HOME8.温暖化・気候変動 |JICA等による日本の途上国向けの気候変動適応ファイナンス援助、供与額の6割強が適応効果を「過大報告」。先進国中でも最大。「適応ウォッシュ」の非難も。国際人権団体が調査(RIEF) |

JICA等による日本の途上国向けの気候変動適応ファイナンス援助、供与額の6割強が適応効果を「過大報告」。先進国中でも最大。「適応ウォッシュ」の非難も。国際人権団体が調査(RIEF)

2021-01-24 08:51:25

care002キャプチャ

 

  日本を含む先進国が気候適応ファイナンスとして途上国に提供する援助等が大幅に過大報告されていると、国際人権団体の調査で指摘された。特に、日本は国際協力機構(JICA)等による適応援助の多くが「過大報告」とみなされた。その額は各国の中でも最大。調査対象期間で日本が供給した資金総額20億㌦のうち66%が「過大」とされた。日本は「適応ウォッシュ(適応まがい)」の“残念なチャンピオン”の汚名を着たことになる。

 

 調査は国際人権団体CAREによる。CAREは第二次大戦終結の1945年に設立された。現在はジュネーブに本拠を置く。戦後復興の日本にも、食料支援等を行った伝統ある人道支援のグローバルな非営利機関として知られる。

 

  先進国による途上国向けの気候変動対策支援は、2009年の国連気候変動枠組条約第15回締約国会議(COP15)で、年間1000億㌦の供与が合意された。そのうち半分は適応事業へのファイナンスに充当することが求められている。

 

「過大報告」の国・機関別ランキング。日本の665が断トツ!
「過大報告」の国・機関別ランキング。日本の66%が断トツ!

 

 CAREはこうした合意がどこまで実現されているかをチェックするため、2013~17年にかけて、途上国で「適応事業」として先進国の支援で実施された112の事業を精査した。対象事業の総規模は62億㌦で、OECDのデータによる当該期間の適応事業の13%に相当する。適応ファイナンスの提供は、各国および世界銀行等の国際公的金融機関も対象とした。

 

 調査は対象事業が適応事業を明確に目標としているかどうかで3段階の分類をした。対象の事業活動が「not tageted」の場合は「0」、かなり対象としているが、基本的には適応が目的ではない場合は「significant」で「1」、適応が主要目的であるか、原則である場合は「2」として分類した。

 

 その結果、対象となった日本のJICA等による途上国向け援助事業13件、20億900万㌦について、6割以上が、適応を主目的としているか、あるいはマイナーな目的の場合の区別がなく、少しでも適応的要素があれば適応ファイナンスに分類するという「基本的なエラー」をしていると指摘を受けた。「過大報告」額は13億3400万㌦と認定された。実際の適応ファイナンス額は、公表額の約3分の1の6億7500万㌦にとどまった。

 

日越友好橋の建設事業も「適応事業」とアピール
日越友好橋の建設事業も「適応事業」とアピール

 

  日本の主な「過大報告」事業には、ベトナムでのニャッタン橋(日越友好橋)建設事業や、同じくベトナムの南北を縦貫する「南北高速道路事業」も含まれる。日本は、少しでも適応的な要素があれば、対象となる援助額の全額を適応ファイナンスとして計上していたという。

 

 日本に次ぐ「過大報告」は世界銀行。16件、総供給額25億4200万㌦のうち、過大比率は日本ほどではないが34.3%の8億7200万㌦あった。世銀の場合、「過少報告」も4000万㌦あり、実際の適応ファインナンス額は17億1000万㌦だった。主な「過大報告」としては、ネパールでの地震からの住宅再建事業を「適応」扱いしていた。地震からの再建は大事だが、地震は気候変動の影響ではない。

 

各国と国際機関の適応ファイナンスの実態
各国と国際機関の適応ファイナンスの実態

 

 日本の「水増し適応分」だけで、先進国全体の年間の適応ファイナンス額を10%分、見かけ上、膨張させているとしている。この「日本要因」に加えて、各国が提供する無償融資の融資額を時価ベースで計上するケースがあり、それらも適応ファイナンス額を実態以上に膨らませているとしている。

 

 各国も幾分、「過大報告」と指摘されたところはある。フランスは2件、1億6500万㌦の供与に対して、日本に匹敵しそうな63%が「過大」とされた。EUは14件、2億4800万㌦のうち14.1%、米国は10件、1億1900万㌦で27.7%など。しかし、援助総額の規模の大きさと、「過大報告」額・率とも、日本が他国を断然、リードしている状況は変わりがない。

 

 CAREは「パリ協定の気候ファイナンス目標を実現するためには、適応ファイナンス報告の透明性と正確性を確保することが緊急課題として必要」と指摘している。さらに、適応ファイナンス事業に際して、男女格差や貧困への配慮を盛り込むよう、求めている。

https://www.care-international.org/news/press-releases/developed-nations-hugely-exaggerate-climate-adaptation-finance-for-global-south

https://www.care-international.org/files/files/CARE_Climate_Adaptation_Finance_Fact_or_Fiction.pdf