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経産省、新たな「グリーン投資減税」来年度から導入の方針、与党税調への盛り込み働きかけ。最大で設備投資額の1割を法人税から税額控除(各紙)

2020-12-07 20:35:38

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  各紙の報道によると、経済産業省は脱炭素を促進する製品等の生産拡大を促すため、最大で設備投資額の1割を法人税から税額控除する優遇措置を制度化するため与党に働きかけているという。製造設備への投資を促す減税としては過去最大の控除率になる見通し。2050年までに温室効果ガス排出量を実質ゼロとする菅政権の公約を実現するため、積極的な「グリーン投資」に踏み切る企業を支援するという。

 

 日本経済新聞が報じた。近く決定する与党税制改正大綱に盛り込むとしている。対象となり得るのは、次世代型のリチウムイオン電池や燃料電池、電圧制御に使うパワー半導体、風力発電機など、脱炭素を加速すると見込める事業分野としている。これらの事業の投資可能性を、同省が判断し、製造設備の増強や生産プロセスの省エネルギー対応などを税優遇の対象とする仕組みという。

 

 税優遇措置を求める企業は、経済産業省に対して、投資を通じた脱炭素への貢献を示す事業計画の提出が求められる。国の認定を受ければ、国が定める脱炭素への貢献度の指標に応じ、5%か10%の法人税の税額控除の優遇措置を受けることができる仕組みにするとしている。

 

   経産省は過去にもグリーン投資減税を導入した経緯がある。中小企業者を対象にして、対象設備を取得し、かつ1年以内に事業の用に供した場合に、取得価額の30%特別償却又は7%税額控除のいずれかを選択して優遇措置が受けられる制度を実施してきた。同制度は、2018年に終了した。

 

 ただ、同制度の結果、グリーン投資効果がどれくらいあったかどうかの検証は公開されていない。同制度後も、日本の再エネの普及率は欧米に及ばないだけでなく、中国や韓国をはじめとするアジア諸国の中でも低位にとどまっている。政府の税優遇措置が効くかどうかは、再エネ事業等に関する規制緩和がどこまで進むかという側面も影響する。新しい税優遇措置を導入する前に、本来は、旧来の措置の政策評価が必要と考えられる。

 

 さらに今回の税制優遇策案は、中小企業に特定せず、全企業を対象とされていることから、優遇措置は広く拡大され、総減税規模も大きくなるとみられる。新型コロナウイルス感染の影響で、今年度だけでなく、来年度も、税収減が予想されており、限られた税収の中で政策減税を実施するとなると、なおさら政策効果の検証で税優遇措置の妥当性を吟味する必要がある。

 

 

 報道では、事業の対象は「最新の技術を駆使した高効率な省エネ・低炭素設備や、再生可能エネルギー設備への投資(グリーン投資)を重点的に支援する制度」と説明されており、グリーン投資減税とほぼ同じ範囲とみられる。来年の通常国会に産業競争力強化法改正案を提出して、新たな認定制度を設ける考えという。かつてのグリーン投資減税と同様、恒久措置とせず、21年度から3年間の期間限定の優遇税制とするとしている。

 

 菅義偉首相は4日、脱炭素に向けた研究・開発を支援する2兆円の基金創設を表明し、グリーンとデジタルの2分野を成長の源泉と位置して支援する姿勢を強調している。このため各省庁は、来年度予算に絡めて、温室効果ガス排出削減に資する予算項目の積み上げを競っている。

https://r.nikkei.com/article/DGXZQODF075O60X01C20A2000000?type=my#AAAUAgAAMA