HOME8.温暖化・気候変動 |バイデン米大統領、就任直後にパリ協定復帰等15の大統領令署名。今春に気候サミット開催し、米国の国別温暖化対策貢献(NDC)大幅改定へ。日本だけ出遅れの可能性濃厚に(RIEF) |

バイデン米大統領、就任直後にパリ協定復帰等15の大統領令署名。今春に気候サミット開催し、米国の国別温暖化対策貢献(NDC)大幅改定へ。日本だけ出遅れの可能性濃厚に(RIEF)

2021-01-21 16:47:19

Biden003キャプチャ

 

 第46代米国大統領に就任したジョー・バイデン氏は就任の20日、15の大統領令に署名した。その中で気候変動対策を推進するパリ協定への復帰も決めた。最優先課題の第一に、新型コロナウイルス感染対策を上げ、その次に気候変動を位置付けた。春には米国主導で気候サミットを開催し、米国の国別温暖化対策貢献(NDC)の引き上げを宣言する可能性が出てきた。日本政府の対応が迫られる。

 

 バイデン氏はパリ協定への復帰について「米国としてパリ協定のすべての条項を受け入れる」と宣言した。国連に同協定復帰を通知後、30日後に正式に加盟国となる。11月に英グラスゴーで開催が予定される気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)に向けて、米国の国別温暖化対策貢献(NDC)の改定内容が焦点となる。

 

副大統領に就任したハリス氏と
副大統領に就任したハリス氏と

 

 パリ協定への復帰以外でも、米カナダ両国をつなぐオイルサンドのキーストンXLパイプライン建設の差し止め、ユタ州の自然保護地区のナショナル・モニュメント指定の「Bears Ears and Grand Staircase-Escalante」と、北極圏での石油・ガス掘削事業の差し止め等も打ち出した。トランプ政権の開発優先の姿勢をすべて元に戻す形だ。

 

 2015年のパリ協定で米国代表を務めたTodd Stern氏は英Guardian紙に対して「米国のパリ協定への再加盟は最初の一歩。しかし、大きな一歩だ」と称賛した。バイデン氏は  、米国だけでなく、各国の温室効果ガス削減を加速するため、今年春に米国主催で気候サミットを開くことが期待されている。

 

 気候サミットが開かれると、その際に、米国自身が自らのNDCを改定するとみられる。パリ協定で米国が示したNDCは、温室効果ガスの排出量を2025年に26%~28%削減(2005年比)、28%減に向けて最大限努力する、という内容だった。パリ協定復帰は、ひとまずこのNDCの公約に戻るが、COP26ではNDCの大幅改定が焦点になっている。

 

大統領として宣誓するバイデン氏
大統領として宣誓するバイデン氏

 

 すでにEUが2030年目標を55%削減(1990年度比)にしているほか、英国も大幅引き上げの方針。こうした欧州の改定NDCの水準に、匹敵する形でバンデン政権が米国のNDC目標の引き上げに踏み切った場合、日本だけが先進国の中で、置き去りにされる可能性が出てくる。

 

  日本のNDCは2030年度に26%削減(2013年度比、25.4%減=2005年度比)。米国のパリ協定での水準を横にらみして定めた水準だ。日本の削減率をEU並みの90年度比でみると18%削減に過ぎない。

 

 菅政権は、COP26に向けて日本のNDCの引き上げも想定しているようだ。だが、現在のスケジュール感は、夏にエネルギー基本計画を改定したうえで、NDC目標を調整する方針とみられる。ところが、春の気候サミットで米国がNDCの大幅引き上げで先行すると、日本は先進国で唯一、出遅れる形になる。

https://www.whitehouse.gov/briefing-room/statements-releases/2021/01/20/paris-climate-agreement/