HOME |菅首相、国連の「気候野心サミット」で、2030年の温室効果ガス削減目標を盛り込んだ国別温暖化対策貢献(NDC)の改定版を、来年11月のCOP26までに国連に提出を明言(RIEF) |

菅首相、国連の「気候野心サミット」で、2030年の温室効果ガス削減目標を盛り込んだ国別温暖化対策貢献(NDC)の改定版を、来年11月のCOP26までに国連に提出を明言(RIEF)

2020-12-13 15:57:57

gasu001キャプチャ

 

  菅義偉首相は12日、パリ協定合意5周年記念で国連等が開いたオンライン形式の「気候野心サミット」で、2050年温室効果ガス排出量ネットゼロの中間目標となる2030年削減目標を盛り込んだ国別温暖化対策貢献(NDC)の改定案を、来年11月の国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)までに提出すると言明した。日本がNDCの改定を明言したのは初めて。

 

 (写真は、オンラインで「サミット」に参加した菅首相。「ガースーです。石炭よりガスがいい」と言ったかどうか)

 

「オンラインサミット(Climate Ambition Summit)」は国連とCOP26の議長国となる英国が主催した。80カ国近い国の首脳のほか、企業経営者や環境NGOらも参加した。パリ協定で合意した「1.5℃目標」「2.0℃目標」の達成に向け、各国が「脱炭素」の取り組みを宣言した。

 

 菅首相はサミットにビデオメッセージを送り、「2050年温室効果ガス排出量ネットゼロ」を目標とすることと同時に、30年目標についても現行の水準を引き上げる新たな改定目標を盛り込んだNDCの改定案を、COP26の開催までに国連に提出する考えを示した。

 

 首相は「日本は成長戦略の柱に『経済と環境の好循環』を掲げ、グリーン社会の実現に努力していく」と述べたほか、温暖化対策の国際協力として「官民合わせて約1.3兆円を支援するほか、(途上国の温暖化対策支援のため設立した)国連緑の気候基金(GCF)に最大総額30億㌦を拠出する」と約束した。

 

 2030年目標については、すでにEUが90年比55%、英国が同68%などと現行の目標を大きく引き上げた数値を決定している。日本の現行の30年目標は、2015年比で26%削減どまり。EUなどが基準とする90年比に置き換えると、約18%削減でしかない。EU等の55%削減に遠く及ばないだけでなく、グテレス国連事務総長が世界平均で求める45%削減にも届かない。

 

 わが国は現行のエネルギー基本計画の改定を来年に控えていることから、同計画の改定は2030年目標の引き上げと整合する形で設定することが求められる。現行の2030年度の電源構成は、原子力20~22%、再エネ(水力含む)22~24%、LNG27%、石炭26%、石油3%等となっている。再エネは水力を除くと13.2%~14.8%に過ぎない。

 

 現行のエネルギー計画と、国際的に求められる30年目標のギャップをカバーするには思い切った再エネシフトが求められる。90年目標で他の先進国と遜色のないレベルとなると、最低でも40%以上、現行基準の15年ベースだと、50%以上の削減目標とすることが求められるとみられる。

 

 政権内では、河野太郎行政改革担当相と小泉進次郎環境相は、国の各施設の電力使用について再エネ30%とすることで一致している。一方、経産省は、石炭では「高効率」と強調する超々臨界圧石炭火力発電(USC)を増やすほか、原発稼働の推進を目指しているとされる。USCは従来型の石炭火力よりはCO2排出量は少ないものの、天然ガス火力発電より排出量は多い。したがってUSCを新設するよりは、まだガス火力増設のほうが望ましいといえる。

 

 原発は確かに稼働中にCO2を排出しない。だが、現行の設備には安全性の問題に加えて、使用済核廃棄物の処理問題が解決していないという大きな課題を抱える。2011年3月の東京電力福島第一原発事故から来年は満10年を迎えるのに、万全な安全性の担保と、廃棄物処理の課題はともに解決していない。こうした状況の電源に重きを置いた目標改定だと、内外で議論を呼びかねない。

 

 一方、サミットには、中国の習近平国家主席も登場し、「2030年までに、中国の国内総生産(GDP)の単位当たりのCO2排出量を05年比で65%以上減らす」と明らかにした。習主席は9月の国連総会で、2060年ネットゼロ目標とともに、「30年までに実質的な排出量を減少に転じさせる」と述べており、その30年目標を具体的に示した形だ。同主席は「非化石燃料エネルギーが1次エネルギー消費に占める割合を約25%に、森林CO2蓄積量を05年より60億㎥増、風力発電や太陽光発電の総設備容量は2億kW以上とする」等の個別目標も披露した。

 

 トランプ政権は、米国のパリ協定からの離脱を正式に実施しており、同サミットへの連邦政府からの参加は無かった。代わりに、一部の州知事らが参加。米アップルCEOのティム・クック氏らがメッセージを寄せた。

https://digital.asahi.com/articles/ASNDF1VX7NDFUHBI002.html

https://www.theguardian.com/environment/2020/dec/12/world-is-in-danger-of-missing-paris-climate-target-summit-is-warned