量。米中貿易摩擦の影響で、輸出向けの化学製品や鉄鋼などのCO2高排出産業からの生産が縮小したことなどが影響したと説明している。ただ、京都議定書で日本が約束した1990年の目標にはいまだ到達していない。

 

 日本政府はパリ協定で2030年度に2013年度比26.0%、05年度比25.4%の各削減目標を設定している。19年度の排出量は、それらに比べると、13年度比14.0%減、05年度比12.2%減となっている。数字的には、目標値に半分ほど近づいているようにみえる。だが、元々日本の30年度目標は他国比で低いほか、日本で合意した京都議定書目標(2012年までに90年比6%削減)に比べると4.8%減で、いまだ「未達」の状況にある。

 

 日本の排出量は2014年度がピークの14億1000万㌧を記録している。その後、7年連続でマイナスになったことになる。2020年度は新型コロナウイルス感染拡大の影響で経済活動が停滞していることから、グローバル平均で前年比8%前後の大幅な削減が見込まれており、8年連続の減少は確実になっている。

 

 環境省は19年度の排出量減少について、CO2高排出産業の輸出減少の影響のほか、国内でのエネルギー商品の減少、太陽光やバイオマスなどの再生可能エネルギーによる発電量増や、原子力発電所が稼働等を要因として指摘している。

 

 その一方で、菅政権が「2050年に温室効果ガス排出量実質ゼロ」を宣言したことを受け、「現在の取り組みの延長では、(2050年の)目標達成は困難。生活様式の転換や脱炭素に向けたイノベーション創出など、従来以上の努力が必要」と説明しているという。

 

 ただ、京都議定書の目標「未達」の状況が30年間も続いているという事実は、同省及び日本政府が、この間、十分な削減対策をとってこなかったことを意味する。EU等の他の先進国に比べると、CO2高排出企業への規制は明らかに不十分。環境省の政策力の乏しさが、この国で温暖化対策の効果が進まない大きな要因ともいえる。こうしたお粗末な政策対応で、「2050年カーボン・ニュートラル」を実現できるとは思えない。   (RIEF)