HOME |地球全体の氷、1997年からの23年間で28兆㌧が消失。英国全土を厚さ100mの氷で覆った量に匹敵。IPCC想定の最悪シナリオに沿う加速化が進行中。英大学チームの調査で判明(RIEF) |

地球全体の氷、1997年からの23年間で28兆㌧が消失。英国全土を厚さ100mの氷で覆った量に匹敵。IPCC想定の最悪シナリオに沿う加速化が進行中。英大学チームの調査で判明(RIEF)

2021-01-26 00:10:14

ICE001キャプチャ

 地球を覆っている北極・南極等の氷床や海氷、陸上の氷河等の氷が加速度的に溶けていることが英大学の衛星観測調査でわかった。1994年から2017年の23年間で、合計28兆㌧の氷が地球上から消えた。これは英国全土を厚さ100m規模で氷で覆う量に匹敵する。この間の海面上昇は、地球全体で35mmに達した。調査チームは、国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が想定する最悪シナリオケースでの進展になっていると警告している。

 調査は英リード大学のThomas Slater氏を中心とする英大学合同の研究チームが実施した。チームにはエジンバラ大学、ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン、さらにデータサイエンス機関のEarthwaveが参加した。英自然環境研究協議会が支援した。研究成果は学術サイトのCryosphereに25日、掲載された。

 調査は1994年から2017年の間の地球上の氷の退潮度を衛星観測でくまなく調べた。観測データからは特に、北半球のグリーンランドと、南半球の南極の氷の溶融が、いずれも過去最速になっていることがわかった。

地球上の氷消失の主要地域と消失量
地球上の氷消失の主要地域と消失量

 この23年間に消失したとみられる氷の量のうち、約3分の2は大気の温暖化の影響により、残りの3分の1は海洋温度の上昇による。観測期間中の氷の溶融スピードは、1990年代の年間0.8兆㌧から、2017年までには同1兆3000億㌧へ、約65%も加速している。溶けた氷の半分は陸地の溶融分で、残りは海氷の溶融分。陸地の氷が溶けた分は、海洋に流れ込んで海面上昇を引き起こす。

 また海氷が溶融すると、それまで海氷によって反射されていた太陽光が直接、海洋に降り注いで、海洋の温度上昇を指せる。その結果、海氷の溶融がさらに進むという循環が起きる。Slater氏は「氷の溶融は地球上全体で起きているが、特に顕著なのがグリーンランドと南極」と指摘している。

南半球㊧と北半球㊨の氷の退潮度合い
南半球㊧と北半球㊨の氷の退潮度合い

 地域別でみると、南極では、海面に張り出した大陸氷棚、陸地の氷床、海氷を合わせた消失量は9.9兆㌧に達した。北極圏の海氷の消失量7.5兆㌧を上回る。グリーンランドは面積では、北極圏の6.7分の1だが、氷河・氷床の消失量はほぼ半分の3.8兆㌧で、北極圏よりも消失のスピードが速い。

 陸上の氷河は21万5000カ所を調べた。その結果、全体で6.1兆㌧分が消失した。氷全体の消失量の4分の1を占める。氷河の消失は、当該地域での洪水リスクを高めるほか、氷河の溶融水に頼っている地域の水不足を招来するリスクも高める。大規模な溶融によって洪水が起き、その後に、氷河全体が細ることで、氷河の水に頼った農業や生活に影響が及ぶわけだ。

 さらには海面上昇のピッチが高まっていることは、今世紀全体を見据えると、沿岸部のコミュニティに非常に深刻な影響を及ぼす可能性を高める。新型コロナウイルス感染拡大で、人類が右往左往している間も、地球は確実に温暖化が進行し、待ったなしの領域に突入している。

http://www.leeds.ac.uk/news/article/4756/global_ice_loss_increases_at_record_rate

https://www.the-cryosphere.net/about/news_and_press/2021-01-25_review-article-earths-ice-imbalance.html